コレ1枚で分かる「ガソリン自動車と電気自動車」:即席!3分で分かるITトレンド
ガソリン自動車から電気自動車(EV)へと変わろうとしている自動車業界の動向を、キーとなるEVの特徴と自動車の“ソフトウェア化”について整理しながら、読み解いていきましょう。
この連載は
カップめんを待つ間に、電車の待ち時間に、歯磨きしている間に“いまさら聞けない”ITトレンドが分かっちゃう! 今さら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスの皆さんのこんな課題を解決します。
EVの普及と自動車のソフトウェア化
自動車業界が、GoogleやApple、Microsoft、そして新興の電気自動車(EV)メーカーTeslaといった企業に戦々恐々としています。その背景には、EVの普及と自動車のソフトウェア化があります。
まずEVですが、エンジンを搭載する自動車に比べ、圧倒的に部品点数か少なくなります。また、部品の種類も複雑な機構を組み合わせた機械部品から比較的構造が単純な電気・電子部品が中心となり、機械加工や組み立てノウハウの蓄積がない企業でも参入が容易になります。米Teslaや日本のGMLなどのEVベンチャー企業が参入できるのも、このような背景があるからです。
また、車の機能や性能の多くがソフトウェアに依存するようになります。これは、エンジン自動車でもいえることですが、EVになればその割合はさらに高まり、ソフトウェアの開発力が製品の競争力になると考えられます。
GoogleやApple、Microsoftは、このソフトウェアをさまざまな車で利用できるプラットフォーム=車載OSとして提供しようと動き始めています。例えば、GoogleのAndroid AutoやAppleのCar Play、MicrosoftのMicrosoft Autoは、今でこそカーナビやテレマティクスの機能に限定されていますが、やがて自動運転機能を提供し、自動車の走行をも制御する車載OSへと進化していくことが考えられます。
もし車載OSで覇権を握られれば、Windowsがコンピュータで、Androidがスマートフォンでそうであったようにハードウェアはコモディティ化・汎用化し、既存の自動車メーカーが長年蓄積してきた独自の製品開発力、機械加工や組み立てなどの競争力の源泉を失ってしまうことになります。
半導体メーカーの米NVIDIAはこのような動きを背景に、自動運転をも視野に入れた車載SoC(System on a Chip、1チップでコンピュータの機能を全て統合しているチップ)を提供しはじめており、他の半導体メーカーや電子機器メーカーも同様に汎用部品提供の動きを展開しつつあります。
このようなソフトウェア企業の動きに対し、自動車メーカーや車載機器・半導体メーカーが主導する形でオープンな車載OSとしてAGL(Automotive Grade Linux:オートモーティブグレードリナックス)を開発しようという取り組みも始まっています。これは、Linuxをベースとした車載OSで、高度安全支援や自動運転を視野に入れて開発が進められています。
また、自動車はコネクテッドカーとしてインターネットにつながり、車載OSとクラウドサービスとの連携を実現し、車両単独ではできない機能やサービスを提供できるようになり、自動車の在り方や価値を大きく変えていくと考えられます。
米カリフォルニア州は、ZEV(Zero Emission Vehicle:排ガスゼロの車)規制を定め、州内で一定台数以上自動車を販売するメーカーは、その販売台数の一定比率を、排出ガスを一切出さないEVや燃料電池車(FCV)にしなければならないと定めています。ただし、EVやFCVのみで規制をクリアすることは難しいため、プラグインハイブリッドカー(ハイブリッドカーは除外)、天然ガス車、EVなどのクリーンな車両などを組み入れることも許容されています。このような動きは世界にも広がりつつあり、EVは今後、大きな普及が期待されています。
著者プロフィル:斎藤昌義
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
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