コラム
2004/05/25 00:03 更新

国内代表者に聞くオープンソースの今:
品質の向上を今後の課題に、OpenOffice.org日本ユーザー会 可知豊氏コラム

オープンソースで開発が進む統合オフィスソフト「OpenOffice.org」は、無料で誰でも自由に使えるソフトとして人気が高い。多くの言語・プラットフォームに対応し、Microsoft Officeと高い互換性を有する。

 Linuxチャンネル連載「国内代表者に聞くオープンソースの今」。オープンソースで開発が進む統合オフィスソフト「OpenOffice.org」。ユーザー相互の情報交換を推進するだけでなく、日本語版の品質を高める作業も推進するOpenOffice.org日本ユーザー会、可知豊氏にコラムを執筆いただいた。


 オープンソースで開発が進む統合オフィスソフト、それがOpenOffice.org(オープンオフィス ドット オルグ)だ。多くの言語・多くのプラットフォーム対応を特徴とし、Microsoft Officeと高い互換性を持つ。

 メディアで紹介される際には、OpenOfficeやオープンオフィスと表記される場合があるが、それは特定企業の登録商標であり、正式名称は「OpenOffice.org」となる。

 また、OpenOffice.orgは、このソフトを開発しているコミュニティの名前でもある。こちらは、本家OpenOffice.orgと呼ばれる。

OpenOffice.orgのルーツ

 OpenOffice.orgのルーツは、ドイツのStarDivision社が開発・販売していた統合オフィスソフトStarOfficeにある。WindowsだけでなくLinuxやSolaris・OS/2など多くのプラットフォームに対応し、欧米では400万人を越えるユーザーがいたそうだ。1999年、Sun Microsystems(以下、Sun)が、このStarDivisionを買収しStarOfficeをオープンソース化した。これがOpenOffice.orgである。Sunは、同じソースコードにもとづいてStarOficeを開発・販売しているが、日本では、他社がこの商標を持っているため、StarSuiteという名前となった。

 一般ユーザー向けのStarSuiteは、ソースネクストから発売されている。書店やコンビニに置いてあったり、藤原紀香さん出演のテレビCMが放映されたりしているので、ご存じの方も多いだろう。こちらは、発売3ヶ月で20万本出荷されたという。

 本家OpenOffice.orgは、Sunがスポンサーとなって作られた開発コミュニティで、ここが日本語版を含めてOpenOffice.orgの開発を行っている。また、SunによるStarSuiteの変更点も、本家OpenOffice.orgにもフィードバックされている。

メーリングリストからスタートした日本ユーザー会

 OpenOffice.org1.0は、2002年5月に公開された。最初の日本語版は、いくつかの設定をしないと文字化けするなどの不具合を持っていた。このような情報交換をするためにできたメーリングリストが、日本ユーザー会の母体になっている。当初は、日本非公式ユーザー会MLという名前だったが、すぐに参加者が800人近くになり、ほかに同じような団体もなかったため、任意団体としてOpenOffice.org日本ユーザー会と名乗るようになった。

 これと同じ時期に、本家OpenOffice.orgのCommunity ManagerであるLouis Suarez-Potts氏からコンタクトがあり、本家の中に各言語版のユーザーを支援するNative-Lang Projectを立ち上げることが知らされた。そこで、中田 真秀氏がProject Leaderとなり、日本ユーザー会の有志がJapanese Native-Lang Projectを立ち上げた。こちらは、日本ユーザー会のもうひとつの顔ということになる。

 このような事情のため、日本ユーザー会のWebサイトやメーリングリストでは、本家OpenOffice.orgのシステムを一部に利用している。

現在の活動状況

 日本ユーザー会は、情報交換のためのメーリングリストから始まったこともあり、現在も活動の中心は、ユーザー相互の情報交換にある。

 参加者の目的に応じたいくつかのメーリングリスト・掲示板で情報交換を行い、Webサイトにて情報を発信している。これは、本家のWebサイトだけでなく、もうひとつの日本ユーザー会サイトや、手軽に使えるOOoWikiなどでも行っている。

 また、日本語版のリリース時には、リリース候補の動作確認・フィードバック、QAテスト、プレスリリースの発行なども手がけている。

 今後は、次のような活動を進めていくことになるだろう。

  • OpenOffice.org日本語版の品質を高める
  • OpenOffice.orgに関する情報を発信する
  • OpenOffice.orgをより多くの人に使ってもらう
  • OpenOffice.orgに関する活動の場を整備する

 日本語版の品質を高めることは、特に重要な課題のひとつである。先日リリースした1.1.1日本語版では、本家のリリース候補に日本語版についてのバグが発見された。

 残念ながら、本家ではスケジュールや他の言語版とのかねあいから、この問題をすぐに解消できなかった。そこで、日本ユーザー会では、この問題を解消した日本ユーザー会ビルドを配布した。次の日本語版1.1.2では、本家版でもこの問題が解消される予定となっている。日本ユーザー会は、今後も本家OpenOffice.orgと連携して、日本語版の品質向上に努めていきたいと考えている。

 なお、ユーザー会の多くの活動は、必ずしもトップダウンで進んでいる訳ではない。やりたいという人が出てくれば作業が進み、それが優れた作業なら評価されるだろう。もしかしたら、誰も手を動かす人がいなくて、かけ声だけに終わるかもしれないが。

 そのためにも、より多くの人に、OpenOffice.orgを取り巻く環境をより良くする作業に参加してほしいと思う。

筆者自身の活動

 筆者は、本業がテクニカルライターであるため、ユーザー会の中では、マーケティングプロジェクトのコーディネータとしてメディア向けの対応を担当している。また、Japanese Native-Lang projectのco-leadも担当している。おかげで最近は、OpenOffice.orgおよびオープンソースに関する記事執筆が増えてきた。

 ドキュメント作成では、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の2003年度事業「電子政府におけるオープンソフトウェア活用に向けての実証実験フィジビリティー調査」の一環として、無料で誰でも自由に使える「OpenOffice.orgオープンマニュアル」を作成・公開している。

 OpenOffice.orgは、Windowsユーザーにとって初めて触れるオープンソースソフトウェアになることが多いようだ。筆者をはじめ多くのメンバーが、ユーザー会で初めてコミュニティ活動に参加している。日本ユーザー会は、スタートからまだ2年しか経っていない。先行するコミュニティの参加者からは、多くの貴重なアドバイスを頂いてきた。これには非常に感謝している。

 今後は、オープンソースデスクトップの普及にともない、これまでとは違った人材やセンスが、コミュニティにも求められるだろう。単に「無料で高機能」というだけでなく、これからもそれを手に入れ続けるため、より多くの人にOpenOffice.orgやオープンソースのことを理解してもらえればと願っている。

[可知 豊,ITmedia]

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