News 2000年12月7日 11:02 PM 更新

Transmeta副社長が話す“Crusoeトラブル”の真相

「LaVie MX」のリコール発表からちょうど一週間。米TransmetaのJim Chapman副社長は「今回の障害はハードウェア上のもので,純粋にTransmeta側の問題」と話した。

 先週の水曜日,NHKで朝5時から放送されたニュース番組で,その話題は全国に伝えられた。NECが販売するCrusoe搭載ノートPC「LaVie MX」が,プロセッサのロット不良により回収されるというのだ。その内容は,リカバリCDでハードディスクを初期状態に戻す際,エラーが発生して処理を継続できなくなる場合があるというもの。

 Crusoeのことを知る人は「ソフトウェアによるエミュレーションだから,そうした非互換が起こるのでは?」と考えたとしてもおかしくはない。しかし,今回のトラブルに関しては,純粋にハードウェア上の問題だったようだ。

「この1週間,多くの支持者がいる日本で,Crusoeに関する混乱を与えたことをお詫びしたい。今回の障害はハードウェア上のもので,ごく一部の製造ロットのみで発生したものだ。サンプルの段階では発生していなかった」と,Transmeta副社長のJim Chapman氏は話す。

 今回のトラブルは,ごく一部のロットにおいて,特定条件下で2次キャッシュが正常に動作しなくなるというものだった。現在,最高クロック周波数の600MHz版でのみ問題が出ていることから考えて,2次キャッシュメモリのアクセスタイミングが間に合わない場合が出たのではないかと推測される。

 なお,Chapman氏は製造上の問題であることを否定し「これは製造を担当しているIBMエレクトロニクスの問題ではない。純粋にTransmeta側の問題」と,自らのミスであることを認めている。

 Chapman氏は細かな技術的背景に関しては発言を控えたが,関係者の話によると,こうした不良は,実のところほとんど出荷されていない。最初に発見されたLaVie MXの場合も,300台近いリコールが行われたものの,本当にトラブルが起こるプロセッサはごくわずか。もしかすると,すべての個体が正常に動作するかもしれない。それほどの低率だ。

 ソニーのVAIOノートに関しては,台数を特定できずにシリアル番号の範囲を指定することになったが,交換が必要になる個体は「ほとんどない。該当ロットだったとしても,ちゃんと動作するチップも存在するため,不良の数はほとんどないはず」(ソニー関係者)。

 これだけ低確率の不良であれば,不良が発生した際の個別修理でも対応できるレベルだったはずだ。しかし「リコールを行うかどうかの判断基準は,顧客(PCベンダー)ごとに異なる。NECと協議し,NECの判断基準でリコールが決定した。われわれは顧客の決定を支持する立場だ。日本はTransmetaにとって,もっとも大切なパートナーとユーザーのいる国」と,顧客の意見を尊重した結果のリコール騒ぎであることを明かした。

 今回のことを申し訳なさそうに話すChapman氏だが,めげてはいない。「モバイルノートPC市場は,今後縮小するだろうと考えている。その代わりに,電子ブックビューアやWebパッドなどが新しい分野を切り拓く。2001年1月開催のCESでは,Transmetaブースに多くのアプライアンス端末が並ぶ予定だ」と,元気なところをアピールした。

 さらに,新チップの「TM5800」や256ビット次世代Crusoeコアに関しても話を聞くことができたが,そちらはまた別の記事としてまとめたい。

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[本田雅一, ITmedia]

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