News | 2002年5月28日 08:02 PM 更新 |
家電各社らが出資するイーピーは先日、蓄積型双方向サービス「epサービス」の開始時期を7月1日に延期したと発表した。
同社の前身となった企画会社「イー・ピー・エフ・ネット」が設立した2000年10月の時点では2001年末のサービスインを目標としていたが、昨年6月の事業説明会ではサービス開始時期を2002年春頃と修正、さらに今年2月のepサービス正式発表時には今年5月から段階的に開始するとしていた。そして今回の7月1日と、結局当初の目標よりも半年以上遅れてのスタートとなる。このように、サービス開始時期が二転三転したのには、どんな原因があるのだろうか。同社に、その理由を聞いた。
同社は、4月18日の発表の中で、今回のサービス延期の理由を「スカイパーフェクト・コミュニケーションズが110度CSデジタル放送『スカパー!2』の有料化を7月1日としたことから、それとあわせて宣伝活動を行うため」と説明している。
同社経営企画センター広報IR担当・岩井利仁氏はこの件について「サービス延期の理由は大きく“2つ”ある」と語る。
「1つは、発表にあるように『スカパー!2』が本格展開する7月1日にサービスインをあわせたということ。当初から、110度CSデジタル放送事業者は、足並みが揃っていないといわれていたこともあって、しっかり手を取り合ってやっていこうということになった」(岩井氏)。
「もう1つは、各メーカーが、これまでにない商品のためか、慎重な検証を繰り返しているため。バグを修正しているというよりも、テスト項目を増やしてあらゆる条件でのシステムテストを行うことで、確実な商品にしていこうとしている」(岩井氏)。
つまり、もう1つの大きな理由は、ハードの開発が追いつかないということなのだ。
今年2月の発表会では、家電メーカー4社(松下電器、シャープ、東芝、日本ビクター)の専用端末「epステーション」が紹介されたが、この専用端末の作り込みに各メーカーが苦労しているらしい。
epサービスは、デジタル放送(BSデジタル/110度CSデジタル)、セットトップボックスに内蔵されたHDD、通信(インターネット)という3つのメディアを統合した世界初の蓄積型双方向サービスが特徴。epステーションに内蔵されたHDDのうち、プロバイダエリアとして確保される20Gバイトを使ったデータ蓄積サービスが、これまでのデータ放送との最大の違いとなっている。
ショッピングや旅行情報、趣味・生活情報などのデータが自動保存され、利用者は放送中でなくてもコンテンツを見たり、ショッピングやメールなどネットサービスを利用できるほか、有料コンテンツをあらかじめHDD内に蓄積し、ユーザーが見る(利用する)ときに課金されるようなシステムも可能となる。このような全く新しい機能やサービスをシームレスに連動させるため、端末の仕組みも複雑になってくる。
各メーカーの開発が遅れているのには、もう1つ理由がある。総務省など行政のCS110度事業への取り組みが遅れたため、サービス開始がせまった昨年末の時点で、各メーカーは専用端末の実機が作れないという状況になっていたのだ。そのため、当初は実機のお披露目を予定していた昨年10月のCEATECでも「止む終えずモックアップの展示になった」(同社)という。CEATECに出展していたどの端末メーカー担当者も「実験放送が始まらなければ、実機は作れない」と、事業の遅れを嘆いていた。
さらに、人的な問題もあると岩井氏は指摘する。「“放送”“通信”それぞれの専門技術者は多いが、両方の技術に長けている技術者というのが非常に少ない。結局、放送の技術者が通信の勉強をしたり、その逆のケースといったカタチで対応しているのが現状。技術者不足も、開発が思うように進まない理由の1つ」。
このように、今回のサービス延期は、当初発表されたスカパー2!のサービスに合わせたという理由よりも、メーカー側で専用端末の開発が遅れているために、サービスインがずれこんでしまっているというのが本当のところのようだ。
サービス延期にあわせて、epステーションの発売も当初の5月17日から6月17日に延期された。それも、「4機種同時ではなく、1〜2機種ずつ順次発売していく」(岩井氏)という。つまり端末によっては、6月17日の時点でユーザーの手元に届かないものもあるのだ。どの機種の発売が遅れるかという点は、教えてもらえなかった。
現在同社では、epサービスの先行予約を受け付けているが、「7月までの月会費無料」「3000円分のVISAギフトカードプレゼント」という先行予約特典期間を当初の5月末までから1カ月延長し、6月末までとしている。加入料無料キャンペーンは7月19日まで実施する。
「現時点での加入予約数は公表できないが、当初の目標に沿った予約数で推移している。epステーションは予約したユーザーから優先して提供するため、7月1日のサービス開始に実機が店頭に並ぶことは少ないかもしれない。世界初の蓄積型双方向サービスを真っ先に体験したいというユーザーは、予約しておいたほうが確実」(岩井氏)。
関連記事
[西坂真人, ITmedia]
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.