News 2000年11月24日 10:45 PM 更新

個々を大切にするユーザーインタフェース

 たとえば,宅配弁当屋が,このカードを作って配布しておくと,顧客は夕食時にこのカードをUIカードリーダーに挿入し,カードに印刷されたカラフルなアイコンを使って注文の操作ができるわけだ。キヤノンでは,テレビに接続されたセットトップボックス経由でインターネットに接続されていることを前提にしているが,これで顧客番号などを登録しておくと,住所などは自動的に相手に伝わるようなシカケを持たせることもできるはずだ。

 こうしたテクノロジーが,ホームバンキングや,オンラインショッピングなどに使われるようになると,ちょっと世界が変わるに違いない。というのも,いわゆるポインティングデバイスを使ったGUI操作に抵抗を感じる層はたくさんいるからだ。

 特に,テレビのブラウン管に映し出されたWeb画面に対して,リモコンを使ってポイントしたり,クリックしたりといった操作は,パソコンに慣れていてもやっかいだ。やはり,直感的なのはタッチパネルなのだが,テレビは比較的距離を置いて見るデバイスなので,タッチパネルのユーザーインタフェースを使うのは難しい。ブラウン管の表面に指のあとがついてしまうのも気になる。

 でも,UIカードリーダーを使えば,GUIをリモコン側に持たせることができるので,いろいろな問題が解決する。

 現時点でも,テレビやエアコンなどのリモコンに似たような工夫を見かけることはできる。リモコンに配置できるボタンの数には制限があるので,蓋状のカバーをつけ,カバーが閉じているか,開いているかを検出し,開いているときと閉じているときでは各ボタンに別の機能を割り当てているのが,各機器のリモコンを観察するとよく分かる。

 これは,Ctrlキーを押しながらとか,Altキーを押しながらといったことで,キーボード上のひとつのキーに複数の異なる役割を割り当てるのにも似ている。UIカードは,これらの工夫をグッと拡張したものだといえるだろう。それでも,環境さえ整えば,すぐでも商品化できそうな点で,現実的な製品だ。

“分かりやすい”ということ

 外国でレストランに入ると,たとえそこが街角のハンバーガーショップだったとしても,あまりにも,細かく注文を聞いてくるのに驚く。タマネギは入れていいのかどうか,トマトはどうするのか,焼き具合はどうかなどなど,「適当に」という融通が利かないことに,ちょっとしたイライラを感じることもなくはない。そんな感じを受けるのは,ぼくが外国語に堪能ではないからこそである。UI,すなわちコンピュータ語だって同じだ。得意な人もいれば,不得意な人もいる。

 UIカードのようなユーザーインタフェースは,同じピザ屋さんが,同じメニューでありながらも,お年寄り用,子ども用などと,いろんなUIを作って配布できる点がいい。細かく仕上がりを指定するユーザー用には,専用のUIカードを用意すれば,それでよく,気にしない人は,そのカードを使わなければよいだけだ。トランプみたいに,セットでUIカードを配布するってのもアリかもしれない。そうすれば,GUIは飛躍的に分かりやすいものになるだろう。誰にでも分かりやすいものを作るのが難しいのなら,特定の人に分かりやすいものをいくつか作ればいいというソリューションだ。それもありだと思う。

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関連リンク
▼ CANON EXPO 2000@TOKYO公式サイト
▼ UIカードの説明

[山田祥平, ITmedia]

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