News 2002年9月30日 10:42 PM 更新

歴史は繰り返す?――記録型DVDの追記ディスク“お寒い再生サポート”

DVDは、CD規格を教訓にその普及を進めているはずなのだが、どうも同じ道を歩んでいるようだ。記録型DVDドライブの現状をみているとそう思う。記録型DVDの追記ディスクの再生サポート状況がそのいい例だ

 記録型DVDの現状を見て、「歴史は繰り返されるものだ」と感じている業界関係者は数多くいる。これは、記録型DVDのおかれている現状が、いつか来た道(CDの時)とあまりによく似ているからにほかならない。

いつか来た道――追記ディスクの再生サポートの現状

 記録型DVDの現状とCDの歴史がダブって見えてしまう点はいくつかあるが、中でもその典型と言えるのが、記録型DVDにおける「追記ディスク」のサポート状況だ。現状は後述するように全くお寒いものなのだが、記録型DVDの前身とも呼べるCD-R/RWにおいても、同じようなことがあった。複数のセッションを記録した「マルチセッション」や「パケットライト」を用いて記録したメディアを読み出せないドライブが存在していたのだ。

 CDにおけるマルチセッションの対応を振り返ると、第一世代にあたる標準速(1倍速)のCD-ROMドライブの多くが最初のセッションしか読み出すことができなかった。当時の市販のCDには、シングルセッションで作成されたものしかなく、2つ目以降のセッションを読み出すということなど考慮していなかったのである。このため、マルチセッションを読み出すことができるCD-ROMドライブは、「マルチセッション対応」をわざわざうたっていた。もちろんスペックシートなどにもそれが掲載されていた。

 その際には、実際に出回ったマルチセッションディスクをどのようにして読み出すかということも注意する必要があった。現在では、最後に記録されたセッションから読み出すと決められているが、当時は、それをどうするかさえ問題になったのである。

 現時点の記録型DVDの状況は、このときと驚くほどよく似ている。

 CDにおけるマルチセッションのことをDVDフォーラムでは「マルチボーダー」と呼び、DVD+RWアライアンスではCD同様に「マルチセッション」と呼んでいる。もちろん、これらの規格は、規格策定当初より存在しており、DVDフォーラムでは、「インクリメンタルレコーディング」という追記可能な記録方式が規定され、複数のボーダーを記録したマルチボーダーという概念もきちんと規定してあった。DVD+RWアライアンスでも同様だ。DVD+Rを規格化するときにマルチセッションという記録形式を準備し、DVDフォーラムのインクリメンタルレコーディングによく似た記録方式をサポートしている。

 しかし、マルチボーダー/マルチセッションは、記録型DVDドライブが発売された当初は、ドライブの機能としては実装されていたものの、使用されてはいなかった。これは、論理ファイルレベルの追記の仕組みをどうするかや、リーダーソフトをどうするかといった問題点があったからだ。

 また、マルチボーダー/マルチセッションで作成されたディスクの読み出しをサポートしたDVD-ROMドライブがほとんどなかったということもある。実際、最近になってマルチボーダー/マルチセッションのサポートを始めるISVが徐々に現れたので、筆者はそのテストを行ってみたが、これらのソフトで作成したディスクをきちんと読み出せるように設計されたドライブは、あまりに少なかった。少なすぎるといっても言い過ぎではないほどだ。

 筆者のテスト結果からいうと、記録型DVDドライブと最近のDVD-ROMドライブのほんの一部でしか読み出すことができていなかった。特にDVD-ROMドライブにおいては、現行の製品を使用しても、そのほとんどで最初のボーダー/セッションのみしか読み出すことができず、追記されたボーダー/セッションは読み出せなかった。

メーカー名型番FirmDVD-RDVD+R備考
日立GD-80000010ROMドライブ
GD-70000019ROMドライブ
パイオニアDVD-1171.07×(*1)ROMドライブ
DVD-500M1.07×(*2)ROMドライブ
松下SR-85887Z20ROMドライブ
SR-85875Z37×(*2)ROMドライブ
東芝SD-M16121004ROMドライブ
リコーMP51251.38DVD+R/RWドライブ
パイオニアDVR-1041.32×(*2)DVD-R/RWドライブ
松下LF-D321JDA126×(*2)DVD-RAM/Rドライブ
日立LGGMA-4020BA102×(*1)DVD-Multiドライブ
SONYDRU-500A1.0aDVD+/-R・RWドライブ
(注)*1は、DAOで記録したメディアは認識するが、マルチセッションディスクは認識しない
*2は、DVD+Rメディアをもともと読み出すことができない
△は、最初のボーダー/セッションのみを読み出すことができる

 これはある意味、仕方ないことかもしれない。というのも、複数のボーダー/セッションを記録したディスクは、記録型DVDドライブを使用しない限り作成することができないからだ。対して、DVD-ROMドライブ自体は、発売が始まってからすでに数年が経過している。DVD-ROMドライブのドライブメーカーにとって、複数のボーダー/セッションというのは、規格はあっても、ディスクが存在していないため、サポートする“意味”がほとんどなかったのである。

 CDの時は、PhotoCDがマルチセッションであったため、CD-R/RWがまだ一般的ではないときでも、PhotoCDを読み出すためにマルチセッションのサポートを行う必要があった。しかし、DVDでは、それさえなかったのである。

 だが、こういった話は、すでに過去のものとなりつつある。記録型DVDは、ユーザーの要望や使い勝手の面から“追記”をサポートする必要に迫られている。このため、今後はライティングソフトでもマルチボーダー/マルチセッションのサポートが進み、いずれにすべてのライティングソフトでサポートされることになるだろう。

 マルチボーダー/マルチセッションを使用した追記ディスクは、現状では、「自己録再」に近い形で使用されている。しかしCDの歴史が繰り返えされるなら、今後はDVD-ROMドライブでもサポートされることになるはずだ。その時にはやはり――対応ドライブは「マルチボーダー/マルチセッション対応」を声高にうたうことになるのだろうか。

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[北川達也, ITmedia]

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