News 2002年3月4日 01:45 PM 更新

コピーコントロール機能付きCD――問題点は何か?(1)

エイベックスから発表された「コピーコントロール機能付きCD」が,早くも様々な波紋を投げかけている。国内でもついに登場するコピーコントロール付きCDの抱える“問題点”について,迫ってみた。

 エイベックスが発売予定のコピーコントロール付きCDは,イスラエルのMidbar Tech社が開発したCDS(Cactus Data Shield)と呼ばれる方式を採用したものである。この技術を使用した音楽CDは,すでに海外で市販されており,実績もある。

 だが,CDSを採用した音楽CDは,コピーコントロール技術を盛り込んだため,再生できない音楽CDプレーヤーが存在していることが確認されている。いやそれだけでなく,そもそも音楽CDの規格である「レッドブック」に準拠していないという問題点がある。そして,これが,「著作権の私的使用目的の複製」との間で,様々な問題と引き起こす可能性がある。

問題点その1――「レッドブック」規格外である

 まず「レッドブックに準拠していない」という件だが,CD規格のライセンサーであるソニーでは,「該当技術を採用したディスクは,すべてのCDプレーヤーでの再生が保証されているものではないと理解しており,それを販売するにあたっては,購入するお客様が誤解しないよう配慮されることを期待する」と話している。

 加えて「ライセンサーとしては,仮にCD-DA規格に準拠しないものであれば,“CD-DAロゴ”の使用はできない。また,お客様の誤解を減らすためにも,該当技術を採用した場合の,互換に関する注意・表示などの配慮をしていただきたいと考えている」とも述べている。

 つまり,レッドブックに準拠していないのであればそれを明示し,「再生できないケースがある」ということを明確に表示してほしい,というのである。これはライセンサーとして当然のことだろう。

 現在販売されている音楽CDプレーヤーやPC用のCD-ROMドライブなど,CDを再生(読み出し)できる機器は,すべてレッドブックに準拠して設計されており,ロゴマークは,これを再生できるという“証明”である。規格に違反したものであれば再生できる保証がないので,再生可能な証明である「ロゴマーク」を付けることは,混乱のもとになりかねない。

 また,当然のことながら,購入者は自分が使用している機器で再生できるという“前提”でこのCDを購入しているはずだ。これを前提にある弁護士は「商品を保証する上で,再生できないなどのケースがあるということを明示する義務があるのではないか」と販売者側の責任を指摘する。

 この件について,エイベックス側では「CD-DAのロゴマークは付けない方針だ。また,パッケージの表面に『コピーコントロール付きCD』であることを印刷したシールを貼る予定だ」とし,加えて「パッケージ内に使用するにあたって,どのような制限があるかを明記した説明書を入れる予定である」という。

 海外で発売されたものでも,コピーコントロール(海外ではプロテクトと書かれている)を施したことを明記したシールが張られていたが,同社も同様の措置をとるようだ。


海外のコピープロテクトCDに貼られたシールの但し書き。「再生で何らかの問題が生じた場合,返金する」とある

問題点その2――再生できない場合にどうなるか?

 コピーコントロール付きCDを購入したユーザーが,再生できなかった場合,どうなるのだろうか? 実のところ,購入者にとっては,これが一番大きな問題である。

 現行法では,コピーコントロール技術を採用した著作物を販売することに関しては,販売者側に問題点はないようだ。しかし,これまで販売されてきた音楽CDプレーヤーなどの機器で動作することを前提として販売する以上,再生できないケースには,何らかの対応を行う必要があるだろう。例えば,何らかの約款を設け,使用する上での条件を付けるといった方法である。

 だが,これも問題がないわけではない。

 というのも,仮に交換に応じるとしても,コピーコントロール付きCDと交換しても意味がないからだ。かといって,保護技術が適用されていないものと交換してしまうと,せっかく施したコピーコントロールの意味がなくなってしまう。

 では,返金に応じるのは,どうだろうか。今度は,せっかく複製を防止し売上げを伸ばすために導入した技術が,売上向上どころか,減少につながる可能性も出てきてしまうのだ。いずれにしても,販売する側にとってあまりメリットがあるとは考えられない。

 コピーコントロール付きCDを対象とした専用の再生機が販売されているのであれば,この問題も多少は緩和されるのであろう。しかし,実際に対象となっている再生機は,販売が開始されてからすでに20年近くも経っている音楽CDプレーヤーである。こういった機器を対象として販売を行うケースで,例えば,約款等によって返金に応じないといった措置をとることが,実際できるのであろうか。

 すでにコピーコントロール付きCDが,発売されている海外では,再生を行えないなどのケースでは,対策を施したCDを回収したり,返金に応じたりしするなどの対応を行っている。

 この件についてエイベックス社では「再生できなかったユーザーに対して,どのように対応するか現在の検討中である。発売前には,当然,対応を決定する。」とし,加えて「ユーザーに対してどのように告知するかという件も,まだ,決まっていない」という。

 コピーコントロール付きCDの成否は、再生できなかったユーザーへの対応にかかっているといっても過言ではない。同社がどのような対応をとるのか、注目が集まることは間違いない。

問題点その3――リッピング行為は著作権法違反?

 次にコピーコントロール付きCDと,著作権法第30条「私的使用のための複製」に関する部分での問題点を見ていきたい。

 著作権法第30条は,基本的に個人や家庭内など限られた範囲内で使用する場合という前提において,著作権者に許諾を得ることなく著作物の複製(コピー)を認めたものである。現在の音楽CDなどの著作物は,これを大前提として成り立っており,基本的には,上記の前提さえ守れば,著作物を複製することができる。

 しかし,昨今のデジタル技術を採用した機器の登場によって,著作権法も時代に合わせ,改正が行われた。現在では,いつかの例外規定が盛り込まれている。中でも,今回のコピーコントロール付きCDとの間で問題となるのが,「技術的保護手段の回避」に関する例外規定である。

 この例外規定は,「技術的保護手段が講じられた音楽などの著作物(注:今回のケースでは,コピーコントロール付きCD)を,技術的保護手段に使用されている信号の除去又は改変を行うことにより,その技術的保護手段が防止している行為を可能としたり,それを知りながら,複製を行うことを私的使用目的の複製から除外する」というものである。

 例えば,コピーコントロール技術が施された著作物を,その技術的保護手段を外すことを目的としたソフトや機器などを使用して外して,複製を行うと著作権法違反となり,機器の欠陥などで同様の行為ができることを“知って”使っても,著作権法違反になる。

 また,現在では一般的に行われているパソコン用CD-ROMドライブやDVD-ROMドライブ,CD-R/RWドライブなどを使用したリッピングも違法行為となる。これは,コピーコントロール付きCDが,基本的にPC用の上記のドライブを使用したリッピング(デジタルデータとしてコピーすること)行為そのものを防止という目的が前提としてだからである。このため,リッピングを行ってしまうと,技術的な回避を行いハードディスク上に保存したと解釈されるのである。

 さらに「私的録音補償金」を支払っている音楽CD専用メディアを使用していたとしても,パソコンで前述の行為を行うことをできない。

 これは,私的録音補償金制度というものが,「デジタル機器で複製を行うとオリジナルと理論上全く同じものができあがってしまい,権利者にとって不利益だ」,という観点から生まれたものであり,「補償金の支払い」=「複製する権利を得た」という解釈にはならないからだ。

 つまり,私的録音補償金はあくまで権利者の利益を守るためであって,複製する権利をお金で買ったわけではないのだ。しかも,この制度では,技術的保護手段を講じたものは,支払いの対象外である。つまり,仮に私的録音補償制度が,複製する権利を認めるものであったとしても,技術的保護手段を講じている限り,その対象からは除外されることになり,結局何の権利も発生することはない。

 ただし,唯一パソコン上で複製を行っても問題とならないケースが存在する。それは妙な話だが,オリジナルの“完全”な複製を作成することである。今回のケースで言えば,CDのレイアウトなどの構成やさらには記録された信号までが,すべてオリジナルと同じ状態になっていれば「技術的保護手段の回避」を行ったことにはあたらない。

 これは,仮想CDソフトなどを使用し,ハードディスク上に保存した場合も同様に考えてもよい。ただし,演奏時間がオリジナルと異なっていたり,データトラックが書かれているプロテクト付きCDで,データトラックが無くなっていたりといったことが起こっていてはならない。あくまで,オリジナルの完全な複製である必要がある。

問題点その4――リッピングが行えてしまう可能性

 もう1つ問題がある。それは,エイベックス社の採用予定のコピーコントロール技術では,一部のCD-ROM/DVD-ROMドライブを使用することで,リッピングができてしまう可能性があることだ。

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