News 2001年10月10日 07:16 PM 更新

Athlon XPの“モデルナンバー”はユーザーの指針となり得るのか(2)

 Rob Herb氏は,モデルナンバーについて「あくまでもAMD製品ライン内での相対的な性能比較を示す指標として,モデルナンバーを使っている。エンドユーザーにコアの性能向上を示すために“1500+”と表記している」と訴える。つまり同社の考えでは,PalominoコアのAthlon XP 1500+は,ThunderbirdコアのAthlon 1.4GHz(1400MHz)より,10%上回っているという意味で,“1500”という数字を付けたというのだ。

 その一方でRob Herb氏は,1800+がベンチマーク値から比較してPentium 4の2GHzより性能が上回っていることに触れ「もっとアグレッシブなモデルナンバー,つまり“なぜ2000+にしなかったのか”と,社内ではマーケティング責任者の私に対して批判も上がった」と語る。

 このあたりのコメントを聞くと,同社自身が,まだ,クロック周波数神話を強く意識していることが分かる。

 同社ではまた,こうも言っている。「サードパーティの皆さんには,ぜひベンチマークを行ってもらいたい。我々のAthlon XPの性能があらゆる面でPentium 4より上回っていることが分かるはず」。

 さらに,同社が記者発表に配布した参考資料の中には,店頭での商品札の例として「QuantiSpeedアーキテクチャにより,1.5GHz動作で他社製1.8GHzプロセッサを上回る性能を実現」というタダシ書きが記載されている。


モデルナンバーを記載した店頭での商品札の例。性能比較は,やはりタダシ書きを見ないと分からない

 つまり,モデルナンバーに対しての同社の見解としては「あくまでもAMD製品ライン内での相対的な性能比較を示す指標」だが,販売店などには「モデルナンバーの数字=MHz」で,“+”は「その数字を上回る性能」ということを表しているのだと暗黙のうちに伝えたいのであろう。

 やはり,今回のモデルナンバーの意味は「1.53GHzのAthlon XPでも,本当は1.8GHz(1800MHz)のPentium 4より性能が上だとAMDは言いたいので1800+とした」という方が,一般ユーザーにはすんなり理解できそうだ。

 実際に,アプリケーション性能を比較したベンチマークテストでは,1.8GHzのPentium 4よりもAthlon XP1800+の方が,ほとんどの項目で上回っていることが分かる。


Athlon XP1800+と1.8GHzのPentium 4のベンチマーク比較表

 モデルナンバーに対しての同社の発言だが,なぜこうも歯切れが悪いのか。それは,この“モデルナンバー命名法”があくまでも暫定的なものであるということに起因するようだ。

 同社は,Athlon XPの発表と合わせて,PCユーザーが信頼できるプロセッサ性能指標の開発に向けてイニシアティブを推進していく計画「性能指標に関するイニシアティブ(True Performance Initiative:TPI)」を明らかにした。

 この計画をもとに,同社は今後,第三者機関にAudit(監査)を依頼してベンチマークテストを実施してもらうことで,正当な実性能が監査できるシステム「性能指標」を業界に向けて提案していく。この性能指標の発表時期は2002年中としているが,詳しい時期は明らかにされていない。

 具体的には,監査会社のAndersenが調査を担当し,システム構成,ベンチマーク方法,ベンチマーク結果の記録に関して,第三者の立場で確認とテストを実施する。そして,審査プロセスの結果をまとめた詳細なレポートを,AMDのホームページ上で公開する。また,AMDが実施したベンチマーク結果に対するAndersenの監査は,プレス向け資料やマーケティング資料の中で参照できるようにする。

 このままいくと2002年には,これまでのクロック周波数と今回のモデルナンバーに加えて,同社が言う標準指標が加わることになる。ユーザーのためにPCの性能を分かりやすくするための指針が,これではますます混乱してしまうだろう。

 本当にユーザーの指針となる標準指標が策定されるならば,大いに結構なことだ。しかしそこに,CPUを売らんとするメーカーの思惑が加わっているならば,話が簡単に行くとは思えない。

 同社では,今回のモデルナンバーは暫定的なものとしながらも,「2002年の性能指標が発表されたあとも,継続して使いつづけるかもしれないし,廃止するかもしれない」と明言を避けている。

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[西坂真人, ITmedia]