もう「これだからWindows 10は……」といわせない? 移行の課題はどこまで解決されたのか:Microsoft Focus(1/2 ページ)
アプリの互換性が、アップデートの時期が、サポートサイクルが……など、これまで移行を阻む課題が多かったWindows 10。今、これらの課題はどれくらい解決されたのか。
Windows 10が、2015年7月29日に提供が開始されて以来、ちょうど2年が経過しようとしている。
その間、Microsoftは2015年11月12日のNovember Update、2016年8月2日のAnniversary Update、2017年4月11日のCreators Updateの3回のアップデートを行っており、2017年秋には、Fall Creators Updateとして、最新のアップデートを提供する予定だ。
日本マイクロソフトによるとWindows 10は、これまでに5億台以上のデバイスで利用されており、ガートナーの調査では、約3分の2の組織が今後1年以内にWindows 10への移行を完了する予定で、2017年末までに85%の大企業がWindows 10への移行展開をスタートする計画であるという。
さらに、Windows 10は管理の容易さや展開のしやすさから、導入後14カ月で展開コストを回収できることや、強固なセキュリティ機能により、セキュリティに関わる問題解決のための時間を33%削減できたという調査結果も発表している。
Windows 10への移行については、アプリの互換性が問題視されることも多いが、日本マイクロソフト Windows&デバイス本部Windowsコマーシャルチーム リードの浅田恭子氏は、「95%以上のアプリで互換性を実現している。国内での大規模移行事例においても、約2カ月という短期間で検証を行い、アプリの互換性にはまったく問題がなかった例が報告されている」と話す。
昭和シェル石油、AEONらがWindows 10移行に踏み切った理由
こうした背景からWindows 10に移行する企業は増えており、日本国内においても導入事例が幾つか公表されている。
昭和シェル石油は、Royal Dutch Shellとの資本関係が変わったタイミングで、国内独自のITシステムを導入することを検討。グローバルで採用しているITシステムでは不可能だったクラウドサービスの活用を決めるとともに、Windows 10への移行を決定した。移行に伴い、リプレースの対象外だったPCも含めて、3000台のPCをWindows 10環境に移行したという。
この事例は、従来システムを踏襲するのではなく、新たな環境に移行する際に先進的なITの活用を実践したケースといえる。同社では、Windows 10の導入によって、生産性向上とエンドポイントにおけるセキュリティ強化を実現できることを評価して導入に踏み切ったという。
従来のWindows 7環境で稼働していた200種類以上のアプリ互換性についても、新たなOSに移行するのであれば検証項目や工数には差がないと判断。Windows 8.1は選択せずに、Windows 10の導入に踏み切った。
ちなみに、リプレース対象外のPCを利用していたユーザーからは、Windows 10を導入後、マシンスペックには変更がなかったにもかかわらず、「起動時間が速くなった」「普段の作業がスムーズになった」という声があがったという。
ソフトバンク・テクノロジーは生産性向上を目的に、2016年1月という早い段階からWindows 10を導入。生産性を高める上で不可欠な“どこでも業務が行える環境”を整備するにあたって、Windows 10のセキュリティ機能に着目した。BitLockerやWindows Information Protection、Credential Guardなどを備えるWindows 10クライアントへの移行を図ったという。
同社では追加投資の必要なく、モバイルワーク時代に備えるべきセキュリティ機能が実装できる点を評価しているという。
また、SCCM(Microsoft System Center Configuration Manager)を利用することで、ビルドとバージョンの制御を行い、最適なバージョン管理と資産管理の透明化を実現。IT部門の管理負荷を軽減できたという。Windows 10の標準機能を利用することで、今後、購入を検討するサードパーティー製品の費用削減も可能になるとみており、Windows 10によるコスト削減効果への期待も大きい。
AEONは、2016年からWindows 10への移行に向けた検討を開始し、同グループで利用している約4万5000台のPCをWindows 10に移行したという。Windows 10への移行を前に、IE11によるアプリの動作検証を完了していたこともあり、検証期間を大幅に短縮することに成功。エンドポイントにおける情報漏えいリスクを最小化できるというメリットがあったという。
Windows 10ではアップデートのたびにセキュリティが強化され、Windows Defenderでは、「未知のウイルスが登場し、それを最初の人がクリックしたことで感染しても、35秒後には全世界の人がブロックされるようになる」など、いま求められるセキュリティ環境を実現している。
セキュリティを強化したいと考える企業にとって、Windows 10の選択は大きなメリットになっているようだ。
関連記事
- 連載:「Microsoft Focus」記事一覧
- これまで以上に前途多難? 「Windows 7サポート終了」認知徹底の難しさ
2020年1月14日の「Windows 7」の延長サポート終了を前に、日本マイクロソフトは「Windows 10」への移行に向けた活動を加速。その真意と、移行を控えたわれわれが留意すべきこととは? - サポート終了の悪夢再び? 3年後に迫るWindows 7のEOSで起こること
2020年のWindows 7の延長サポート終了を前に、Windows 10への移行に際して企業に求められる移行計画のポイントとは? Microsoftは、導入後のWaaSによる継続的更新の仕組みへの理解を推進する。 - MS本社で大暴露? 「我が社がWindows 10へのアップグレード移行を諦めた52の理由」
Windows 10の導入をネタに開催した読者イベント「俺たちの情シス 出張版スペシャル2」。後編では、残り2つのライトニングトークの内容を紹介していきます。「実際、マイクロソフトではどう運用しているのか?」といったテーマのお話も。 - 「Windows 10の無償アップグレードをもう一度!」 MS本社で情シス“魂の叫び”
6月29日に開催された「俺たちの情シス」出張版スペシャル。今回のテーマは「Windows 10」ということで、開催場所は品川にある日本マイクロソフト。「こんなの話して大丈夫!?」とギリギリのラインを攻めた勇者たちのライトニングトークの内容をご紹介します! - 三度目の正直? ARM版Windows 10は離陸するのか
Microsoftは、ARMプロセッサに対応したWindows OSに、何度か挑戦している。Windows 8をベースとした「Windows RT」、スマートフォン向けの「Windows 10 Mobile」などがそれだ。しかし、残念ながらほとんど使われていない。では2017年内に発売予定のARM版Windows 10はどうなのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.