News 2001年6月6日 11:42 PM 更新

AMD次期CEO来日――バーチャルゴリラ戦略でインテルに対抗

AMD次期リーダーが,ビジネス市場本格進出のキーデバイスとなる新プロセッサを手土産に来日した。

 日本AMDは6月6日,1wayおよび2wayのサーバ/ワークステーション向けマルチプロセッシング対応「Athlon MP」と対応チップセット「AMD-760 MP」,Athlonの1.4GHz版,Duronの950MHz版を発表した。新プロセッサは,6月5日から開催されているCOMPUTEX TAIPEI 2001の会場で発表されたもの。

 Athlon MPは,動作クロック1.2GHz版と1GHz版がまずラインアップされる。1000個ロット時の単価は,1.2GHz版が3万4450円,1GHz版が2万7950円。0.18μメートルプロセスの銅配線技術を採用。Socket Aパッケージで提供される。FSB 266MHz,DDR SDRAMをサポートし,52の拡張命令が追加された「3DNow!プロフェッショナル」テクノロジを搭載する。同時発表の新チップセットAMD-760MPと組み合わせることで2wayの動作が可能。

 Athlonの1.4GHz版は266MHzと200MHzの2つのFSBに対応するバージョンを用意。2バージョンともに1000個ロット時の単価は3万2890円。950MHz版Duronは1万5860円。

 新プロセッサ発表にあたり,AMD社長兼COO(最高業務執行責任者)のHector Ruiz氏が来日し,都内ホテルで会見を行った。


AMD次期CEOのHector Ruiz社長兼COO

 Ruiz氏は,2000年1月にAMD社長兼COOに就任。それまではMotorolaに22年間勤務し,同社半導体製品部門の社長を務めた経歴を持つ。2002年4月には,設立以来30年以上に渡ってAMDを支えてきたJerry Sanders氏がCEOを退き,代わってRuiz氏が同社CEOに就任する予定となっている。Sanders氏はCEOの肩書きは手放すものの,会長職には2003年まで留まる。

 日本AMDの堺和夫社長は,冒頭の挨拶で「Ruizは非常にリーダーシップが強い。半導体業界の経験は30年と私より長く,ドクター(博士)の称号もあり技術的にも申し分ない」と,次期リーダーを紹介した。


「Ruizはリーダーシップが強く,経験や技術も豊富」と堺社長

 続いて壇上に立ったRuiz氏は「日本は米国に次いで重要な市場。厳しい日本市場で成功すれば,世界のどこへ行っても通用する競争力が身につく。また,省スペースPCやモバイルの分野では,日本は世界をリードしている」と,日本市場の重要性を指摘した。

 新プロセッサのAthlon MPは,0.18μメートルプロセスの銅配線技術を採用し,ドイツ・ドレスデン工場で製造されている。Ruiz氏は,新プロセッサの製造テクノロジーの中でも重要な,この銅配線技術に大きく関わっている。

 Ruiz氏は,MotorolaとAMDとの技術交換のアライアンスを通じて,社長就任前からAMDと交流があった。会見の中でRuiz氏は当時を振り返り「Motorola時代に,AMDがMotorolaの銅配線技術を売ってくれないかという話があった。結局,AMDが持つフラッシュメモリのテクノロジーと技術交換をはかるということで技術協力が行われた。最先端の技術を投入していくために,今後もこのような互助的関係は,他の企業間とも必要となっていくだろう」と語る。この企業間の互助的関係が,インテルとのプロセッサ競争におけるAMDの戦略につながっていく。

「バーチャルゴリラ戦略」

 Ruiz氏は昨年の就任当初より,インテルとの競争を「巨大なゴリラと戦う」と表現していたが,会見でも「400キロのゴリラと戦うには,バーチャルゴリラにならなければいけない」と訴えた。


バーチャルゴリラ

 昨年のAMDの収益増には,フラッシュメモリが大きく貢献している。フラッシュメモリ成功の要因として「高い生産力を高度な技術力でサポートしていくことが必要だが,富士通との合弁会社でこれを実現した。AMDの持つ優れたフラッシュメモリ技術と設計能力,そして富士通の持つ製造ノウハウと生産設備を活かしてフラッシュメモリのリーディングサプライヤーになった」と訴える。つまり,インフラパートナーを作り,業界のリーディング企業と提携し,技術協力によって相乗効果を高めていくというビジネススタイルが,バーチャルゴリラ戦略であるという。

 Ruiz氏は,このバーチャルゴリラ戦略がプロセッサの分野でも有効だとし「チップセットメーカーやマザーボードメーカー,ソフトウェアメーカーなど,さまざまな情報テクノロジー業界のパートナーと提携していくというAthlonチップ戦略も,バーチャルゴリラ戦略の一つ」と訴えた。また「どんなに巨大であろうと,どんなにお金があろうと,1社のみで独占しようというのはよくない」とインテル批判も。

 2001年の半導体市場とAMDの取り組みについてRuiz氏は「ドットコム企業の失速が情報産業の足を引っ張るなど課題が多い年。2000年に比べ、半導体市場全体の売り上げは15%程度落ちるだろう。しかしAMDとしては,景気の回復を待つのではなく,積極的に新製品を投入して,1〜2年以内にPCプロセッサの世界シェア30%を目指す」と語った。

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[西坂真人, ITmedia]

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