高い技術力と「脱縦割り」で世界へ NEC・新野社長が語る成長回帰のシナリオ:トップインタビュー(3/4 ページ)
遠藤前社長からバトンを託され、4月にNECの社長に就任した新野隆氏にインタビュー。目まぐるしく変わるITトレンドの中で、今後どのように動いていくのか。IoTプラットフォームやセーフティビジネスなど、さまざまなキーワードが見えてきた。
――これまで記者会見などでは繰り返し、今後グローバルで通用する技術をどう展開するかが課題だとお話されていました。その点についてはどうでしょう。
新野社長: 今までやってきたサイバーセキュリティも含めたセーフティ、それからネットワークのSDNやNFV。この2つの分野を早く伸ばしたいですね。これは確実にわれわれがグローバルで戦えると思っているし、ブランドとして周知している手応えも出てきています。
ビジネスモデルの変革も大切です。顔認証についても、今まではお客さまから「これライセンスで売ってよ」みたいなお話が多かったのですが、それだけではビジネスの規模はたかが知れています。例えば、ライセンス売りで1億円という案件が、カメラを仕入れてソリューションにすれば15億になるかもしれない。さらに収集したデータを自分たちで管理しながら、いろんなアラートを出すようなサービスとして広く提供すれば、100億になるかもしれない。
世界規模でテロや事件があちこちで起きている今、市が丸ごと安全を確保するためのシステムを入れるという取り組みが、さまざまな場所で始まっています。アルゼンチンのティグレ市もそうですが、そんな実例がいくつかできれば、非常に強いブランドになるはずです。
今、ニュージーランドのウェリントン市は、スペインのデータセンターから監視をしています。1つのデータセンターでいろんな都市を監視すれば、より多面的な安全対策を講じることができます。この都市はこういうことをやっているのですごく犯罪率が低いとか、交通渋滞がないとか、そんなベストプラクティスを蓄積して、それをさらに展開していく。数が増えれば増えるほど、点から面に展開して価値が上がるわけです。こういうことを早くやりたいですね。
――ライセンスからサービスやソリューションへと転換。それには、社内の横の連携も必要なイメージがあります。
新野社長: まさにそうですね。元来、NECは縦割りのBU(ビジネスユニット)が強い会社で、BUごとに会社が分かれていた時代もありました。それから時代が変わり、ICTで社会ソリューション事業に注力すると宣言した今、「NECは何やるの?」と。ITもネットワークも巻き込んで、NEC全体として何をやるのかが大切なテーマになりました。これこそが「One NEC」ということです。
本当の意味で「One NEC」だからこそできること。持っているリソースを使いきって、その価値を最大化するように動かない限り、世界を相手に戦えないでしょう。従業員一人一人がどう考えて、どう行動していくか。この「One NEC」が当たり前の文化になるまで、意識してやり続けるべきだと思っています。
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