「教育×ビッグデータ」から始まった機械学習や深層学習とは?:ビッグデータ利活用と問題解決のいま(1/3 ページ)
「FinTech」や「HealthTech」と並んで、「EdTech」(教育×IT)も注目されている。ビッグデータを支える新技術開発や人材育成の観点からもイノベーションが期待される領域だが、ここから登場した機械学習や深層学習について解説する。
米国オープンガバメント施策の起点
教育は、米国政府が一連のオープンデータ/オープンガバメント政策において、終始一貫して取り組んできたテーマの1つだ。
例えば、2015年10月に公表された「第3次オープンガバメント国家行動計画」(関連資料PDF)では、公的サービスを改善するためのオープンガバメント施策として、「オープンなライセンスと技術を介した教育リソースへの拡張」と「学生が高等教育について十分な情報を得た上で意思決定できるような支援」を掲げ、情報へのアクセス施策としては「データ、研究、技術への一般的なアクセスの増加による先進的なオープンサイエンス」を掲げている。
また、米国の各行政機関から公開されるデータを教育現場で自由に利活用できるように、アクセシビリティやユーザビリティ、API、オープンライセンス体系を整理、標準化する取り組みも古くから行われてきた。
このような教育を起点とするオープンガバメント施策の影響は、公的部門にとどまらず、民間部門における起業家育成や雇用創出に向けた取り組みにも広く波及している。
例えば、2015年4月に米国の投資ファンドGSVキャピタル傘下のアクセレレーター「GSVlabs」は、初・中等教育、高等教育、企業教育のスタートアップ企業を支援する「EdTechイノベーションラボ」の設置を発表した(関連リンク)。同ラボは、米国教育省の元シニアアドバイザーであるナンシー・ルー氏をリーダーとして、企業パートナー3社(インテル、アポロ、AT&Tアスパイア)のほか、教育業界に精通したアクセレレーターやアドバイザリーボードから成るエコシステムをベースに、様々な起業支援活動を行っている。
EdTechイノベーションラボが支援している教育スタートアップ企業の1つが、オレゴン州のIdeaphoraだ。同社は、いわゆるディープラーニング(深層学習)の分野で、動画、電子書籍、Webページ、アップロードファイルなど、さまざまなデジタルコンテンツを統合・分析し、ナレッジマッピング技術を駆使して、個々の学習者向けに知識を体系化するソリューションの開発を進めている(関連リンク)。図1は、同社の深層学習のためのナレッジマッピング技術(例)を示している。
図1:Ideaphoraのディープラーニングのためのナレッジマッピング技術例 出典:Ideaphora「IDEAPHORA’S NEW TECHNOLOGY APPLIES KNOWLEDGE MAPPING TO DIGITAL CONTENT FOR DEEPER LEARNING」(2015年6月29日)
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