第2回「見誤るな! モバイル時代のユーザーの捉え方」モバイル時代のユーザーの価値観は大きく変化しつつある。この新しいパラダイムを読み解いていかなければ,モバイル時代のユーザー,もしくはその根底に流れる価値観の変化を見誤ってしまうことにもなりかねない。
これまでは人々は「集団」共通の価値観を抱えていたが,「個」がおのおのの価値観を有するようになり,さらにはおのおのの価値そのものが「個」までも動かす新しいパラダイムへと進化してきている。 ユーザーの価値観変化
モバイル時代のユーザーを読み解くためには,まずユーザーの中に根差す価値観の変化を捉えることが必要だ。 まず大衆の時代。ユーザーが完全に“マス”だと捉えられてきた時代には,巨大なマスメディアシステムのみに頼り切るマーケティングがその中心点にあり,ユーザーの価値観は一億総均質なものとして捉えられてきた。 その後,メディアの多様化が進展。それに伴いユーザーのセグメント化が始まり,均質だった価値観は分化した。ユーザーたちは自分らしさを求めて多様化を始めていった。分衆の時代である。その分衆化に拍車をかけたのが,セグメントターゲット向けの雑誌媒体や,インターネットやモバイル機器などのデジタルメディアの急速な普及拡大である。 ユーザーはこれまでの均質な価値観やそのお仕着せの価値集団を捨て,自らの価値観に合ったトレンドリーダーやカリスマを選択していった。そしてカリスマの価値に自分の価値を投影することにより,それを自らの価値観として成立させ,できあがった“自分らしさ”を追及するという個の時代へと移り変わってきているのである。 そして現在。その個の時代はさらに進展した。個人の中に固定した価値観が存在するという構図ではなく,価値観そのものが人を動かす時代になりつつある。一人の人間が各々のシチュエーションごとにいくつもの価値観にコミットし,その価値観に共感する人々とだけその場限りの関係性を持ち,その時々で生活を楽しんでいくライフスタイルをユーザーは模索し始めているのである。 人間関係の変化
このような価値主導のユーザー像が浮かび上がってきたのはなぜか。おそらくインターネットやモバイルの普及が強く影響する形で,人間関係そのものが変化してきているのだろう。 これまでの人間関係は,学校や職場などの制度上の集団,もしくは地元や家族など地縁・血縁的な集団をベースに成り立ってきた。必然的に,そのおのおのの集団の持つ価値観や総意が,そこに属する個々人の価値観をも規定してきた。「個」としての価値観が合う,合わないは無関係に,物理的制約の中で集団生活を営むことを強いられてきたともいえよう。 そこに現れたのがデジタルメディアである。デジタルメディアでは,自らの価値観により,自分の属する集団をバーチャルの中で選択できるようになった。価値観の合わない人間やその関係を,自らの選択により排除できるようになったのである。つまり,「個」の価値観に沿った形で人間関係を再編集できるようになったのだ。 そして彼らは,その再編集された人間関係をリアルの世界にも持ち込む。彼らの関係性は,地縁・血縁などに依存しないため,互いのコミットを常に求めるというわけではなく,会いたい時,もしくは会うべき時に関係性を持つ,いわば関係性のオン/オフを使い分けるような形態を取り始めた。 ここで注目すべきなのは,この再編集型人間関係の出現ということだけではない。その出現により,既存の集団へのコミット度が急速に薄まってきているということである。 これまで信じて疑いようのなかった,家族や学校,職場といった既存の人間関係が,自分の価値観にとって本当に必要なのか否かが問い直され始めた。これこそが近年,大きく変化しつつあるといわれる人間の関係性における最大のインパクトである。 連載バックナンバー モバイルショップ
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