News 2002年8月20日 11:15 PM 更新

Turbolinuxは日本に事業を集約

SIベンダーのSRAが、米TurbolinuxからLinux事業を買収した。オペレーション機能を国内に集約し、アジア地域での事業拡大を図る

 「Turbolinuxは、日本発のLinuxディストリビューションになる」。8月20日、米TrubolinuxのLinux事業買収を発表したSRAの丸森隆吾社長は、記者会見で「日本発」という言葉を何度も使い、そのことを強調した。SI事業者であるSRAは、Linuxをはじめとするオープンソースビジネスを展開しているが、今回の買収によりLinux事業に本格参入する構えだ。

事業を日本に集約

 SRAは、米TurbolinuxからLinux事業を買収するとともに、日本法人であるターボリナックス ジャパンの株式の100%を取得。同社にTurbolinuxのオペレーション機能が集約される。なお、社名は「ターボリナックス」に変更する。

 新生ターボリナックスは、「まずは、日本を起点に、中国、韓国などアジア地域での成功を目指す」(SRA)方針で、SRAでは日本法人だけでなく、中国、韓国にある現地法人の株式も取得する方向で話を進めている。また、米国に現地法人は置かず、パートナー企業を通じてディストリビューションを行う計画。「アジア地域での成功を確固たるものにした上で、米国法人設立を検討する」(SRA)。2バイト言語に対応し、日本や中国で大きなシェアを持つTurbolinuxだけに、米国でいきなりRedHatに挑むのではなく、アジア地域での立場をまず確固たるものにしようという考えのようだ。

 また、人事面では、現ターボリナックス ジャパン社長の矢野広一氏が、そのまま社長兼COO(最高執行責任者)に就任。SRAからは、マーケティングカンパニープレジデントの渡邊肇氏が会長兼CEO(最高経営責任者)として参加する予定だ。


ターボリナックスCEOに就任予定の渡邊肇氏

 SRAの傘下に入った後も、既存の路線に大枠で変化はない。Turbolinuxは、Cardera、Conectiva、Suceの3社とビジネス向け統一Linuxの共同開発を目指す団体「United Linux」を結成している(5月30日の記事参照)、SRAによる買収後も、この取り組みを推進していく方針である。「先日開催されたUnited LinuxのCEO会議には、私がTurbolinuxの代表として出席した」(矢野氏)、「Unitede Linuxにはどんどん物を申していく」(渡邊氏)と意欲的だ。また、米Intelや米IBMなどと結んでいるグローバルでの提携関係は「全て継続する」(渡邊氏)。ただ、現在、ターボリナックス ジャパンが出資しているミラクル・リナックスとの関係については、「同社はUnited Linuxに参加しておらず、(提携の)解消を申し入れている」(矢野氏)という。

 製品ラインアップは企業向けを強化。年内に2つの主要な製品をリリースする計画だ。1つは、Unitede Linuxに対応した「Turbolinux Enterprise Server」(仮称)。IA64やSAPに対応した基幹業務向けの製品だ。もう1つは、既存のTurbolinuxコアを使ったファイル/プリントサーバ向けの「Turbolinux Server」。Turbolinux Serverは、SRAがソリューション事業を行っているオープンソースデータベース「PostgreSQL」が核となる。「SRAとの連携により、ターボリナックスは、単なるディストリビューターではなく、開発からサポートまでトータルにLinuxのビジネスを提案できる企業になる」(渡邊氏)。

「負の噂」を払拭

 新生ターボリナックスの社長に就任予定の矢野氏は、SRAのTurbolinux事業買収について、「事業範囲が広がる」と歓迎した。

 「これまで、Turbolinuxに対する市場の評価は非常に低いものだった。ただ、それは製品に対する評価ではなく、親会社の経営基盤が脆弱だとか、日本市場から撤退するのではないかといったネガティブな噂が原因。さらに、今回の買収に向けて米国本社の社員を削減したところ、海外のメディアが“すわ! 倒産か”と騒ぎ立てたが、われわれはそんな風におちょくられるような企業ではない。だが、こうした問題も、SRAが親会社になったことで全て解決できるはずだ」(矢野氏)。

 また、矢野氏は、これまでのTurbolinuxのビジネスについて、「誰が考えても破綻するモデルだった」と批判する。Turbolinuxは米国、日本、中国、韓国で事業を行っていたが、「グループ内でロイヤリティが回っていなかった」(同氏)。

 「OSの開発はほとんど日本で行っていたにもかかわらず、それを無償でほかの国に提供。ロイヤリティは全く入ってこない仕組みだった。新生ターボリナックスでは、きちんと本社の収益を確保できるようにする。既に、中国と韓国の現地法人にも話を通してあり、同意も得ている」(同氏)。

 なお、ターボリナックスの売上予測は、2002年度が5億3000万円、2003年度が8億8000万円。2003年度での黒字化を目指す。

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[中村琢磨, ITmedia]

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