News 2001年8月3日 11:56 PM 更新

スタートから1カ月,Lモードはどうなった?

6月末にサービスが始まったLモード。約1カ月が経過したところだが,現状はどうなっているのだろうか。iモードのように爆発的な普及の可能性はあるのだろうか?

 スタートから約1カ月が経過した「Lモード」。NTT東西地域会社の発表では,開始後1週間で約3400件(東が約1900件,西が約1500件)の契約があったようだが,現在はどうなっているのだろうか。NTT東日本に問い合わせてみたところ,回答は,「8月3日現在では東西あわせて約1万件程度」というものだった。

 むむ!? 確かNTT東西では,サービス開始時に「1年間で150万〜200万ユーザーの獲得を目指す」と意気込んでいたはず。「電話機の買い替えが必要なこともあり,いきなりドンと立ち上がるものではない」(NTT東日本)としても,ちょっと少ない気もする。

 そこで,Lモードの現状を把握するために,某家電量販店に調査に赴くことにした。

単なる高価な電話機?

 固定電話機なんて10年くらいは買い換えないもの――そう認識していたのだが,驚いたことに,平日の昼間ながら電話機・普通紙FAXコーナーはなかなかの賑わいを見せていた。ビジネス街にあるお店だったのだが,客層としては主婦と思われるひとびとが中心だ。年齢層も幅広い。

 いきなり店員に「Lモード端末は売れてないんですか」と取材しても怪しいので,とりあえず様子を見ることに。すると,3人組みのおばちゃんたちが熱心に普通紙FAXを見比べている。ストーカーと間違われないように気を付けながら,ちょっと話を盗み聞きしてみた(実際は,大きな声で話していたので盗み聞くこともなかったのだが)。

 「やっぱり,おばあちゃんには画面が大きいほうがいいわね」

 どうやら,3人組みの中で一番高齢と思われるおばあちゃんの電話機を買いに来たらしい。と,足が止まった。NECのLモード対応普通紙FAX「speax@」のところだ。そう,speax@は画面がデカイ。普通紙FAXながら5インチの画面を備えているのはこの製品ぐらいだ。当然,おばちゃんたちも念入りにチェックを開始した。

 早くも,Lモード端末購入者発見か! と思いきや,「ねえ,これ5万8800円もするわよ」の一言で却下に。そう,Lモード端末はなかなか高価なのだ。

 ざっくりとした相場は,電話機が1万円半ば,普通紙FAXが2万円強〜3万円弱といったところ。Lモード端末は,だいたいこれに1万〜1万5000円プラスした感じ。子機が2台の場合はプラス2万円〜2万5000円になる。

 この差は,かなり大きい。というのも,店員さんに質問する人のほとんどが,電話またはFAXの性能について問い合わせており,“電話には電話”,“FAXにはFAX”としての機能を求めているからだ。そんな中で,「固定電話でインターネット」というサービスに主婦層が関心を寄せているかどうかは微妙だ。今のところ,Lモードのサービスが付加価値として認められれず,“単なる高価な電話機”とみなされている印象を受けた。

 しかも,Lモード対応ということを除くと,通常の電話機・普通紙FAXと機能的にはほとんど差がない。“非Lモード端末”の中にも,それなりに大型の液晶ディスプレイを備える製品もあり,大型画面は必ずしもLモードの専売特許になっていないのもつらいところだ。

 しかしながら,非Lモード端末の名前が並ぶ同店舗の売れ筋ランキングに,松下電器産業のLモード対応デジタルコードレス電話機「VE-PV77L」が3位にランクインしていた。

 「爆発的といういわけではないが,それなりには売れている。ただ,まだ製品が出たばかりであり,今後価格がこなれてこれば,大化けする可能性は十分にあると思う」(電話コーナー担当の店員さん)。

「メールなんてできなくていいもん」

 確かに,まだ1カ月である。年間目標が達成できるかどうかを,この時点で判断するのは時期尚早かもしれない。だが,Lモードの将来に不吉な影を落とす,あるエピソードを紹介しないわけにはいかない──。

 先日,実家が電話機を買い換えた。特に故障したわけでもないのだが,某大手電機メーカーに勤める父親のボーナスが,一部現物支給だったというトホホな事情のためだ。

 せっかくだから,Lモード対応電話機はどうかと薦めてみた。Lモードなんて知らないと言うので,概要を簡単に説明すると,母親に「メールなんてできなくていいもん」と拒絶されてしまった。実は,彼女は強度のテクノロジーアレルギーなのである。価格以前の問題だ。

 何しろ,ビデオの予約録画ができないばかりでなく,録画ボタンと間違えて再生ボタンを押してしまうこともある。FAXさえ使えるのか微妙なところだ。そういえば,携帯電話も操作が難しいと言って使いたがらない。しかも,「まわりのみんなも似たようなもんよ」と開き直っている。

 「お茶の間で情報収集」「固定電話で銀行振り込み」──NTT東西のおばちゃん像は甘すぎるのではないだろうかと思えてくる……。

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[中村琢磨, ITmedia]

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