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シンギュラリティ時代のAIとの働き方とは?(2/3 ページ)

全ての業界は5〜10年で成長が止まり、株価が暴落、経営陣はクビになる?――そんな、シンギュラリティの権威が予想する“破壊”の波をうまく乗りこなし、AIと働く日本の未来を模索する。

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AIは日本の生産性を改善するか

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経済産業省経済産業政策局参事官の伊藤禎則氏

 2番目のテーマである「AIは日本の生産性を改善するのか」については、経済産業省経済産業政策局参事官の伊藤禎則氏が「AIやロボットの領域で日本にアドバテージがある」と指摘する。

 「AIが人の仕事を奪ってしまうというよりも、AIに人の仕事をやってもらうことで人手不足を解消できるメリットが先行する。また、日本のロボット技術の原型は“ドラえもん”であり、人に寄り添い、人を手伝うものと考えられている。さらに日本はリアルテクノロジーでも強みがある。ロボットや製造技術に強さがあるもアドバンテージとなる」(伊藤氏)

 加えて、「製造現場でここまでデータが取られている国はない。ドイツがインダストリー4.0でやっていることは、日本がやっていることを周回遅れでやっているともいえる。これはあらゆる業界で見られる日本固有の状況であり、介護の現場でも9割のデータが残っており、先進国でもこんな国はない。だが、問題はそれらのデータが手書きであるという点」とした。

 一方、「日本における課題は、多くの仕事がAIに置き換わった後に残った仕事が、報酬の低い仕事や、付加価値が低い仕事だけになった場合にはどうするかという点」と言及。このため「付加価値の高い仕事の領域をいかに増やすかが大切。日本の労働環境は、流動性が低く、異なる業種や経歴によるコンビネーションが少ないため、成長性の高い領域に移動できる可能性は低い。ここを修正していく必要がある」と述べた。

 続いて、「働き過ぎといわれる社会環境を変える必要もある。高齢者の就業、介護や育児などの家庭生活と仕事の両立が困難といった社会問題の解決は、現在の長時間労働を前提とした働き方では実現できない。2019年度には、労働時間の上限に関して、罰則付きの厳格な法規制が導入される予定もある。そういった労働環境の改善も踏まえた上で、働き方改革の鍵となるのは、AIとデータである。そこに向けて、日本は準備ができているのかを問うていきたい」と強調した。

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革命のトレンド(少子化・高齢化、Winner-takes-allへの移行、付加価値の源泉が変化)(出典:経済産業省資料)
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第4次産業革命による就業構造変換の姿(イメージ)(出典:経済産業省資料)

参加者から見た、AIによる生産性の改善

 参加者からは、自社のコールセンター業務でAIを活用したところ、対応時間の短縮やコスト削減が実現し、離職率が減少した例などが紹介され、「AIは生産性を上げるためには不可欠」といった声が挙がった。

“破壊”の波に立ち向かう日本独自の視点を

 ワファ教授は「テクノロジーは、メリットよりも、リスクを考えてほしい。ただ、AIによってもたらされる問題を捉えると、失業は全体の5%でしかない。もっと大きな問題があることを知ってほしい」と提言。

 「いまあるAIは、Excelのバージョン1.0のようなもので、まだまだ初期段階のものでしかない。今後、バージョンが上がることで世の中を変えていくことになる。スタートアップの企業が大手を食うといったことも起き始めているように、テクノロジーが世界を“破壊”することになる。この破壊的な波は、毎年違ったレベルに上がり、力を増していく。だが、それに向けて準備を整えている企業は、日本企業のわずか1%であり、残りの99%は気がついていない。米国でも気がついている企業は1〜2%程度だ」と述べた。

 だが、こうも指摘する。「日本のいいところは、テクノロジーを知っている政府高官がいること、AIとは何かということを分かっている企業のトップが多いことである。日本政府は、政策としてテクノロジーをインプリメントしている。日本は、一歩先に行くチャンスがあるが、そのためにはしっかり学ぶ必要がある」。

 さらに、「200年の歴史しかない米国が考える未来は、シナリオAが『スタートレック』のような社会、シナリオBは『マッドマックス』の世界だ。今はマッドマックスの道に向かっている」と持論を展開しつつ、「日本は長い歴史を持つ国だ。日本の昔の価値に立ち返ってみてはどうだろうか。知識を持ち、高見を目指し、悟りを開くといった学びを、未来にも生かせるのではないか」と結んだ。

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