アクサ生命の「デジタル変革」を託された女性、その異色のキャリア:【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(1/3 ページ)
企業のデジタル変革に注目が集まる中、2010年ごろからその取り組みを続けてきた企業がアクサ生命だ。2014年に変革を指揮する部署として設置した「トランスフォーメーションオフィス」でトップを務める不動さんは、長く米国に在住していたなど、異色のキャリアを持っている。
今、テクノロジーの力によって、保険業界が大きく変わろうとしている。保険は「リスク」を扱うビジネスだが、ウェアラブルデバイスや電子カルテ、果ては遺伝子解析といった膨大な量のデータから、高精度なリスク予測が可能な時代を迎えようとしているためだ。新たな保険商品やビジネスモデルが生まれる日も遠くはないだろう。
このデジタル化の波に乗ろうと、さまざまな施策を積極的に進めている企業がある。「アクサ生命保険(アクサ生命)」だ。2010年ごろから、ビジネスのデジタル化を経営課題に掲げ、2014年に新部署「トランスフォーメーションオフィス本部」を設立。IT部門とビジネス部門の枠を超え、会社全体の変革を進めるミッションを担っている。
「『2020年にはこうなりましょう』という目標のもとに、達成したい施策が約30個あります」
こう語るのは、トランスフォーメーションオフィス本部長の不動奈緒美さんだ。働き方や企業文化といわれる部分から、テクノロジー、インフラ、実務レベルでのプロセス、さらにはビジネスとITの関係性など、全てを包括的に変えていく――。社運をかけた一大プロジェクトを担う不動さんだが、その社歴は約7年と意外にも短い。
彼女はアクサ生命に入社するまで、長い間米国にいたのだという。
ITとビジネスの変革を担うキャリアとは?
不動さんのキャリアはボストンのソフトウェア開発会社から始まる。留学した米国で、大学卒業後そのまま就職したのだ。
建築の勉強をしたいと米国の大学に進んだところ、そこで出会ったのがITだった。キャンパスの中にIBMのラボがあり、そこでインターンをして「CAD」に出会ったのがきっかけだ。当時はまだMS-DOSの世界で、一般の人がコンピュータに触れる機会も少なかった時代。「面白くて仕方がなかった」と不動さんは当時を振り返る。
「大学を卒業して日本に帰るという選択肢もありましたが、そのときボストンで、ソフトウェア開発ができる日本人を探しているという求人情報を得て。『せっかく海外に来たのだから』と思い切って飛び込みました」(不動さん)
9年に及ぶ勤務期間のうち、当初はソフトウェアの日本語化に、後半は全体的な品質管理業務に携わる。日本に帰国したのち、ソフトウェア会社を経て、英国プルデンシャル生命保険の日本支社でのIT部門の副部長に就任。その後、縁あって2010年にアクサ生命に入社した。
一貫してIT畑のキャリアを進んだようにも見えるが、ソフトウェア会社での開発と、生命保険会社での開発、運用は性格が異なるという。ITを利用する相手が違うためだ。
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