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2004/05/12 02:00 更新

最新Linuxディストリビューションレビュー:
細かい使い勝手を高めたSUSE Linux 9.1 Professional (2/2)


システムの管理はやはりYaST

 インストールの際に登場したYaSTであるが、YaSTはインストールツールではなくセットアップツール(Setup ToolのST)である。そのためシステム管理に関してもYaSTが登場する。

YaST-main.jpg

YaSTのメイン画面(クリックで拡大します)

 YaSTは従来はプロプライエタリ製品として扱っているために単体利用が難しい部分があったが、GPLライセンスの下で提供しようという話も出ている(3月19日の記事参照)。今後SUSE以外でもYaSTを試す機会が増え、Anacondaと違ったできの良さを気軽に見ることも出来るかもしれない。

 さて、そのようなYaSTではあるが、メイン画面から選択可能なものには次のような項目がある。

  • ソフトウェアの管理(パッケージの追加・削除・更新など)
  • システム情報の確認
  • ハードウェアの調整
  • ネットワークの設定やサービス設定
  • セキュリティ(ファイアウォールなど)とユーザ管理

 当然これらの作業を行う際にはrootのパスワードが要求されるため、不用意には実行できないようになっている。ここでは一例としてパッケージ管理の部分をあげてみよう。パッケージ管理を選択すると、現在インストールされているものにチェックがついた形で表示される。

YaST-packagemanager.jpg

パッケージ管理画面(クリックで拡大します)

 ここから追加したいものがあれば、新しくチェックすればいいし、不要なものはチェックを外せばよい。もちろん依存関係の確認も行える(自動で行わせることも可能)。あとは実行ボタンを押せば、必要なディスク(5枚あるため、どのディスクに含まれているかも重要)を表示した上で作業が始まる仕組みだ。

 今時のシステムはオンラインでのアップデートも当たり前のように用意されているが、SUSEも例外ではない。CD-Rに焼いておいたアップデートパッケージを利用する(ネットワークにつながっていないため)ことなども可能となっており、いろいろなシチュエーションに対応している。オンラインアップデートの場合、配布サイトの指定が必要だが、主だったところは選択可能(今回は評価版のためか、日本のサイトが含まれていなかった)である。後は確認を行い、実際にパッケージのダウンロードを開始させれば作業が行われる。なお、インストール作業の途中でパッケージの更新をかけることも可能なので、ネットワークが利用可能な状況であればあらかじめ行っておく方が精神衛生上いいだろう。

update-1.jpg

オンラインアップデートの設定画面(クリックで拡大します)

しばらく使ってみて感じること

 SUSE自体はいわゆる「マルチリンガル」バイナリである。この場合、翻訳の質の問題があるが、特にインストールまわりに関しては、原文(おそらく英語)と読み比べをしない限り、十分に理解可能な文面と筆者は感じた。インストーラ開発に際して日本語がわかる人がちゃんと入っているのであろう。

 KDEは以前、「日本語への翻訳チームや質が低下している」という問題があって一時的にローカライズパッケージの配布が停止したケースがあったが、日本語翻訳プロジェクトの努力によって、大半のアプリケーションは日本語に対応した表示となっている。多少アプリケーションを選ぶが、ネットワークを利用するチャットツール(konversation等)も日本語の漢字コードを選択すればほぼ問題なく利用できることも確認できた。

 ただ少し気になったのは、前述のOpenOffice.org 1.1.1である。まだ正式リリースされてない「日本語メニュー入りOOo 1.1.1」というのはどう解釈したらいいのか困ってしまった。2004/5/5時点では、OpenOffice.org日本ユーザ会からリリースされているOOo日本語版は1.1.0であるため、日本語メニューまわりを1.1.0からコピーしてきて書き換えたものの可能性が高いが、このようなフライング行為が各方面に影響が出ないかが心配である。

 ロケール(国・言語指定)は日本語のUTF-8(ja_JP.UTF-8)を採用している。これに関しては、利用者の環境によって出てくるであろう。単体で使うクライアントの場合は、ほかから持ってきたファイルの文字コードを処理して読み込めれば困らないだろうし、Fedora CoreのようにUTF-8を同様に採用しているPC同士であればこれも問題にならない。

 リムーバブルメディアに関しては、supermountをカーネルに組み込むことでいちいちmount/umountしなくてもすむように対処されている。このため、メディアを抜きたいと思ったところで抜くことも可能である(さすがに書き込み中はメディアが壊れるのでやってはいけない)。Fedora Coreなどではmagicdev機構を用いたメディア検知を行っているが、いちいちumountを意識しなくてすむため、使い慣れてないWindowsユーザには助かるだろう。ちなみに筆者がインストールした環境では、以下のようにマウントされていた。

/dev/hda6 on / type reiserfs (rw,acl,user_xattr)
proc on /proc type proc (rw)
tmpfs on /dev/shm type tmpfs (rw)
devpts on /dev/pts type devpts (rw,mode=0620,gid=5)
/dev/hda1 on /windows/C type ntfs (ro,noexec,nosuid,nodev,gid=100,umask=0002,nls=utf8)
/dev/hdc on /media/cdrecorder type subfs (ro,nosuid,nodev,fs=cdfss,procuid,iocharset=utf8)
/dev/fd0 on /media/floppy type subfs (rw,nosuid,nodev,sync,fs=floppyfss,procuid)
none on /proc/sys/fs/binfmt_misc type binfmt_misc (rw)
usbfs on /proc/bus/usb type usbfs (rw)

 なお、CDやDVDの読み書きには、DMAアクセスが可能になったため、2.4カーネルと比較して高速化と安定化がよりアップしている。

 そのほか、キーボードに関しては少しだけ気になることがあった。あまり早く打ち込むと発生することがあるようだが、キー入力を一度だけの入力であるにかかわらず連続して入力されたり(X上で特に発生)、打ち込んだのになかなか表示に出てこない(テキストコンソールで特に発生)といった不具合が確認された。このあたりは今後のアップデートにより解消されたり、調整により解消できる可能性が高いが、自分の打ち方と併せて各自で慣れるしかなさそうである。

まとめ:2.6だから、ということはないけど

 正直、2.6系カーネルを採用したからといって、大幅に改良されたというわけでもない。しかし、スケジューラの改良による全体的な体感速度の向上も出ているし、ACPI対応による省電力への試みもかなり進んでいる(ハイバネーションは機種ごとの差が出るため、標準状態では無効になっている)。ディスクまわりは(ほぼ)いつでも抜くことが可能なリムーバブルメディアの扱いなど、細かいところであるが使い勝手も向上している。すでにリリースされているTurbolinuxやこれから正式リリースとなるFedora Core 2とともに、2.6系カーネルを使ったディストリビューションのひとつの方向性を示した仕上がりとなっている。


余談:無線は使えるか?
 オンラインアップデートに関して、気づいたことを余談ながらあげておきたい。それは無線ネットワークの利用に関してである。
 今回テストした環境はNECのLavie Lシリーズ(2003/1発売のLL550/5D)で、ここに無線LANカードを挿している。カード自体はNTT-MEのMN-8300Wという802.11b/g対応のアクセスポイント付きのルータに付属のものだ。
 このカードも含め、Linuxでの無線LANは802.11b規格では比較的手軽に使えていたが、a/g規格においてはその利用が難しくなっている。ドライバ作成に必要な情報が以前に比べて入手が難しいケースが出ているためである。
 幸いなことに今回のこのカードに関しては、インストールの際に検出され、ath0というインターフェースで利用可能だった。運がいいというのもあるかもしれないが、結構使えるケースもあるみたいなので、試せる方は(SUSEに限らず)試してネットワーク上で公開してもらいたい(失敗なら失敗でもいい、それでも情報として有益である)。

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[佐藤大輔,ITmedia]

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