高い技術力と「脱縦割り」で世界へ NEC・新野社長が語る成長回帰のシナリオ:トップインタビュー(2/4 ページ)
遠藤前社長からバトンを託され、4月にNECの社長に就任した新野隆氏にインタビュー。目まぐるしく変わるITトレンドの中で、今後どのように動いていくのか。IoTプラットフォームやセーフティビジネスなど、さまざまなキーワードが見えてきた。
――IoTは他のベンダーも注力している分野です。NECとして、どういった点で差別化しようと考えていますか?
新野社長: IoTといってもクラウド、エッジコンピューティング、センサーなどのデバイスがあります。この3つをつなぐ2つのネットワークを含めてわれわれは「5層モデル」と呼んでいるのですが、上のレイヤーほどプレイヤーがたくさんいます。
それに対してNECは、いわゆる“ITとネットワーク”を自力でずっとやってきた。この強みは下位レイヤー、いわゆるM2Mのところをいかに高速にセキュアにやるかという部分に表れ、われわれが非常に強い分野と言えます。
クラウドや上位のネットワークについては、通信キャリアが提供しているネットワークを使えます。われわれも独自でクラウドを提供していますが、それこそ適材適所で、いろんなクラウドをインテグレートして一番いい方法でやればいいのです。
もう1つ、人工知能もそうですね。さまざまなベンダーが研究を進めていますが、NECの強みは顔認証や指紋認証で、世界一の性能を維持しています。AIは相関関係を高速かつ正確に取る技術力で差が出ます。顔認証だけで言えば、世の中にいくらでもあるけれども、NECは精度とスピードでダントツです。一桁くらい違う。
このレベルに達するには相当なノウハウが必要で、何十年という積み重ねの中で生まれたユニークな技術です。それが全てというわけではないですが、そういう強みを核にしながら、もっと価値を広げられるソリューションを出せればいいと思っています。
――高い技術力ならではのソリューションというのは、今後増えていくのでしょうか。
新野社長: ものすごい勢いで増えるでしょう。例えば今なら、10万人に入るスタジアムに1人や2人紛れ込んだ可能性のある不審者を10秒で探しなさいと言ったら人力では絶対できないですよね。でも将来、認証技術が発展すれば10秒で見つけられるかもしれない。スピードや精度がぐっと上がることで、桁違いな価値が出てくる分野はいくらでもあると思います。
今も本社ビルの入館ゲートや売店で実証実験をやっています。IDカードなんかなくていい、顔だけ登録すれば顔パスで。大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンで行っている実験はカメラに顔を向ける必要がありましたが、今回はそれすらもいりません。相当な混雑状態の中で動いている人たちを認識する技術はなかなかないんですよ。
顔だけ認証すれば、IDと全部連携して買い物ができるとか、スピードと精度を上げていけば、顔だけで何でもできる――本当の意味での顔パスですね。
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