この特集のトップページへ
Chapter 1:オブジェクト指向から見たCOM+

見出し 1.2 COMの進化

 本稿の執筆時点で,COMは,Microsoft社が提供するあらゆる製品の基礎技術となっている。Windows 2000では,COMがその歩みを一歩進め,COM+というテクノロジへと進化する。COM+は,Windows DNAを実現するコンポーネントサービスである。

見出し 1.2.1 OLE2から始まるCOMの潮流
 1993年にWindows 3.1を出荷するとき,Microsoft社はビットマップ画像やExcelのワークシートをWordの文書ファイルにリンクさせたり埋め込んだりする複合ドキュメントを実現するため,「OLE2.0(Object Linking and Embedding 2.0)」というテクノロジを開発した。このテクノロジは,OLEサーバーの機能をOLEクライアントから利用するというものである。先の例であれば,ペイントブラシやExcelがOLEサーバーにあたり,それらを呼び出すWordがOLEクライアントにあたる。OLE2.0の埋め込みでは,OLEクライアントに埋め込んだOLEサーバーをクライアント内部でインプレースアクティベートできることが最大のメリットでもあった。

 このOLEテクノロジの基礎技術として開発されたのが,本連載における話題の中心となるCOM(Component Object Model)である。COMを基盤として,OLE AutomationやOLE Control(のちのActiveX Control)などのテクノロジも開発された。COMの歴史を簡単な年表にまとめると,Table 1-1のようになる。

Table 1-1 COMの歴史(年号は米国での発表を基準とする)

1993年

OLE2/COM

1996年

Windows NT 4.0,DCOM(DCE based Distributed COM)

1996年

MTS(Microsoft Transaction Server)1.0

1997年

Windows DNA(Distributed interNet Application Architecture)

1998年

IIS(Internet Information Server)4.0,MSMQ(Microsoft Message Queue)1.0,MTS(Microsoft Transaction Server)2.0

1999年

Windows 2000,COM+1.0

 1996年には,従来のVisual Basicリモートオートメーションをシステムレベルにまで拡張し,セキュリティも強化したDCOM(Distributed COM)がWindows NT 4.0に搭載された。これにより,COMは分散アプリケーション基盤としての歩みを始める。

 1997年には,Microsoft PDC(Professional Developers Conference)でCOMによる分散アプリケーションアーキテクチャ(Windows DNA)が提示され,その基盤がCOM+というコンポーネントテクノロジとなることも発表された。翌年には,IIS4.0,MSMQ1.0,MTS2.0を収録したWindows NT 4.0 Option Packが提供され,COMで分散システムを実際に構築可能な基盤が整い始めた。そして,1999年末に米国で出荷される予定のWindows 2000では,COM+1.0が搭載されることになっている。

prev Chapter 1 6/8 next