News 2002年1月18日 09:17 PM 更新

「インテル独占に終止符」――日本AMDが語る2001年のハイライトと2002年の展望

日本AMDはマスコミ向けNew Year Press Conferenceの中で「インテルの独占に終止符を打った」と2001年を振り返り,市場シェア拡大や次世代プロセッサの投入などを掲げた2002年展望を語った。

 日本AMDは1月18日,都内でマスコミ向けの「New Year Press Conference」を開催。2001年のハイライトを振り返り,2002年の展望を語った。

 冒頭の挨拶に立った堺和夫社長は,開口一番「インテルの独占に終止符を打った」と昨年の躍進ぶりをアピールした。


「インテルの独占に終止符を打った」と語る堺社長

 自信満々に訴える堺社長のこの言葉には,“れっき”とした証拠がある。

 昨年1月の「Microprocessor Report Analyst's choice for Best PC Processor」受賞を筆頭に,数々の賞に輝いてきたAthlonプロセッサ。そのテクノロジーを受け継いだノートPC向けCPU「モバイルAMD Athlon 4」が,昨年5月に発表された。K6-2以来,モバイル分野ではIntelの後塵を拝してきたAMDだが,「このAthlon 4によってノートPC市場でのマーケットシェア奪還に成功した」(堺社長)。

 続いて6月には,サーバ/ワークステーション市場に同社初のマルチプロセッシング・プラットフォームとなる「Athlon MP」および「AMD-760 MPチップセット」を投入した。

 そして10月には,堺社長自ら「大いなるチャレンジだった」と語るデスクトップ向けCPU「Athlon XP」が登場した。この新CPUから採用された"モデルナンバー"というCPU性能指標の新基準は,単にクロックを上げるだけではなく,アプリケーションを動かす上での性能を数値化。実際のチップ性能を反映する命名法で,クロック値で差を付けられていたIntelに対抗した。


Athlon XPを採用した富士通のデスクトップPC

 さらに12月には,低消費電力版Athlon XPを市場に投入。日立製作所が業界に先駆けて企業向け省スペースPC「FLORA330サイレントモデル」に採用した。このデスクトップ向けの省電力テクノロジについては,本日「Cool'n' Quiet テクノロジ」という正式名称が発表された。

 プロセッサの性能(動作クロック数)を動的にコントロールすることによって,省電力/静音/低温化が可能となり,結果として小型でスリムな省スペース型PCの設計がしやすくなるという。「個人向けだけでなく,設置スペースなどの問題を抱える企業向けにも最適な製品が作れる」(同社)。


「Cool'n' Quiet テクノロジ」を採用したFLORA330サイレントモデル

 このように,2001年のAMDは,積極的な製品展開でシェア拡大を推進した。その結果として,市場シェアは同社によると2000年の約16%から約20%に拡大。プロセッサの総出荷は前年比16%増の3100万ユニットとなり,プロセッサの総売上げ額は24億ドルに達した。半導体メーカーが軒並み売り上げダウンとなる中で,AMDもフラッシュメモリの不振から2001年の総売り上げ自体は対前年比を16.2%ほど下回ったが,この数字も堺社長に言わせれば「かつてない半導体不況にみまわれた業界内では優秀な数字」となる。

 実際に,Dataquestのデータから半導体メーカー各社の売り上げをみてみると,1位のIntelが対前年比22.4%ダウンしているのを筆頭に,上位10社全てが約20〜50%ダウンという状況となっている。市場全体が大きく縮小している中で,16.2%減に"抑えた"AMDは,市場全体からみるとシェアを伸ばしていることになるわけだ。

 冒頭,堺社長が「Intelの牙城を崩した」とアピールした背景には,このように数々のハイライトを残してきた2001年のAMDの活動があるのだ。


2000〜2001年の各社売り上げと成長率。上位10社全てが約20〜50%ダウンという状況

 また,企業が有するテクノロジーの指標となる技術特許の取得も,2001年はIntelの811件(米国18位)に対してAMDは1090件(米国14位)と上回っている。

 このような高い技術に裏付けられたバックボーンをもとに,AMDは数々の新技術を市場に投入してきた。昨年5月には,低コスト/高密度フラッシュメモリを可能にする新アーキテクチャ「Mirror Bit」を発表。10月には64ビットアーキテクチャの次世代プロセッサ「Hammer」の詳細を正式にアナウンスし,12月にはゲート長15ナノメートルの世界最速CMOSトランジスタを発表した。

 堺社長は,Intelと同世代のCPUダイサイズの大きさを比較したグラフを紹介しながら「同じ世代でAMDは間違いなくダイサイズが小さく,かつ性能は上回っている。つまり,今後もコストや消費電力を抑えながら,性能はどんどん上げることができる」と,その技術の高さをアピールした。


Intelとのダイサイズの比較

 2001年大きく成長したAMD。2002年の目標として堺社長は,「市場シェアの拡大」「認知度の向上」「次世代プロセッサ(Hammer)の投入」を掲げる。

 市場シェアの拡大は,デスクトップPC市場で省スペース型PC向けの低消費電力版プロセッサに注力。ノートPC市場では,これまでなかったスリムノートにも参入するなど,製品ラインアップの幅を広げていく方針だ。さらに,昨年進出したサーバ/ワークステーション市場も,ラインアップの拡充を図るという。

 そして,2002年の最も大きなトピックスの1つに,64ビットプロセッサ「Hammer」の投入がある。会場では,最新のプロセッサコア・ロードマップが紹介された。


最新のプロセッサコア・ロードマップ

 今年の第1四半期には0.13マイクロメートルの製造プロセスが本格化し,Palominoの後継となるThoroughbredコアのAthlonシリーズが登場してくる見通しだ。「2002年末には,全てのプロセッサ製品が0.13マイクロメートルプロセスに移行する予定」(同社)だという。Hammerファミリーは今年後半にデスクトップPC,サーバ,モバイルの順番で市場に投入していき,同コアで幅広いアプリケーション分野をカバーしていく方針だ。

 次世代CPU製造のプロセスでポイントとなるSOI(Silicon on Insulator)技術の開発も順調に進んでおり「昨年末からHammerでの製造テストを実際の生産ラインを使って行っている」(同社)という。

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[西坂真人, ITmedia]

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