News:レポート 2000年8月22日 08:13 PM 更新

レポート:普及への環境が整ったxDSL(1)

昨年12月に「試験サービス」として始まったxDSLは,6月末に1つの転機を迎えた。「高速デジタルアクセス技術に関する研究会」の最終答申だ。その影響と現状をレポートする。

 電話用のメタリック心線を利用するxDSL技術は,CATVや専用線のように新たな回線を敷設する必要がなく,またISDNの10倍近いスピードを実現する,コストパフォーマンスに優れたインターネットアクセス手段だ。この技術を事業化しようと,昨年以来,東京めたりっく通信,イー・アクセス,NTT-ME,日本テレコム,アッカ・ネットワークスなど,多くの企業が続々と参入している。しかしながら,昨年12月に始まった試験サービスのユーザー数は,4月末時点でわずか211,7月末で1400。3カ月で約7倍に増えたとはいえ,開始から半年以上が経過していることを考えると,少ないと言わざるを得ない。今回のレポートでは,DSLサービスの現状と,今後の見通しを報告する。

xDSLの普及を妨げていたもの

 NTT東日本IPネットワーク推進室の田中孝史課長は,xDSLサービスの開始当初を振り返って「全く新しいサービスを提供する以上,慎重を期するのは当然だった」と話す。「ISDNとの干渉といった技術的な問題をはじめ,コストの算出,サービスメニューの決定といったすべてが暗中模索の状態だった」(田中氏)。しかし,それだけでは説明できない事情もあったようだ。

 例えば,xDSL事業者が新しい地域でサービスを開始しようとした場合,まずNTT東西地域会社に対し,当該電話局でMDF接続が可能かどうかを調べる「Point of Interface 調査」を依頼する。90日後に,接続可能な回線数などを含む回答が示され,事業者はそれに基づいて工事を申請。実際の工事となるのだが,今までは,この過程に約4カ月半かかっていた。

 また,これまでにMDF接続が可能になった6局の場合,事業者が接続工事をNTTに発注した後,NTTが主体になって入札を行う手順があったという。しかし,入札にかかる時間はもとより,各工事を違う業者が担当することで,それまでのノウハウを生かせず,設計や打ち合わせに余分な手間と時間がかかってしまうことになった。また,工事の依頼主であるはずの事業者が入札の主体にならないため,費用の内訳が不透明になりやすい。

 さらに,「われわれと関わりのない業者にたのむということは,工事イコール技術情報の漏洩ということだ。NTTが主体で入札を行う場合,われわれと業者との間でNDA(守秘義務契約)を結ぶことができない」(東京めたりっく通信の副社長兼CEO,平野剛氏)という機密上の問題も指摘されていた。技術情報は,企業の経営そのものに関わること。こうした指摘からは,単に「初めてのサービスだから」という言葉では収まらない,施策上の問題点が見て取れる。

NTTの対応が変わった?

 ところが,6月末に出された「高速デジタルアクセス技術に関する研究会」の答申によって,状況は一変した。政府の諮問機関が出した答申は,そのまま監督官庁(この場合は郵政省)の許認可に影響するため,NTTに対して強制力がある。答申では,NTT全電話局におけるDSL商用試験サービスを許容する内容のほか,事業者側にメリットをもたらす,いくつかの提案が盛り込まれた。

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