Flashにとどめを刺したのは:Mostly Harmless(2/2 ページ)
かつてPC用Webブラウザの97%以上にインストールされていたFlashの栄枯盛衰を、その運命に決定打を与えたiPhoneの登場とともに振り返ってみます。
Flashを採用しなかったiPhone
Adobeにとってのもう1つの誤算は、Appleが2007年に発表したiPhoneでFlashの使用を許可しないと発表したことです。Adobeは強引に反対しましたが、Appleは(というかスティーブ・ジョブズは)頑として聞き入れませんでした。
この後、Flashの立場は急速に悪くなります。iPhoneがスマホで大きなシェアを獲得したため、iPhoneで見ることのできないFlashコンテンツをHTML5に置き換えようという動きが起きたのです。そして、スマホ向けサイトからFlashが消え始めました。
2011年、ついにAdobeはモバイルデバイス向けのFlashの開発を中止します(Android版は作り続けていました)。この時点でも、PC用ブラウザのほとんどにFlashがインストールされている状況には変わりはなかったのですが、コンテンツ作成側にしてみれば、PC用とモバイル用のコンテンツを作り分けるのは面倒ですし、折しもモバイルファーストの波も押し寄せており、新たにFlashでコンテンツを作ろうと考える人は減少していったものと思われます。
ところで、なぜAppleはiPhoneでFlashをサポートしなかったのでしょうか? Appleの公式な見解では、技術的な問題としています。
ただ、実は他に理由があるのではないかという話も聞こえてきます。
この記事では、Flashにバグが多いと言っていますが、ジョブズが(かつては仲のよかった)Adobeが主力製品をWindowsに移植し、Macのサポートを後回しにしているといって不満を持っていた――という記事も読んだことがあります。また、この記事でも触れているように、代替手段としてHTML5が見えてきていたことも、ジョブズが強気に出た背景にあったのでしょう。
プロプライエタリを許容しない空気
もう1つ思うのは、やはりインターネットの世界では、“私企業の技術を標準的に利用することに大きな抵抗があったのではないか”ということです。
Flashはプラグインこそ無料で配布されていますが、オーサリングソフトは有償ですから、一企業の利益に直結しています。また、Adobeが買収する前のMacromediaは携帯電話(スマホの前ですね)用にFlashを有償で提供する方針を打ち出し、携帯電話メーカー各社がこれに反発したという経緯もあったようです。「最初は無償と言っておいて、後で何を言い出すか分からない」という疑念を招いてしまったのかもしれません。
この、プロプライエタリをなるべく排除しようとする考え方は、今でもトレンドとして存在します。現在、多くの技術がオープンソースで提供されているのは、技術を囲い込むと周りから警戒されて普及が進まない、という側面があるからではないかと考えています。
どうする? 既存のFlashサイト
実はFlashには脆弱(ぜいじゃく)性が多く、「Google Chrome」や「Mozilla Firefox」などは2016年くらいから段階的にFlashコンテンツを表示しないようにしてきています。2020年のサポート終了以降は一切表示しないようにするようですが、一方で、私が心配するのは、いまだにFlashのままでコンテンツを配信しているWebサイトが多数あることです。
作ってしまったものを変えるのは大変だとは思うのですが、このままだとどこにも表示されなくなります。ChromeやFirefoxでは既に表示されていないかもしれません。言わずもがな、iPhoneでは最初から全く表示されません。
それなのに、なぜそのまま放ってあるのでしょうか? 今、無頓着にFlashを使い続けているサイトが、2020年までになんとかしようと思っているとはちょっと考えにくいように思います。「Windows XP」のサポート終了時のような騒ぎが起きないことを願います。
関連記事
- 連載:「Mostly Harmless」記事一覧
- Adobe、「Flash Player」の脆弱性を修正
Flash Playerの更新版となるバージョン25.0.0.171では、計7件の脆弱(ぜいじゃく)性が修正された。特にWindowsやMacでは更新を急ぐ必要がある。 - Adobe、AcrobatとReaderのセキュリティアップデートを予告
AcrobatとReaderの脆弱(ぜいじゃく)性を修正するセキュリティアップデートは、米国時間の8月8日に公開予定。この日はMicrosoftも月例セキュリティ更新プログラムを公開する見通し。 - 米政府、北朝鮮のサイバー攻撃を「HIDDEN COBRA」と命名 技術詳細を公表
米国土安全保障省などは、北朝鮮がサイバー攻撃に使っているとされるツールやインフラについての技術的詳細を公表し、対策の徹底を呼び掛けた。 - Adobe、Flash PlayerやAcrobat、Readerなどのアップデートを公開 Flashは優先度「1」
Flash Player、Acrobat、Reader、Campaign、Photoshop、Creative Cloud Desktop Applicationの脆弱(ぜいじゃく)性を修正するセキュリティアップデートが公開された。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.