News | 2002年6月4日 08:39 PM 更新 |
6月3日より、ソニーのエンターテインメントロボット「AIBO」のソフトウェアAPIが公開されている。AIBOの公式サイトから、ソニーが開発したロボット用アーキテクチャ「OPEN-R」の開発ツール「OPEN-R SDK」(ソフトウェア仕様書を含む)をダウンロードして、C++を使ってAIBO用オリジナルプログラムを作成することが可能だ(5月7日の記事参照)。
AIBOだけでなく、同社が開発中の2足歩行ロボット「SDR」にも採用されているOPEN-Rは、ソフトウェア/ハードウェアともにモジュール化されているのが特徴。ソフトウェアモジュールを変更することで、AIBOの行動パターンを改善できるほか、胴体や頭といったAIBOを構成するハードウェアを交換して、機能や形態を変えることができる。
ソニーによれば、今回、ソフトウェア部分のAPIが公開されたことにより可能になるのは
などとなっている。AIBOの基本的な動作を制御する部分について、ほとんど手を加えられることになる。
現在、AIBOの動きを自分で変更できるソフトウェアとして、「AIBOマスタースタジオ」が提供されているが、同ソフトで使用する「R-CODE」と呼ばれる簡易スクリプト言語はインタープリタによる解釈実行となり、大量の計算処理には向かない。また、R-CODEならびにOPEN-R SDKでは、あらかじめ用意しておいたモーションを再生することが可能だが、OPEN-R SDKを使えば、再生だけでなく、モーションをその場で計算しながら生成するようなプログラムも作ることができるという。
なお、OPEN-R SDKについては、AIBOの公式サイトに詳細なFAQが掲載されているので参考にしてほしい。
公開したのは「深い部分」
ソニーがAIBOのソフトウェアAPIを公開したのは、OPEN-Rの普及促進を図るとともに、教育機関や研究所におけるロボット開発の流れを盛り上げたいという考えがある。
AIBOを手がけるソニーエンターテインメントロボットカンパニー開発設計1部の景山浩二統括部長は、API公開について、「ハードウェアを作ったり、OSを載せたりドライバを書いたりするのがしんどいと思っている人には便利だろう。いきなりロボットの歩き方の研究から始められるのだから。それに、今回公開したAPIは非常に“深い”部分。(仕様書でも分かるように)ほとんど何でもできる」と説明する。
ロボットによるサッカーイベント「RoboCup」では、通常の製品版よりも性能アップしたAIBOがプレイしているが、OPEN-R SDKを使えば、そうしたAIBOと同等の能力を引き出すこともできるという。例えば、「RoboCup-99」のAIBOリーグで優勝したフランス・パリロボット研究所チームは、加速度センサーでブランコの微妙なスピードの変化を認識し、素早く重心を前後に移動することで、AIBOがぶらんこをこげるようにした(1999年10月29日の記事参照)。
「ロボットに搭載する技術は、まだ発展途上にある。われわれにしても、ソフトウェアの機能を十分に使い切っているのか、まだ分からない。オープンテクノロジー的な取り組みで、いろいろな人の知恵を出し合ってAIBOを育てていきたい。制御系、音声認識、画像認識などそれぞれに得意分野にしている開発者が参加してくれれば、非常に楽しみな展開が期待できる」(同氏)。
OPEN-R SDKの成果物として、どんな動きをするAIBOの登場が期待されるのだろうか。
例えば、AIBOには、「盗撮防止機能」として、頭部の角度が極端に上向きにならないようになっているが、これはソフトウェアで制御しているため、解除することが可能だ(ただし、ソフトウェア仕様書の注意書きには「写真撮影、画像、音声の無線転送などを行う場合は、肖像権や他人のプライバシーを侵害しないよう注意してください」と記載されているので……)。
また、ハードウェア的にも「(製品版のAIBOは)かなり余裕を持って動かしている」(景山氏)ため、カスタマイズの許容範囲は広そう。ただ、景山氏は「限界速度値で関節を動かすと、ギアが磨耗/破損する可能性があり、短時間でAIBOの機能が損なわれるかもしれない」と注意を促す。
「走るAIBO」に憧れるのもいいが、AIBOにダッシュさせるのは、ほどほどにしたほうがいいようだ。
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[中村琢磨, ITmedia]
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