News 2002年5月22日 08:26 PM 更新

画像処理チップがデジカメを変える!――NuCORE 新CEOに聞く(2/2)


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 このような汎用性の高い画像処理チップは、デジカメメーカー/業界が現在抱える問題を解決することができると、Chapman氏は訴える。

 「我々の汎用チップは、メーカーの負担を軽減して商品化までのスケジュールを短縮することができる。デジカメには品揃えも重要だが、ここでも多品種に応用できるNuCORE製チップのプラットフォームが生きる」(Chapman氏)。

 現在デジカメメーカーは、ニコン・キヤノン・オリンパスなど優秀な光学系を持つ「銀塩カメラ業界」、コダックや富士写真フイルムのように銀塩フィルムで培ったカラーマネジメントのノウハウを持つ「フィルム業界」、先端のエレクトロニクス技術を駆使したデジカメを投入するソニー・カシオ計算機・松下電器のような「家電業界」と、大きく3つの業界に分けられる。そして、それぞれが得意分野を生かして製品作りを行っている。

 長引く不況下でも成長を続けているデジカメ分野には、このようにカメラ/フィルム/家電などさまざまな業界から10数社ものメーカーが参入し、激しい競争を繰り広げている。競争に勝つためには、新しい技術を開発して新製品を次々と投入していかなければいけない。しかしこれが、メーカーの負担になっているのも事実だ。

 「我々は設立以来5年間、これら3業界の全てのメーカーとコンタクトをとっており、製品開発に関する共同作業を続けている。いくつかのメーカーは社内にASIC開発チームを持って対応しているが、将来にわたって、我々のような専業メーカーの製品に対抗できるようなものを開発し続けることが、果たしてできるだろうか。複雑になりがちな独自ASICソリューション開発はリスクも発生し、結局はコスト増につながる」(Chapman氏)。

 Chapman氏は、デジカメ構成部品の専業化を、PCのグラフィックチップに例える。「PCを作るとき、かつてはPCメーカーが自社でグラフィックチップまでも開発していた。しかし現在は、ノートPCでさえNVIDIAやATIといった専業メーカーのグラフィックチップを使っている。PCのように製品サイクルが早くなってきているデジカメでも、同じように構成部品の専業化が始まるだろう」。

 画像処理チップを同社から、またレンズをLeicaから調達した松下電器のLUMIX DMC-F7は、これからのデジカメ開発のあり方を問う試金石というべき製品かもしれない。ちなみにChapman氏によると、同社チップの採用で画像処理のASIC開発を省くことができたDMC-F7の開発期間は、わずか4カ月だったという。通常、デジカメの開発には半年〜1年かかることを考えると、異例の早さだ。競争力の高い製品を市場に早く投入できれば、それだけシェアも確保できる。


「ニューコア製チップを採用したLUMIX DMC-F7は、4カ月という短い期間で開発された」(Chapman氏)

 設立から5年という長い年月を経て、ようやく大手メーカーが採用するまでにこぎつけた同社は、これから独自の画像処理チップを武器に“デジカメ大国”日本のメーカーにアピールしていく。Chapman氏は、Transmetaの低消費電力CPU「Crusoe」を日本の主要PCメーカーに採用させた手腕を買われて今回のCEO抜擢となったわけだが、今後の取り組みについてこう語った。

 「Transmeta時代は、日本メーカーにCrusoeを積極的にアピールし、ソニー・NEC・富士通といった大手PCメーカーで採用してもらうことができた。この時に学んだ日本の企業とのビジネスの仕方は、NuCOREでも生かせると思っている。米国の半導体メーカーにとって、ワールドワイドの出荷の中で日本市場が占める割合は多くの場合、10〜15%でしかない。しかし、デジカメにフォーカスする我々にとっては、ターゲットの80〜90%が日本市場となる。そういった意味では、Crusoeのビジネスと似ているかもしれない」。

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[西坂真人, ITmedia]

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