Directory design 1... ディレクトリ容量の見積もり
ディレクトリ容量の変化
ところで,先述したとおり,Windows 2000環境ではWindows NT環境以上に設計面が重視されるようになる。設計面での大きな検討事項としては,(1) ドメインの境界をどこにするか,(2) サイトの境界をどこにするか,という代表的な2点に加えて,(3) OUをどのように活用するか,という点を忘れるわけにはゆかない。なぜなら,OUをうまく活用することで,Windows NTではマルチドメインを採用せざるを得なかった環境でも,シングルドメインで構成できるようになるからである。どのような構成をとるにせよ,ドメインやOUの設計と,オブジェクトや属性の登録計画が具体的であればあるほど,当然ながらディレクトリサイズの見積もりは正確となる。
しかし,「まだ大まかな計画しかない」ということは十分にあり得るし,今日のビジネス環境を考えれば「組織がどう変化してゆくのか予想できない」ということも考えられる。このような場合の参考としていただくために,次のテスト結果も紹介しておく(Table 4,Table 5)。このテストは,オブジェクトを10回に分けて追加していったときのディレクトリ容量の変化を調べたものである。
Table 4 最終的に登録したオブジェクトの種類と数(この状態を100%と考える)
オブジェクト種別 | 総数 | 1回あたりの増分 |
OU | 100件 | 10件 |
ユーザー(30属性) | 10万件 | 1万件 |
グループ(8属性) | 3万件 | 3000件 |
ワークステーション(6属性) | 9万件 | 9000件 |
ボリューム(3属性) | 2000件 | 200件 |
Table 5 企業の成長に伴うディレクトリサイズの変化
企業規模 | ディレクトリ容量(Kバイト) | 増分(バイト) |
登録なし | 10,256 | − |
10% | 198,672 | 188,416 |
20% | 356,368 | 157,696 |
30% | 512,016 | 155,648 |
40% | 669,712 | 157,696 |
50% | 825,360 | 155,648 |
60% | 981,008 | 155,648 |
70% | 1,140,752 | 159,744 |
80% | 1,296,400 | 155,648 |
90% | 1,452,048 | 155,648 |
100% | 1,609,744 | 157,696 |
ディレクトリサイズを見積もったら,将来の増加分を見越したディスク容量を確保する必要がある。Active Directoryドメインを運用してゆくうえでは,グループポリシーオブジェクトを作成したり,スキーマを拡張したり,証明書を取得したり,新たに属性を設定したりすることもあるだろう。Windows 2000 Serverに添付されているMicrosoft DNSを使用する場合にDNSのゾーンデータをActive Directoryに格納して運用すれば(これをActive DirectoryとDNSの統合モードと呼ぶ),この場合にもディレクトリ容量は増大することになる。
以上のようなさまざまな処理を通じて,ディレクトリの容量は拡大してゆく。このような運用上の不確定要素を計算に入れて,設計を進めてもらいたい。実運用上,ディスク容量が不足するような事態になれば,ディスク交換などの運用負担が生じる。このような負担が発生しないように,十分に注意したい。また,仮にディスク交換などが必要となった場合も,見積もりどおりの増分であったか,予測された期間と一致していたかなども評価する必要がある。このあたりは,通常のデータベースシステムの構築管理とまったく同じなので,そちらのノウハウに照らしてみるとよいだろう。
なお,Active Directoryでは,オブジェクトを削除してもディレクトリの容量は縮小されない。その理由については次項で述べるが,この点からもディスク領域は余裕をもって用意するようにしてほしい(予測値の2倍程度は確保しておきたい)。
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