News 2002年4月18日 04:38 PM 更新

次世代Windowsで家電との融合を目指すMicrosoft(3)

 CoronaのオーディオはWMA Professinalと呼ばれ,従来のWMA8に比較して同一ビットレートで20%の品質向上を実現したという。これにより,Webベースのオーディオストリームで6チャンネルのサラウンドオーディオを提供するほか,24ビット96kHzのDVD-Audioクオリティのオーディオストリームを,128〜768Kbps用に圧縮する。

 ビデオに関しては,WMV8に対して15〜20%の品質向上となり,DVDクオリティの動画データをさらに小さく圧縮できるようになり,1枚のDVDメディアに複数のムービーを収めて管理可能になる。また高品質フォーマットにも対応し,HDTVの720pフォーマットで記録された動画データを,1枚のDVDメディアに収める実力があるという。

 展示会場では実際にCoronaで圧縮された720pフォーマットの動画がHDTV上で再生されている。会場でちょっと見た限りでは,ハイビジョンによる5.1チャンネル音声の映画番組と区別がつかない程度に高品質なものだった。実際にAVユーザーに受け入れられるかどうかは,さらに詳細に品質に関する検証を行う必要があるだろうが,PCで扱うメディアとしては大きな品質向上が認められる。

それでも難しい調整を強いられるMicrosoft

 言うまでもないがMicrosoftはPCソフトウェアの企業だ。Xboxを持っているとはいえ,基本的に家電の世界では,強い影響力を発揮して市場環境をガラリと変える力を持っているわけではない。

 自分たちが影響力を発揮できるPC市場から,家電や家庭内ネットワークにアプローチする手法は間違っていない。しかし家電の世界で力と影響力を持つ企業は,自分たちがPC的な水平分業の世界で勝者になれないことをよく知っている。その先には,差別化要因が極端に少ない,身を削るコスト競争しか存在しないからだ。

 ある程度,消費者心理に訴えるハードウェアをローコストに提供可能だと考えるセカンドグループの家電ベンダーは,Microsoftのオファーを受け入れるかもしれない。例えば最近のSamsungはMicrosoftに非常に近い位置にいる。彼らがソニーや松下電器などと競争するために,Microsoftが膨大な投資をして作り出そうとする世界に飛び込むこともあるかもしれない。

 また,中国の家電ベンダーが力をつけてきて,Microsoftの技術を用い,ローコストを武器に挑戦に出ることも考えられる。日本市場は別として,例えば米国市場などでは,一定のクオリティとデザインを持ち,PCネットワークとの親和性も高い製品なら受け入れられる可能性は十分にあるからだ。

 しかし,Microsoftがソニーや松下電器など,既存の家電業界の巨人に対して,自らの戦略を組み込んで欲しいと願っているのであれば,非常に難しい調整を強いられるだろう。Microsoftの戦略に乗るメリットが,彼らにはほとんどないからである。

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[本田雅一,ITmedia]

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