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Chapter 1:クライアント/サーバーアプリケーションの仕組み

見出し 1.2.3 Windows DNA対応アプリケーションを構築するには
 このように,Windows DNAの枠内でMTSとCOM+を利用することによって,開発者は容易に3階層アプリケーションやN階層アプリケーションを実装することができる。具体的には,次のような手順を踏めばよい。

  1. データベースを作る
     データベース層に相当するデータベースを作る。一般的には,SQL Serverなどのマルチユーザー対応データベースエンジンに,必要なデータベースおよびデータベーステーブルを作成することになるだろう。本連載では,データベースエンジンにMSDEを使うことにし,その具体的な方法はChapter3で解説する。

  2. ビジネスロジックを作る
     1)で作成したデータベースにアクセスするためのビジネスロジックプログラムを作る。このプログラムは,ADOなどを利用してデータベースにアクセスするように実装することが多い。

     作成したビジネスロジックプログラムは,MTSもしくはCOM+に登録する。そうすることによって,トランザクション機能と通信機能がサポートされる。

     ただし,ビジネスロジックプログラムは,どんな形式で作成してもかまわないというわけではない。なぜならば,MTSおよびCOM+で管理することができるプログラムは,COMの仕様に則ったものでなければならないからである。COMの仕様に則ったプログラムは,Visual BasicやVisual C++などで作成することができる。本連載では,Visual Basicを使ってCOMの仕様に則ったビジネスロジックを開発してゆくことにする。COMについてはChapter 2で,COMの仕様に則ったビジネスロジックの開発についてはChapter 4で,それぞれ説明する。

  3. ユーザーインタフェースを作る
     プレゼンテーション層に相当するユーザーインタフェースを作る。このユーザーインタフェースは,ユーザーにデータベースの情報を表示したり,ユーザーからの入力を受けてデータベースを更新したりする作業を担う。すでに述べたように,3階層アプリケーションモデル(N階層アプリケーションモデル)では,ユーザーインタフェースからデータベースに直接アクセスすることはない。常に2)で実装したビジネスロジックを呼び出して,データベースにアクセスすることになる。

     ユーザーインタフェースは,さまざまなプログラミング言語で実装することができる。本連載では,Visual Basicを使ったものと,Active Server Pagesを用いてWebページとして実装したものの2つを紹介する。これらについては,Chapter 5で説明する。

 Windows DNAに基づく3階層アプリケーションやN階層アプリケーションを構築するためには,コアテクノロジであるCOMについての知識が必要とされる。COMは内部実装こそ複雑であるが,その考え方は必ずしも難しいわけではない。次章では,3階層アプリケーションやN階層アプリケーションを構築するために必要となる必要最小限のCOMの仕組みと,Visual BasicによるCOMの仕様に則ったプログラムの実装方法について説明する。

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