分解して理解する、iPhone 8/8 Plusとは違う「iPhone X」の中身:バラして見ずにはいられない(1/2 ページ)
「iPhone X」は有機ELや顔認証を採用するなど、新たな要素が満載だ。それだけにiPhone 8/8 Plusとの違いも多い。分解して分かった、iPhone Xならではの特徴とは?
iPhone 10周年記念機として発売された「iPhone X」。形状加工された有機ELが使用され、指紋センサーに代わり顔認証(Face ID)を搭載するなど、ユーザーに影響する大きな変化が起きた。生産現場から聞こえてくる生の声と共に、アニバーサリーモデルのハイライトをご紹介する。
Face IDに使う部品のほとんどが日本製
iPhone Xで初めて搭載された顔認証機能「Face ID」は、4つの部品で構成される。最初に顔を登録する時に使う自撮用7MPインカメラ。これはCMOSイメージセンサーやカメラモジュールを含め、ほとんどが日本製だ。
登録時に平面の顔写真に加え、顔に3万点程の光点を投射して立体的な認識を助けているのがLG Innotekやシャープが組立を担当したドットプロジェクターである。ドットプロジェクターは赤外線のため、顔情報を認識するのは伊仏合弁STMicroelectronicsが担当した赤外線カメラである。
Face IDを構成するこれらの部品は、ディスプレイ端まで敷き詰められた有機ELパネルの上部を少し切り取りって形成された切り欠けの中に置かれている。
超難産だった有機ELパネルの形状加工
有機ELを採用したのもiPhone Xの大きなトピックだ。手でクシャっとできるフィルムタイプの有機ELは、驚異の塊だ。それ自体が発光する上、折り曲げ可能で、しかも液晶パネルより発色が鮮やかといわれる。この種のモバイル用有機ELパネルを量産できるのは韓国のSamsungだけだ。同社の工場は日産7万枚パネル(モバイルサイズ換算)の製造ラインを複数保有しており、供給は問題ないといわれてきた。
しかしiPhone Xで使用される有機ELパネルは上部に5mm程度の切り欠けを入れる必要がある。レーザーで加工しているようだが、加工の過程で封止がうまくいかず、湿気に弱い有機ELパネルが大量に不良を起こしたようだ。筆者が入手した情報によると、現在のiPhone X向けパネルの歩留りは50%程度(Galaxy S8+は80%)と苦戦中だ。
2階建て構造の基板を採用した理由
iPhone Xをディスプレイ側から見た場合、PCB(プリント基板)#2が1階(底面)を構成し、PCB#1が2階として上に乗るような形になる。これはiPhone 8/8 Plusとは異なる構造だ。
このような“2階建て構造”になった理由は、限られた本体内に大容量のバッテリーを配置できるよう、基板面積を抑制する必要があったためだと思われる。従来の基板を半分に折って2段重ねにすれば、余ったスペースをバッテリーで埋められる。
2階建て構造の基板は昔からある技術で、日本のフィーチャーフォン(ガラケー)の時代から存在してきた。メイン基板上に島のように小型基板が置かれており、複数の電子部品もある。この島基板を取り外して裏側を見ると、ここにも電子部品が置かれていた。この場合、島型基板の4辺は電気接続を有していることになる。
3箇所に「メトロサーク」を搭載
iPhone 7から採用している「メトロサーク」は、村田製作所の多層樹脂基板の商標である。従来のリジッド基板と比較すると接着剤が不要で、1回の熱圧着で完成するなどの特徴がある。12層の多層構造を持ちながら、フレキシブルプリント基板のように屈曲性がある。
製法や材料は種々あり、村田製作所の製品は、液晶ポリマー(恐らくクラレ製)と銅箔(どうはく)(三井金属の商品名「Micro Thin」)を使用している。台湾のCareer Techはポリイミドと銅箔を使用して同じ製品の量産を目指したが、順調ではなく、多層樹脂基板の供給源はほぼ村田製作所だけの状態である。
iPhone Xでの搭載位置は3か所。いずれも電話回線信号の中継に使用されている。1個はメインボードにひものように貼りついて基板の両側にある電話ブロックの信号を中継している。2本目と3本目はメインボード外の上部と下部にあり、基板の端から端末上下のアンテナへ信号を中継する。
従来は同軸ケーブルでこの役割を果たしていたが「メトロサーク」は1本の構造物の中に3本の同軸ケーブルに相当する機能を収納可能で、本体内のスペースが限られているiPhoneならではの採用となったのだろう。
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