News 2002年8月22日 10:50 PM 更新

こだわりのキーボードがここに――ネオテック

バックリングスプリング方式のUNICOMP製や、タッチの良いメカクリック系が豊富なCherry製など、マニア垂涎のキーボードを揃える秋葉原のネオテックを訪ねた

 キーボードにこだわるユーザーが、足しげく通うショップが秋葉原にある。そこには、昔のタイプライターのような心地よい打鍵感が特徴のバックリングスプリング方式を採用したUNICOMP製をはじめとする、こだわりのキーボードが所狭しと並んでいる。


マニア垂涎のキーボードを揃えるネオテック

 このお店――「ネオテック」は、その筋のユーザーの間では知らない人はいないというショップだ。JR秋葉原駅と地下鉄銀座線の末広町駅との中間ぐらい、中央通り西側のPCパーツショップが建ち並ぶ路地から少し奥に入った一角に店を構える。ネオテック社長の米村平氏に、最近のキーボード動向やキーボードのこだわりについて聞いた。


店内にはこだわりのキーボードが所狭しと並ぶ

 同店は、今から3年半前にオープン。エレクトロニクス関係の企業に勤めていた米村氏が脱サラで始めた。開店当初は、PC組み立てパーツなどを扱う普通のDOS/Vショップだったが、オープン後1年ほど過ぎたころにUNICOMPのキーボードを取り扱い始めたことが、現在のような店作りのルーツになったという。

 「当初、UNICOMP以外は、どこでも手に入るようなキーボードを当店でも置いていた。しかし、かつてIBMが採用し、現在では入手困難のバックリングスプリング方式が国内で手に入るというのが口コミで広がり、キーボード好きのユーザーが集まるようになってから、こだわりのキーボードの品揃えが増えてきた」(米村氏)。

 店内には、テンキーあり/なしタイプからトラックポイント付きまで、常時10種類前後のUNICOMP製キーボードが並んでおり、IBMのロゴ入りも多い。売れ筋は、名機と呼ばれて現在では入手困難な84-keyタイプのSpace Saver。1万7800円とキーボードとしては高価だが「このキーボード目当てに遠方からわざわざ来店するユーザーも多く、2-3台まとめ買いするケースもよくある」(米村氏)という。


常時10種類前後のUNICOMP製キーボードが並んでいる

 国内ではなかなかお目にかからないUNICOMP製が、これだけ品揃え豊富なのは、同店がUNICOMPの正規リセラーだからだ。UNICOMPのサイトにも、海外のリセラーとして唯一、同店だけが紹介されている。

 「国内での窓口がなかったため、直談判で苦労してリセラー契約を交わした。だが今では向こうから“こんなキーボードを出したが日本でどうか”と、新製品のサンプルを送ってくる」(米村氏)。

東プレ製キーボード人気に火をつけたのもここ

 また、ZDNetでも紹介した東プレのRealforce 106を、ショップとしていち早くユーザーに紹介したのも同店だ。「プログラマやライターなど、キー入力を生業としているユーザーが購入していく。打鍵が軽いところが女性にも向いており、妻の誕生日プレゼントにと購入していく男性も多い。最近は人気が出てきて現在は品切れ中。次回の入荷は9月中旬ごろ」(米村氏)。


東プレRealforce 106の人気は、ネオテックから火がついた。現在は品切れ中

 注目は、国内では唯一ここでしか扱っていないという独Cherry社のキーボード。Cherryは、日本でのアルプス電気のようなスイッチメーカーで、自社ブランドよりもむしろOEMに力を入れ、さまざまなPCメーカーに数多くのキーボードを供給している。そのため、同店で扱う製品にも、Cherryのロゴは入っていない。


Cherryのキーボードを買えるのは、国内で唯一ここだけ

 Cherry製には、メカニカル方式では珍しいリニアアクションタイプが用意されており、これを採用したG80-3000LPMUSが同店でも売れ筋となっている。「また、バックリングスプリングとは違う軽めの打鍵感が特徴のクリックタイプも人気商品だ。このほかにもソフトクリックやメンブレンタイプまで用意されているのもスイッチメーカーならでは。USBタイプやミニキーボード、サーバ専用タイプなど、実にさまざまなバリエーションがある」(米村氏)。

 このメーカーもUNICOMP同様、日本での販売窓口として同店を重視しているようで、サンプルを頻繁に送るなど商品の売り込みに余念がないという。「サンプルの中には、日本語キーボードもあった。値段の安いメンブレンを売りたがっているようだが、やはり日本のユーザーが買うのは、高価だが使い心地の良いメカクリックタイプ」(米村氏)。


珍しいCherry製の日本語キーボード。国内PCメーカー向けのOEMか?

 現在の同店お勧めは、ALPSキーが使われているミニキーボードのOrtek MCK-86。筆者も一時期使用していたことのあるJusty JKB-89Sの英語版といったところだ。「ミニキーボードにありがちなFnキーがないのがいい。本物(笑)のALPSキーを使用しており、内部に鋼鈑をいれて剛性を上げているなど、作りもしっかりしている」(米村氏)。


ALPSキーが使われているミニキーボードのOrtek MCK-86

安いだけのキーボードをユーザーは望んでいない

 今後はさらに、こだわりのキーボードの品揃えを強化していきたいと語る米村氏だが、最大の悩みは「良いキーボードが世の中に少ないこと」。現在主流のメンブレンタイプは、使っていくうちにゴムがヘタってしまい、知らないうちに強く押下しないとスイッチが入らなくなってしまったりする。メカニカルなこだわりのキーボードはどうしても高価になるが、決してマニアだけのものではないと米村氏は訴える。

 「キーボードはディスプレイと同じぐらいユーザーにとって重要なインタフェース。だが、液晶ディスプレイに数万円かけるのに、キーボードは備え付けのものをそのまま利用している。それでも、ちょっとでも良いキーボードに触れると、従来の安いキーボードでは満足できなくなるユーザーは少なくない。ユーザーは決して、安いだけのキーボードを望んではいないことを、PCメーカーに分かってもらいたい」(米村氏)。

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[西坂真人, ITmedia]

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