コールセンターを支えるWatson――地味だけどスゴいヤツ:デジタルセラー中山の視点(1/2 ページ)
華やかな印象を持たれることもある人工知能(AI)ですが、実際の活躍の場は地味……。お客さま相談窓口などで活用されるIBMの「Watson」もしかり。とはいえ、それを支える技術は実はスゴいのです。
この記事は中山貴之氏のブログ「デジタルセラー中山の視点」より転載、編集しています。
「IBM Watson」については、多くのメディアで取り上げられていることもあり、注目している人も多いのではないでしょうか。関心があるとはいえないまでも、Watsonという言葉を聞いたことがあるという方は多いと思います。
一般的に人工知能(AI)として捉えられることの多いWatsonですが、IBMはWatsonを「コグニティブ・コンピューティング」として位置付けています。コグニティブは認知型と訳されることが多いでしょうか。
最近のWatsonの活用は、東京大学医科学研究所での治療方法の検討の支援、恋愛相談への活用など、幅広いものがありますが、身近に感じられるものとしては、お客さま相談窓口での活用が挙げられます。
お客さま相談窓口でのWatson活用例
みずほ銀行では、コールセンター窓口の担当者(オペレーター)が、顧客からの質問に対して適切な回答を選択することを支援する事例が公表されています。これは、顧客からの問い合わせ内容が音声からテキストに変換されてシステムにインプットされると、候補となる質問と回答案が表示され、それを参考に回答する――というものです。これにより、回答までの時間を短縮することでオペレーターのスキルアップと合わせて、顧客の満足度を高めることにもつながります。
このケースではオペレーターが顧客との接点になっていますが、顧客からの問い合わせ内容(主にテキスト情報)をBOTが判断して自動で応答する仕組みをとっているケースもあります。この場合にはオペレーターは不要で、24時間対応が容易に実現できるというメリットがあります。
また、顧客とのダイレクト、リアルタイムでの対応ではなく、蓄積された顧客の声(Voice of Clients)の分析にWatsonを活用するケースもあります。このケースでは、これまでに蓄積されたログや、その他の媒体に存在する各種情報を収集、分析し、新たな知見の発見へと結び付けていくことにつながります。
三井住友海上では、年間70万件もの問い合わせに対応するため、オペレーターの増強をはじめとするさまざまな対策の検討を行っていて、その一環として、“顧客がなぜ問い合わせをしてきたか”を分析することで、問い合わせに効率的に対応できるようにしていくことにしました。
問い合わせ内容は文章で蓄積されていきます。そういった非構造化データをテキスト解析技術で分析することによって、お客さまのタイプ別に問い合わせ傾向の把握を行い、分析結果を基に情報発信やオペレーター配置の適正化に取り組むことで、問い合わせ件数の削減や応答率が向上するといった効果が得られました。
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