News 2001年10月25日 09:00 AM 更新

XPに最適なのはPentium 4と主張するインテル――その理由は?(2)

 TCP/IPスタックでは,パケットのチェックサムをSSEのプリフェッチ命令を利用して最適化。これによりTCP/IPを利用するあらゆるアプリケーションを高速化し,ブロードバンドネットワーク環境化での性能を向上。この命令はSSEであるため,Pentium III搭載機も高速化される。

 再利用される可能性がないデータを書き込む際,SSE2を利用してキャッシュメモリをバイパスし,メモリに直接書き出す。この方が通常のx86命令を利用するよりも高速な書き込みが行える上,不必要なデータでキャッシュメモリが汚れないというメリットがある。

 具体的にはWindows XPがメモリページをゼロで埋める際,SSE2のmovntiを利用する。Windows 2000ではSSE命令を利用していた。また,内部的な浮動小数点演算において,SSEを用いていた部分を,SSE2の正数命令を利用した固定小数点演算に置き換えている。

 不要な演算を省くため,Widnows XPではSSE2で追加されている非正規化モードを活用している。非正規化モードとは,アプリケーションが指定したよりも小さい数字になった時,ゼロと見なすことで余分な計算を行わせないモードのこと。

 加えてPCの信頼性向上機能として,拡張マシン・チェック・アーキテクチャという機能がWindows XPでサポートされた。このアーキテクチャでは,チップセットやプロセッサに不具合が発生すると,障害を自動的に検知し,詳細なプロセッサ情報を出力する。Windows XPではこれに対応することで障害の早期発見などを実現できるようになる。

確かに効果はあるようだが…

 実際,こうした努力はある程度,目に見える形で現れているようだ。オーディオ圧縮では399MバイトのWAVデータを128KbpsのWMAフォーマットに変換する場合,Pentium 4/2GHzはPentium III/1GHzよりも1分間速く処理を終えることができ,DVデータをMovie MakerでMPEG4に変換する際には30秒の高速化を実現している。

 このほか,目立ったものとしては,SSLサイトからのダウンロードが2倍高速というデータもある(SSE2の暗号アルゴリズム用命令を利用しているため)。

 これ自身は高速なプロセッサなのだから,当たり前と言われればそれまでのこと。しかし,「Windows MeからWindows XPへと乗り換えた場合のパフォーマンスゲインが異なる」と小鷲氏は言う。

 たとえばオフィス系アプリケーションやインターネットアプリケーションのパフォーマンスを計測するSYSmark 2001において,Windows MeとWindows XPのパフォーマンス増加幅を比較した場合,Pentium IIIが6%の改善に留まるのに対してPentium 4は14%改善される。


Pentium4は従来のプロセッサよりWindows XPの性能を引き出す(インテル資料より)

 OSの最適化しか行われていない状態で,これだけの差が出るというのは,なかなか興味深い話だ。SYSmarkはアプリケーションレベルのベンチマークであり,プロセッサを通過するプログラムコードの多くは,Pentium 4に最適化されていないアプリケーションに含まれるコードだからである。

 SYSmark 2001の中には,TCP/IPやSSLを利用するWebブラウザなどのインターネットアプリケーションが多いこと。そしてシステムコールの高速化や,Windows内部処理でのSSE/SSE2の活用などが,大きく寄与しているものと考えられる。

 Windows XPではこれまで以上にPentium 4が高性能になる,というのがインテルのひとつめのメッセージである。そして,それは今回の結果を見る限りは正しいもののようだ。

 ただし,これだけの要素でPentium 4に買い換えよう,という話にはならない。新しいPCを購入したいとコンシューマが思わない限り,どのプロセッサを使おうか?という話にはならないからだ。また,Athlon XPにしても「ウチはこうした最適化でもっと大きな効果が得られている」といった主張を行うべく,手ぐすねを引いている(?)かもしれない。

 もうひとつのメッセージは,Windows XPがPentium 4に最適化された事で,より高いパフォーマンスを使い切った新しいアプリケーションの登場が期待できる基盤となる“要素”が揃った,ということだろう。

 両社はWindows XPとPentium 4により,オーディオ,デジタルビデオ,デジタルイメージング,コミュニケーション,そしてエンターテイメントの世界が変化すると主張する。実際,これらは大きな進化を遂げるのかも知れない。

 しかし,これら5つのキーアプリケーションは,これまでにも繰り返し,コンシューマユーザーの心を捉える“新しい”アプリケーションとして紹介されてきた。しかし,これまで一度として,“新しい”という言葉が取れたことはない。

 PC業界にいる人間として“新しい”アプリケーションが,今度こそは明日の“スタンダード”となることを願いたい。

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[本田雅一, ITmedia]