ライバルを引き離すための切り札――SiebelのBIソリューション

 2005年の幕が明けた。グローバル競争の進展とそれに伴うビジネスへの効率化の要求が強くなるにつれ、企業におけるITの位置づけは経営分野へと年を追うごとに軸足を移している。インターネットを利用したビジネスは、コンシューマーおよび企業向けの両方で急拡大しており、ビジネスプロセスにムダが存在することをもはや許さない状況になってきている。

 今後も大きな流れは変わらない。ビジネスの電子化が進み、データ量の増大やデータソースの拡散がますます進む中、1つの動きとして、企業経営にデータをフル活用する取り組みがさらに発展することが考えられる。  その第一候補に挙げられるのが、「データ経営」を実践するための意思決定支援システム、ビジネスインテリジェンス(BI)だ。ERPの導入も一巡しており、今後の企業のIT投資の行き先として、BIが非常に注目を集めている。それを裏付けるかのように、Citigroupなど米国の金融機関などが実施したCIO(情報統括責任者)向けのさまざまな調査において、今後のIT投資先の最上位にBIが挙げられている。

 一方、調査会社IDCは、BIおよび顧客分析アプリケーションの市場が、2003年の133億8200万ドルから、2008年には188億7200万ドルへと順調な右肩上がりの曲線を描いて成長すると予測する。

 この大きな潮流に乗り、アプリケーションベンダー各社もBIへの取り組みを強化している。CRMアプリケーションの提供で存在を確立した米Siebel Systemsも、2004年10月に「Enterprise Analytic Applications」を発表し、BIへの本格参入を表明した。

 Siebelのユーザー企業を例に、BIが具体的に企業のビジネスにどのような効果をもたらすのかを考えてみる。

 英British Telecom(BT)は、業務プロセスとシステム間の関係を密にリンクするためのDNAとして組み込むべく、SiebelのBIソリューションを導入した。これにより、ビジネスの動きの1つ1つがシステムと連携するため、時間が経過するとともにビジネスプロセスの効率性が高まる、いわゆるクローズドループ化された環境を構築することができた。

 具体的に同社では、BIツールを利用して、マーケティング担当者向けにビジネスのリアルタイム情報を提供するとともに、測定基準を定めたことにより、顧客セグメントの高度化やパイプライン分析、キャンペーン効果の分析などを行うための意思決定の質を向上させることができた。また、意思決定にかかる時間も短縮できたという。この背景には、BI導入により、マーケティング担当者が従来のような曖昧な基準ではなく、意思決定基準を明確に持てるようになったことがある。また、主観や営業担当者の意見に依存していた判断も、BIを利用することにより、マーケティング活動全体の視点でさまざまな活動を測定することができるようになった。

 BIの取り組みが、いままで多かった部門レベルではなく、エンタープライズ規模へと拡大していることも大きなトレンドだ。ヘルスケアを中心としたソリューションを提供する米Cernerは、同じくSiebelのBIソリューションを用いて、事業部ごとに利用していたBIを全社規模のBIアーキテクチャに統合した。これにより、1000人以上の社員で構成される企業を全体最適を追求する組織へと変革できた。

 BIに関するもう1つのトレンドは、テンプレートやダッシュボードのようなツールを利用することだ。データウェアハウスを構築し、ビジネスインテリジェンス機能を実装することは、もちろん従来の手作りによるアプローチでも可能だ。だが、そういった機能をゼロから開発した企業の多くが、「時間がかかりすぎる」「結果的に高い」「必ずしも期待どおりの効果が出ない」といった不満を持ち、また、コスト面の問題も残ってしまうことが多い。そのため、さまざまな業種の特性などを盛り込んだベストプラクティスであり、完成品であるアプリケーションベンダーのパッケージをベースに導入する方が合理的という判断をしている。米Pfizerは、1200人のユーザー向けにSiebelのBI導入を決断、採用決定からわずか4カ月で本番稼動させた。また、Baxterも4カ月、Compass Bankも2カ月で導入を完了したという。

 ビジネスインテリジェンスは、業務プロセスの改善やコスト削減だけが目的ではなく、企業として他者への差別化を図るための重要なツールとして認識され始めている。そして、選択肢の中心はパッケージによる導入だ。中でも、世界有数の企業の多くが採用しているSiebelのBIツールについて詳しく紹介する。

[ITmedia]