コラム
2004/05/17 15:29 更新

国内代表者に聞くオープンソースの今:
急速に人気を高めるオープンソースCMS、日本XOOPS代表 小野和巳氏コラム

blogに代表される容易なWebページ作成メリットは、デザインに悩まず幅広い層が手軽に開設できることにある。XOOPSは、blogの類とは異なり、より大規模なサイト構築を可能とするツールだ。

 Linuxチャンネル連載「国内代表者に聞くオープンソースの今」。オープンソースのCMSとして名高いXOOPSの「XOOPS日本公式サイト」を運用する代表者、小野和巳氏にコラムを執筆いただいた。


 「XOOPS」(ズープス)とは、PHPで記述されたCMS(コンテンツマネージメントシステム)ソフトウェア。コンテンツ管理システムといっても人によって分かりにくいが、XOOPSはWebサイト上のコンテンツを作成、管理、公開するためのインタフェースを備えたフレームワークといえる。

 最近日本でも流行っている、blog(ブログ)と呼ばれる日記に似たサイトを立ち上げられるソフトウェアがあるが、XOOPSはこれらのソフトとは異なる。もちろん、XOOPSでも同様のサイトを作り上げることができるが、blog機能はXOOPSの拡張機能となるモジュールで提供される。そのほか、blogと並んで人気のあるWikiと呼ばれる情報共有ソフトがあるが、例えばPHP版のWikiとして日本で最も有名なPukiwikiも、XOOPSのモジュールとして提供されている。

 このように、既存のソフトをモジュールとして提供することができ、すべてが違和感なく統一されたひとつのサイト上で構築可能なのが、XOOPSの魅力だ。

XOOPSプロジェクトの始まり

 2002年1月、XOOPSプロジェクトの本家サイトが公開され、同時にXOOPS初の公開パッケージがリリースされた。以後、数回のマイナーおよびメジャーバージョンアップを経て、2004年5月13日現在はXOOPS 2.0.6が最新の公開パッケージとなっている。

 当初、XOOPSプロジェクトの公式サイトは本家サイトのみであったが、ヨーロッパおよびアジア圏でのユーザ数の増加により、世界各国にてローカルの公式サイトが続々と開設された。現在までに10カ国以上の公式サイトが公開されており、非公式なサイトも合わせると、数十カ国でXOOPSが利用されているのではないだろうか。

XOOPS日本公式サイト

 前述した通り、10カ国以上でXOOPSの公式サイトが開設されているが、もちろん日本でもいち早くXOOPS日本公式サイトの運営が開始され、現在では登録ユーザー数が5600人にまで達している。

 日本公式サイトでは、主にXOOPSに関連するニュース掲載および配信、メーリングリストと連動した形態によるフォーラムでのユーザーサポート、XOOPS関連リンク集の運用、ならびにサードパーティ製モジュールの公開情報の掲載などを行っている。また、XOOPS日本公式サイトの姉妹サイトとして、XOOPSのハック方法などを中心に議論を行う場の「XOOPSハッカーズ」サイト、数多くのXOOPS関連ドキュメントが公開されている「XOOPSドキュメント」サイト、そしてXOOPSのテーマファイルを多数提供する「XOOPSテーマ配布」サイトがある。なお、XOOPSのモジュール情報を提供するサイトも最近まで存在したが、現在では日本公式サイトに統合された。

日本XOOPSユーザ会設立に向けて

 現在のところ、日本XOOPSユーザ会というものは正式には存在しない。しかし、2002年12月に数名のメンバーからなるXOOPS日本チームが結成され、日本公式サイトの運営を中心に、ドキュメント作成、イベント開催など、XOOPSを普及させるために非常に多くの活動を行っている(関連ニュース記事)。

 特に、ドキュメントの充実度、イベントおよびフォーラム参加者数などを見る限り、世界の中でも日本のコミュニティが実質的に最も大きな盛上がりを見せているのではないだろうか。今後、日本におけるXOOPS普及が更に進み、また、後述する問題が解決されれば、本家XOOPSサイトとの関係が整えられることで、正式に日本XOOPSユーザ会が発足する日も近いのではないかと思う。

XOOPSプロジェクトの課題

 これまで順調に発展してきたXOOPSプロジェクトだが、まったく問題が無いとはいえない。例えば、XOOPSではモジュールの作成が比較的容易なため、多くのサードパーティ製モジュールが公開されているが、中にはセキュリティ問題を抱えるモジュールが存在する。

 また、XOOPS 2.0.6以降、大幅に開発者数が増加し、本家の開発者メーリングリスト上では活発な議論が繰り広げられている。しかし、コア開発に関してはあまり上手く進んでいるとはいえない。次期メジャーバージョンアップのXOOPS3開発に関しては、少し前に本家サイトにて情報公開されたが、実際に開発が行われている状況には至っていない。

 更に、言葉の壁による問題からか、各国公式サイトの情報がローカルに留まったままであり、他公式サイトへと伝わらないという状況も多々見受けられる。これらの情報の中には、重要なセキュリティ関連の情報が含まれている場合もあるのだ。しかし、以上の問題の多くは、時間と共に解決されていくものと思われる。その中でも特にセキュリティに関しては優先的に多くの情報を公開し、開発者のみならずユーザーにWebアプリケーションのセキュリティに対する認識を改善してもらうことが必要だ。

 そのほか、前述した開発上の問題に関しては、個人的な意見になってしまうかもしれないが、コアの開発者数をできるだけ絞り、より迅速に質の高いアプリケーションを開発、提供していく体制を整えることが必要だと考える。今まで多数のCMS関連プロジェクトに直接的、間接的を問わず関わってきたが、コアの開発者数の増加に伴い、当初の理念、開発マインドなどが希薄となり、同時にプロジェクト内のモチベーションやアプリケーション自体の質が下がってきてしまうのをユーザーおよび開発者側の双方から経験した。

 筆者自身、現在は開発に専念し、XOOPSプロジェクトの運営に関して個人で意思決定を行う立場にはないが、今後のことを考えると更なる改善が必要ではないかと思う。

取りあえず使ってみよう、という気軽さを大切にしたい

 XOOPSプロジェクトは、正式に始動してから2年弱と非常に若いプロジェクトだ。それにも関わらず、現在のように数多くのユーザーによる支持を得ることができた。その理由として、XOOPSの敷居の低さ、すなわちプログラミングやサーバなどの知識がまったく無くても、環境さえ整っていれば約5分程度で導入可能な点を挙げることができる。

 XOOPSのスローガンの1つに「Just use it!」(取りあえず使ってみよう)というものがある。XOOPS自体に負けず劣らず、XOOPSコミュニティも気軽に参加しやすい身近なコミュニティとなっている。今後、更にユーザ数が増加し、XOOPSコミュニティが大きく育っていくことを望むが、XOOPSおよびXOOPSコミュニティの最大の特徴でもある「気軽さ」が失われることのないような活動を続けていきたいと思う。

[小野和巳,ITmedia]

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