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Directory first step 6... ディレクトリサービス製品
sankaku.gif マルチマスタレプリケーション

 WAN環境のように低速な回線で接続されたネットワークの場合,ディレクトリサーバーへのアクセスをローカルネットワークで完結できるように,低速回線の両側にディレクトリ情報のコピー(レプリカ)を配置することで,検索性能を向上させることができる。また,ディレクトリ情報が複数のディレクトリサーバーに重複して配置されていれば,サーバーの負荷分散や耐障害性の向上に役立つ。しかし,このような運用を実現するためには,分散されたディレクトリ間で情報の一貫性を維持する仕組みが必要となる。

 Active Directoryでは,NTドメインのドメインコントローラとは異なり,プライマリとバックアップの区別はなく,すべて対等のドメインコントローラとなっている。したがって,どのドメインコントローラに対しても情報の更新を指示することができ,その情報はほかのドメインコントローラに反映される。このような複製メカニズムを,「マルチマスタレプリケーション」と呼ぶ。

 これに対してNDSのレプリカには,(1) マスタレプリカ,(2) 読み書き可能レプリカ,(3) 読み込み専用レプリカ,という3種類がある。マスタレプリカでは,ツリーやオブジェクト,オブジェクトの属性を更新することができるが,各パーティションに1つしか配置できない。読み書き可能レプリカは「セカンダリレプリカ」とも呼ばれ,検索性能などを考慮して,各パーティションに複数設置することも可能である。読み書き可能レプリカの場合,ツリーを更新することはできないが,オブジェクトやその属性を更新することはできる。読み込み専用レプリカは参照専用のレプリカであり,情報を更新することはできない。読み込み専用レプリカは,アクセスの負荷分散やWAN環境下での応答速度の向上を目的として設置される。

 なお,Netscape Directory Serverの場合は,マスタ/スレーブ方式でレプリケーションを実現している。マスタ/スレーブ方式とは,マスタ(主)となるディレクトリからスレーブ(従)となるディレクトリに対して,一方的にレプリケーションされる方式である。このため,情報の変更は常にマスタのディレクトリに対して行い,スレーブのディレクトリでは情報を参照することしかできない。Netscape Directory Serverの場合,マスタを格納しているディレクトリサーバーは「supplierサーバー」と呼ばれ,スレーブを格納しているディレクトリサーバーは「consumerサーバー」と呼ばれる。ディレクトリ情報の変更は,常にsupplierサーバーに対して行わなければならない。

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