コレ1枚で分かる「ソフトウェア化する世界」:即席!3分で分かるITトレンド
さまざまなモノやサービスを“個別に最適化”されたものとして利用できる仕組みをもたらした“ソフトウェア化”とは? クラウド、3PL、シェアリングエコノミーを例に解説します。
この連載は
カップめんを待つ間に、電車の待ち時間に、歯磨きしている間に“いまさら聞けない”ITトレンドが分かっちゃう! 今さら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスの皆さんのこんな課題を解決します。
ソフトウェア化による全体最適と個別最適
膨大なシステム資源を、計算能力、記憶容量、データ処理機能などを含めて、データセンターに集約し、ソフトウェアの設定で必要な機能や性能を個別に構成し、調達するための仕組みが、「クラウドコンピューティング」です。
倉庫や配送などの物流機能の全体、もしくは一部を第三の企業に委託し、必要に応じて貨物の保管や配送を個別に依頼できる物流業務形態は、「サード・パーティ・ロジスティクス(3PL:third party logistics)」です。
個人や企業が所有する資産、例えば自家用車や荷台の空きスペース、住宅の空き部屋などを公開し、それを使いたい企業や個人とマッチングして提供するビジネスや経済の仕組みを総称して「シェアリングエコノミー」と呼んでいます。
クラウド、3PL、シェアリングエコノミーは、いずれも資産を特定の個人や企業が自分たちのために占有するのではなく、共同で使うことを前提にネットを介してシェアし、必要とする人や企業に使ってもらおうというものです。
また、ユーザーはソフトウェアを介することで、その物理的な実態がどのようになっているかを意識する必要はなく、自分たちのニーズに応じて個別最適化された機能や性能、資産を組み合せ、選択して使うことができます。
このような仕組みが成り立つのは、需要と供給の双方にメリットがあるからです。例えばクラウドと3PLの場合はどちらもコモディティであり、それを所有することが必ずしも競争優位を生み出さないからです。ならば共同で使うことでコストを抑え、利益の拡大や競争力を生み出すビジネスモデルやビジネスプロセスにコストを掛けようという経営ニーズから、需要を伸ばしています。
シェアリングエコノミーの場合は、所有することにこだわりがなく、使いたいときに使えれば良いという需要側のニーズと、使っていないときは第三者に使ってもらって収益を上げたいと考える供給側のニーズを直接結び付けることが可能となり、実現しました。
いずれも、企業や個人が重複した設備や資産を持つことなく、それらをシェアすることで、全体としての無駄を省いて全体最適を実現する一方で、ソフトウェアを使って物理的実態を仮想化し、必要に応じて個別に取り出し、使えるようになったことで実現しました。
かつてITは、効率化を追求するために標準化・全体最適化に取り組んで来ました。その結果、個別最適化は犠牲にされてきたのです。しかし、クラウドや人工知能などのソフトウェア技術の進化とともに、効率化を犠牲にすることなく、個別最適化を実現できるようになったのです。
クラウドや3PLは、それを専門にすることで機能をより高度化し、洗練させることができ、サービスの価値を高めることにもつながっています。
このように物理的実態をソフトウェアを介して利用者につなげる仕組みは、これからの社会システムの基盤となっていくでしょう。
著者プロフィル:斎藤昌義
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
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