日本にCIOという職業を確立させる、それが私のミッション――フジテックCIO友岡賢二氏:長谷川秀樹のIT酒場放浪記(2/4 ページ)
「セカエレ」(世界のエレベータ・エスカレータ)を標榜し、日本から世界にビジネスを展開するフジテック 常務執行役員 情報システム部長 友岡賢二氏が語る、これからの日本企業に求められるCIOの役割や情シスの価値とは?
創業経営者のいる会社の強みとは
長谷川: 今の日本企業の成長スピードについてはどう思ってますか?
友岡: デフレが長く続いたので、成長しなくてもいいという雰囲気になったけれど、それを変えたのがユニクロですよね。成長しなきゃダメだという考えで、実際にものすごく成長している。日本企業の新しいOSというか、日本発のグローバル企業の新しい姿を明確に示していると思います。
長谷川: 友岡さんがユニクロにいらしたのって、いつ頃ですか?
友岡: 2012年から2013年頃です。
長谷川: じゃあ、もうグローバルにもけっこう出ていた時期ですね。僕も、過去にはユニクロに転職しようかと一瞬考えたことがあるくらいで、柳井さんの考え方はすごく勉強させてもらってます。ああいう、挑戦する企業を増やすにはどうしたらいいんですかね?
友岡: 僕が最初に入ったのは松下電器産業なんだけど、その頃ってまだ松下幸之助が生きていたし、大企業というよりメガベンチャーという感じだったんですよ。ソニーや松下は、旧財閥系のトラディショナルな大企業に対抗するようなポジションでね。だけどその後、挑戦する会社が少なくなったというのは、僕らの世代がふがいないからかもしれないよね。
長谷川: 僕は、創業者が社長じゃないといけないんじゃないかと思っているんです。
友岡: 創業経営者が一番強いんですよね。絶対的なカリスマ性があって、朝令暮改が当たり前にできる。「ごめん、間違っていた」と言っても失脚しないのがすごく大きいと思います。創業者じゃなくても、ものすごく若い人を抜てきして全く違う風を入れられるようなシステムがあればいいんですけど、大企業ほど、長い経験をしてそれなりに成功を収めた人しかなれないから、社長になったときにはけっこうな歳になっている。潮目が変わっていても新しいことに挑戦するのは難しいんですよね。そういう意味では、特に若いエンジニアは、創業経営者がいる会社で働くのがおすすめですよ。
日本でCIOという職業を確立したい
長谷川: 今のお話を聞くと、創業者みたいなカリスマ性がないんだったら、経営者はボンクラの方が下は動きやすいかもしれませんね。何か提案したら、「お、おう。じゃあ、それやろうか」みたいな。
友岡: 任せてしまえばうまくいくっていうのは、あるでしょうね。でも、任せるのも経営判断だから、賢くないとできないでしょう。だからトップは、情報システムのことも勉強しないといけないんです。そのためには、社長に直接情報をインプットできるようなITの人がいないとね。つい最近の調査で、日本で専任のCIOがいる会社は1割くらい、兼任を含めても5割くらいらしいです。5割の会社でCIOがいないのは、すごく大きな問題ですよ。兼務のCIOがいても、経営会議の場でITの話には、なかなかならないんじゃないですか。ITについて経営者として知っておかなきゃいけないところがあるのに、それが理解されないまま経営をやっている……、みたいなところがけっこうあるのが、僕はちょっと怖いと思うんです。
長谷川: 友岡さんが考えるCIOの役割というのは?
友岡: 会社の経営課題と、情報システム部門でやろうとしていることのヒモ付けをきちんとできること。それができないと、経営者にとってITは鉛筆とか消しゴムとかの文房具と一緒なんですよ。消耗品だと思われている。投資のしがいがあるものだと思ってもらえる、説得力のある説明ができないといけないんですよね。
長谷川: そういうことができる人って、どれくらいいると思います?
友岡: 情報システム部門って、そもそもいろいろなことをやらないといけないところだから、ポテンシャルのある人は多いと思ってますよ。経営感覚がないとかいうけれど、経営にタッチさせてもらえなかったら、その感覚は身につかないですよね。げた履かせてでも執行役員にすればいいんです。そうすると執行役員会議に出て、経営のあらゆる情報にアクセスできるようになります。そしてもっと重要なのは、他の役員に対して、情報システムに関するインプットができるようになるということです。だから、日本においてCIOという職業を確立させなければならない。僕はそれが自分の一番大きなミッションだと感じていて、そのためにあっちこっちに出ていって話をしているんですよ。
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