コンテンツプロバイダの“lose”

 そのような中,厳しい戦いを強いられているのがコンテンツプロバイダである。NTTドコモだけでも2001年6月時点で公式サイトがおよそ1800サイト,一般サイトに到ってはおよそ4万5000サイトがひしめく中で,ユーザー獲得競争を演じている。

 しかしその厳しさとは裏腹にユーザーのコミット度は前述のようにあまり高くなく,NTTドコモの公式サイトに加入する有料サイトのうちの約半数は,会員が1万人にも満たないサイトであるとの同社からのコメントもある。

 コンテンツプロバイダの構造的な問題としては,

  • ユーザー単価の安さ(300円程度)
  • 1ユーザー平均で1有料コンテンツのみの加入状況
  • 高いコンテンツの権利料
  • アクセス集中に耐え得る膨大なシステム運用コスト

などが指摘されており,そのような現実が各々悪循環として作用し,“lose”スパイラルの構造を生み出している。

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 ただしJava搭載の携帯電話などの登場で,今後のモバイルサービス・コンテンツビジネスの展開には明るい兆しが見え始めている。ゲームを中心としたコンテンツのダウンロードや,メールを運ぶキャラクターの登場などがその代表的な動向だ。しかし,それらも今のところはあくまで,暇つぶし的コンテンツの領域から出ることができず,あくまでコミュニケーションというキラーコンテンツの隙間を埋めるものという位置付けである。

 もちろん実際に利用している時間よりも,利用せずに持ち歩いているだけの時間の方が長いモバイルデバイスの特性上,ユーザーの“ニッチタイム”をユーザーニーズに沿った形で埋めてあげることは,ユーザーのコミット度の向上に寄与することになる。そこからビッグビジネスへとつなげていくチャンスが出てくるのである。

 また,キャリアによってその管理運営が行われてきたコンテンツビジネスのオープン化の動きも,総務省が音頭を取ることで進められつつある(7月18日)。ISPに対するネットワークの開放,ポータルサイトの開放,料金回収代行サービスの開放などがそのオープン化の具体的な内容だが,それらによりコンテンツプロバイダのチャンスは拡大してくると思われる。

 ただしこれらの好条件は,逆に数多くの競合がひしめくコンテンツプロバイダ同士の競争をさらに激化させる危険性もあり,コンテンツプロバイダにとって予断を許さない状況が続いていくだろう。

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モバイルブロードバンドの波

 このようなビジネス環境の中,モバイルインターネットビジネスにもIT業界のご多分にもれず,ブロードバンドの波が押し寄せている。モバイルブロードバンドの今後の進展は,下図のような経過をたどっていくものと予測されているが,その牽引役はあくまでモバイル通信における技術革新と,各国キャリアの世界戦略が担っているといえよう。

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「モバイルブロードバンドの死角」

連載バックナンバー
▼ 第1回「到来する? モバイルバブルの崩壊」
▼ 第2回「見誤るな! モバイル時代のユーザーの捉え方」
▼ 第3回「どこへ行く? モバイルコンテンツビジネス」
▼ 第4回「成功の鍵は? モバイルマーケティングのキモ」
▼ 第5回「見極めよ! モバイルとマスの効果的マーケティング連動」
▼ 第6回「捉えよ!モバイルマーケティングの全体像と今後の方向性」



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