News | 2002年5月22日 08:25 PM 更新 |
NuCORE Technologyは5月22日、Transmeta元セールス・マーケティング担当上席副社長のJames Chapman氏が同社の社長兼CEO(最高経営責任者)に就任したと発表した。同社は、アナログ技術を生かすことで従来にない高画質・高速応答性・省電力を実現したデジタルカメラ向けの汎用チップメーカー。日本のPCメーカーにCrusoeを採用させた立役者であるCapman氏のCEO就任で、デジカメ先進国の日本市場におけるマーケティング活動を強化していく構えだ。新CEOのChapman氏に、同社の最新技術と今後の展開について話を聞いた。
「NuCORE Technology」――あまり聞きなれない企業名かもしれない。だが、同社が開発した画像処理向け汎用チップによって、「銀塩フィルム並みの高画質」「高速レスポンス」「省電力」なデジカメが、今後どんどん増えていくかもしれないと聞くと、少しは興味が出てくるだろう。
同社は、インテルや日立メディコで技術開発の要職に就いていたエンジニアが集まって1997年5月に設立された。同社製チップの特徴は、デジタル一辺倒だったデジカメの画像処理に、アナログの技術を取り入れたことだ。同社のテクノロジーについては、ZDNetでも何度か取り上げている(「アナログにも仕事をさせろ 前編/後編」を参照)。
Chapman氏は「現在のデジタルカメラは、色ノイズなどで銀塩フィルムには到底及ばないという“画質面”、高画質連写が難しいという“パフォーマンス面”、すぐに電池がなくなってしまうという“バッテリー寿命”という3つの問題がある。これを全て解決しようというのが、我々の開発コンセプト」と語る。
従来のデジカメの問題点を解決できるニューコアの画像処理ソリューション
従来の画像処理システムでは、CCDやCMOSといった画像センサーから出てきたアナログ信号を、すぐにA/Dコンバータでデジタル化してしまっていた。
「このアナログ/デジタル変換で、情報を無意味に失っているのではないかという点に着目して、A/Dコンバータにかける前にアナログ信号の処理を行うシグナルプロセッシングを開発した」(Chapman氏)。
すでに特許も取得しているというこの同社独自のアナログフロントエンドシステム「NDX Technology」によって、銀塩フィルム並みのダイナミックレンジを保持しながら、12ビットの精度で50メガ(5000万)ピクセル/秒の高速処理が可能となった。
同社の画像処理システムは、このアナログフロントエンドを担当するチップ「NDX-1250」と、「SiP-1250」という2つの画像処理チップで構成されている。色補正・ガンマ補正・Y/C変換といったデジタル信号処理、画像圧縮などアルゴリズム処理、メディアインタフェースなどの機能を搭載。システム・オン・チップ(SoC)化したこのわずか2つのチップで、デジカメの画像処理に関するほとんどの機能を網羅する。
「多数のチップを必要とした従来のシステムに比べて、部品点数が大幅に削減され、コストダウンが図れる。また、SoC化によって省電力にもなる」(Chapman氏)。
松下のLUMIX DMC-F7に採用された同社の画像処理チップ
同社の画像処理チップを採用したデジカメの1つが、昨年10月に発売された松下電器の「LUMIX DMC-F7」。コンパクト機には珍しい4コマ/秒の連写機能や、長時間撮影を可能にした省電力設計は、NuCORE社の技術が寄与していたのだ。さらにDMC-F7は、平面的になりがちなデジカメの画像の中で、質感の高い描写ができると画質面での評価も高かった。「各メディアではLeicaレンズ採用の効果と評していたが、NuCOREの画像処理アルゴリズムが画質面に大きく貢献している」(Chapman氏)。
このDMC-F7と全く同じチップが、今年3月に発表された日本ビクターの業務用DVカメラレコーダー「GY-DV300」にも使われている。このことはつまり、同社のチップが従来のプロ用カメラで使われている画像処理チップの能力を持ちながら、なおかつコンシューマ向けデジカメにも採用できるようなコスト構造を持っていることを意味する。
[西坂真人, ITmedia]
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