News:レポート 2000年8月22日 08:13 PM 更新

レポート:普及への環境が整ったxDSL(2)

 まず,NTT局舎内の工事について,DSL事業者による自前の工事が認められた。もちろん,実際に動き出すためには「セキュリティや(工事の際の)立ち会いなど,手順を決める必要がある」(平野氏)というが,NTT東日本では,既に東京めたりっく通信を含む2社に対して自前工事を認めている。これにより,「工事に必要な期間が,これまでの数カ月という単位から,2週間程度にまで短くなった」(平野氏)。

 また答申では,ユーザーがサービスを申し込んでから回線が開通するまでの期間も大幅に短縮するように提言されている。これを受けて,以前は申し込みからNTT内の机上調査(5月30日の記事を参照)を経て局内工事に至るまで約3週間かかっていたのだが,現在ではNTT東日本で12営業日,NTT西日本でも14営業日にまで短縮されている。さらに,「これを5営業日にまで短縮すべく,(NTT東日本が)8月7日から青山局で試験を始めた」(東京めたりっく通信)という。

 一方の事業者側にも「Web上から申し込みを頂いた翌日にNTTに調査を依頼すること,そして局内工事の翌日に宅内工事を実施することが可能になった」(イー・アクセス)といった動きがある。青山局の試みが実現すれば,例えば月曜日に申し込みをして,翌週火曜日にはADSL回線が開通する,ということが可能になるわけだ。

 DSL事業者による,料金の一括徴収も認められた。現在,DSLサービスに掛かる料金は,事業者がNTTに支払う接続料と,直接NTTからエンドユーザーに請求される回線使用料の2種類だが,特に後者に関しては「電話の基本料金を支払っている以上,回線の利用料金を別途請求されるのはおかしい」という声もある。もっとも,「電話とDSLの回線を使っている以上,その両方を管理するためのコストが発生する。それを電話だけのユーザーにも一律に請求することはできない」(田中氏)のも確かだ。このため,ユーザーの不満を軽減する意味でも,DSL事業者側は一括徴収を求めていた。NTT側に支払う金額こそ変わらないが,事業者のサービス料金と合わせ,割引を含めた柔軟な料金体系を作ることができる。

机上調査の基準は大幅に緩和

 答申と前後して,机上調査の基準も大幅に緩和された。当初はNTT内で電話局からの距離や分岐を計算し,ADSLに使用する特定周波数帯(160Hz帯)で40db以上の回線損失があるとサービスの提供を断っていたが,現在は「光ケーブル以外ならほぼ大丈夫だ」(東京めたりっく通信)という。NTT東日本の田中氏は,この点について,「当初は品質を重視し,慎重を期した。ただ,損失計算については開始当初から不要論もあり,今年6月になって止めた。今のところは問題は起きていない」と説明している。その間にDSLを諦めて別のインフラに投資してしまったユーザーはうかばれないが,これにより,首都圏なら90%以上の世帯にxDSLを適用できることになった。

 答申後,もっとも大きな変化は,MDF接続が可能な電話局が増える見通しがたったことだ。田中氏は,「これまで,6局に(DSLを)抑えていたのは,その影響が分からなかったため。技術的に閉じこめた形で検証したかった」と話す。約9カ月間の実験サービスを通じて,予想されていたよりもISDNに対する影響が少ないことが分かってきたうえ,郵政省もDSL積極推進に傾いた。このため,NTTでは「(NTTのDSLサービスの)2種は,試験期間といえども対象を広げていく。NTTとしては,装置を置きたいと言われたビル(局舎)にMDFのスペースさえあれば,置けるようにする」と方針を転換。スペースの都合や局舎の改装工事といったケースをのぞき,NTTは基本的にDSL事業者側の要望を受け入れるとしている。年度内に東京めたりっく通信が「106局に展開」,イー・アクセスが「151局でサービス提供」と発表したのには,こうした背景がある。

 しかし,NTT側はまだ慎重さも忘れない。「12月までにも,既存の6局以外でサービスが始まる電話局は出てくるだろう。しかし,それはあくまでも試験サービスという枠組みの中でやること。本格サービスは来年以降だ」(田中氏)。DSL事業者側は,9月以降に新規の申し込み受付を順次始める予定だが,一気に対応電話局が増えるという訳ではなさそうだ。

“本格サービス”開始後はどうなる?

 では,その本格サービスが開始された後は,どのように変化するのだろうか。注目は,サービスエリア,料金,高速化といった点だが,実際のところ,NTT側もまだ明確なビジョンを示せないでいる。

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