News | 2000年8月11日 07:00 PM 更新 |
米国内3州,および世界の3つの国に拠点をかまえるIntelの研究施設の奥の奥。研究員たちが同社の「次の大きな動き」を支える技術の数々に取り組んでいる。それら技術の中には,世界最大のチップメーカーという同社の姿からは想像もつかないものもある。
In this package: |
|
「5年後のIntel」を探して | |
次のフロンティアは一般家庭――Intelアーキテクチャ研究所 | |
IntelのR&D:顧客こそ最良のリサーチャー? | |
チップの未来,Intelスタイル | |
製品直結型のIntel,巨視的戦術のIBM | |
“新しいIntel”から何が生まれるか |
今回紹介するようなIntelの姿を知る人はそう多くない。例えば,オレゴン州ヒルスボロにある同社研究施設内の暗い一室では,Mark Holler研究員がビジュアルユーザーインタフェースのテストにあたっている。これは指で合図を送るだけで,あるいは頭をちょっと振るだけで,コンピュータを操作できるようにするという未来のユーザーインタフェース。またここから800マイル以上離れたカリフォルニア州サンタクララのIntel本社内では,研究者の一団が広帯域接続を見据えた双方向仮想チャットルームのデバッグにあたっている。
6000人近くのスタッフと40億ドルという年間予算(この額はライバルのAMDの昨年の研究開発費のおよそ6倍にあたる)のもと,Intelの研究開発部隊は新たな未来を作り出そうとしている。
Intelの研究施設で進められているプロジェクトはさまざまだ。一例を挙げよう。
コンピュータが手書き文字を自動認識してワープロに持ち込めるようなペン入力技術
友人同士でゲーム対戦したり,企業の重役同士がビジネスの話を進められるような仮想チャットルーム
スポーツファンがボールの視点でサッカーのワールドカップ試合に参加できる「没入型」のゲーム
DVDプレーヤーと強化型TV機能を搭載,CATVとインターネット接続を合体させた,カウチポテト族待望のオールインワンセットトップボックス
好きなバンド(例えばBack Street Boys)の最新情報を送ってくれるティーンエイジャー向けのポケベル
Intelが主力のPC事業から撤退しようとしているわけではない(同社はPC用チップ市場で70%以上のシェアを誇っている)。同社は自分たちが,あるいは業界内のパートナーが売り込みにあたれるような,高性能プロセッサを必要とする製品/技術を作り出そうとしているのだ。
その目的は至ってシンプル。「次世代チップのための市場の種まき」である。例えば先日も,IntelはMacromediaのShockwave PlayerにIntelアーキテクチャ研究所開発の3Dグラフィックス技術を組み込むことで合意に至っている。
IntelのCEO(最高経営責任者)Craig Barrett氏によれば,Intel方式のR&Dは基本的に,「全く新しいエキサイティングなものを提示して,コンシューマーに新技術の利用への関心を抱かせる」ためにある。「テクノロジーが前進しさえすればIntelは安泰」だからだ。
しかし,問題もある。Intelが無線通信やインターネット,その他の一連の分野で市場の創造あるいは拡大にあたろうとすれば,PC市場という同社にとって最も重要な事業へのフォーカスが失われてしまうからだ。
この移行を「どうやってうまくやり遂げるかが鍵だ」とMercury Researchの主任アナリストMike Feibus氏は指摘する。「これはIntel経営陣にとっての課題だ。そのことに疑問の余地はない」