News 2000年8月23日 01:29 PM 更新

何千ものプロセッサのP2Pを実現する――Intel社長,IDFで基調講演

 「何千ものプロセッサを,セキュアかつトランスペアレントに接続させるP2Pを実現させる」

 米カリフォルニア州サンノゼで開催されているIntel Developer Forum(IDF)の初日,Intel社長兼CEO(最高経営責任者)のCraig Barrett氏は,同社が取り組んでいるインターネットインフラの構成要素を支える企業への転換という目標に沿って,ピア・ツー・ピア(P2P)コミュニケーションモデルの可能性,ならびに水平分業によるサーバプラットフォーム構築の素早さと可用性について話をした。

 P2P技術では,世界中でさまざまな話題を振りまくNapsterが広く知られている。Barrett氏はNapsterの例を引き「Napsterは1日に210万のユーザーが接続し,23テラバイトの巨大なデータを持つ。これに対してわずか122のサーバで対応。一方,科学技術演算をP2Pで結ぶNPACIというコミュニティは,3000ものプロセッサを結び,巨大なパワーを発揮している」と,P2Pがもたらす大きな可能性について言及した。

 「例えばIntelには1万〜1万5000人の半導体設計者がいるが,彼ら個人個人がそれぞれに持っているノウハウを上手に活用できなければ,生産性の大幅な向上は望めない」として,その解決策としてP2Pコミュニケーションモデルが有効だろうとの見解を示す。

 一方,計算能力をP2Pで解決可能な例として,ボーイングが自社のコンピュータでは解析できない大規模なシミュレーションを,自社と国防省など3カ所を結ぶP2Pのネットワークで解決した事例を紹介した。

 Barrett氏はP2Pを成功させるための要素として,共通プロトコルの確立,使いやすさ,セキュリティ機能,スケーラビリティの高さ,標準化の推進の5点を挙げ,これらを解決するためのソリューションをIntelが提案するとしている。「何千ものプロセッサを,セキュアかつトランスペアレントに接続し,リソースを共有するという難しい管理を実現する」(Barrett氏)という。なおIntelが提案するP2Pモデルの詳細については,3日目の基調講演でIntel副社長兼最後技術責任者のPat Gelsinger氏が話すことになっている。

 Intelは昨年来,インターネットインフラを構成するシステムに,PCと同じようなマルチベンダーの水平分業を取り入れることを提案している。ライバル関係を越えて標準化などの協力を進め,モジュラー形式のブロックを組み合わせることで,素早く最適なシステムを構成できるようにするのが目的だ。

 Barrett氏は「水平分業が進められたIntelベースのプラットフォームなら,信頼性の高いECサイトを48時間で構築できる」とした。IXAベースのCisco製ネットワーク機器やDellのサーバを並べたシステムを見せ,単に手軽に構成したシステムではなく,急激なインターネットトラフィックに対して対応できるものであることを証明してみせた。


「48時間システム」のデモ

 5000ユーザーからの同時アクセスをシミュレートした環境から,一気に1万5000ユーザーまで負荷を増加。Barrett氏は「私に対応できれば,どのドットコムでも対応できるはず」と言い,スタンバイ状態のサーバを接続し,スケーラブルかつ容易にバーストトラフィックへ対応できることをアピールした。

 ソフトウェア環境などの詳細が不明なため,直接比較することはできないものの,Sun Microsystemsの独壇場とも言えるインターネットサーバの市場に対して,Intelが水平分業により戦いの駒を用意している,その意気込みは伝わってきた。

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[本田雅一, ITmedia]

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