NECは「セーフティ分野のプラットフォーマー」になれるか:Weekly Memo(2/2 ページ)
英ITサービス企業の買収を発表したNECは、これを機に個別SIからプラットフォーム事業者へと転換を図りたい考えだ。果たしてどんなプラットフォーマーを目指すのか。
3つのプラットフォームによる新たなビジネスモデルへ
NECは果たしてどんなプラットフォーム事業を目指すのか。新野氏は「3つのプラットフォームによって、利益率の高い新たなビジネスモデルを構築したい」と語った。3つのプラットフォームとは図2に示すように、データを収集・統合する「データプラットフォーム」、データの解析や将来の予測を行う「分析プラットフォーム」、水平展開可能な共通業務機能の「共通業務プラットフォーム」からなる。
また、新たなビジネスモデルとは、冒頭の新野氏の発言にあるように、従来の個別SIを中心とした事業からプラットフォーム事業へと転換を図ることである。
この新たなビジネスモデルからすると、NECにとって今回のNPSの買収は、英国の警察をはじめとした公共分野における共通業務プラットフォームとデータプラットフォームを獲得した形になる。そこにNECの分析プラットフォームを組み合わせて新たな価値を生み出そうというわけである。(図3)
新野氏は、「今回のNPSの買収は、NECにとって新たなビジネスモデルに転換していく1つの大きなきっかけになると考えている。今後は分析プラットフォームを強みとして、共通業務プラットフォームをさらに拡充してその上でのアプリケーション展開を広げていくとともに、データプラットフォームでもデータを活用した新たなビジネスモデルを模索していきたい」と、プラットフォーム事業への意欲を語った。
巨大なプラットフォーム事業を展開するベンダーを「プラットフォーマー」と呼ぶ。PC用OSのMicrosoftがその先駆けで、今では検索のGoogle、電子商取引のAmazon.com、ソーシャルメディアのFacebook、スマートフォンのAppleといった米国4社が代表例だ。頭文字から「GAFA(ガーファ)」と呼ばれ、Microsoftを合わせたこの5社は世界の時価総額ランキングのトップ5に名前を連ねている。
こうしたトレンドに重ね合わせるならば、今回のNECの買収劇は「セーフティ分野のプラットフォーマー」を目指した動きといえる。というか、そうした「構え」で挑んでほしいところである。今のNECにはそんな強い「錦の御旗」が必要な気がする。
ただ、プラットフォーム事業が業種別に分かれて成り立つのかどうかは未知数だ。それこそ、上記の巨大プラットフォーマーたちは業種にかかわらず、データプラットフォームと分析プラットフォームの獲得合戦とともに、共通業務プラットフォームでのパートナー争奪戦を繰り広げるだろう。その中で、特定の業界に精通したノウハウを生かしたプラットフォーム事業をどのように展開できるか。そうした観点からも、今回のNECの動きには大いに注目しておきたい。
関連記事
- 「Weekly Memo」記事一覧
- ITは進化し続ける、人間はどう進化できるか――NEC・新野社長
「共創」によって、企業のデジタル変革を進めるNEC。全てのものがつながり、AIの普及によって「進化し続けるIT」が当たり前になりつつある今、「人間が進化できるか」が今後の課題になると新野社長は考える。 - 環境を問わずセキュアな認証印刷を NECとシーイーシーが発表
NECとシーイーシーが、印刷出力環境を問わないセキュアな印基盤を実現するソリューションを発売した。 - 立ち止まらず顔認証できる入退管理ソリューション NECが発売
NECが、顔認証AIエンジンを活用した「入退管理ソリューション」を発売。歩きながら顔認証ができ、スムーズな入退と高いセキュリティーを実現するという。 - 顔認証システムは何に活用できるのか――NECがデモ展示
NECが「最新ICTソリューションフェア」を開催した。ワークスタイル変革や顔認証ソリューション、先進技術、おもてなしといったテーマごとに、同社の製品やサービスを組み込んだデモを展示した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.