News | 2002年11月11日 05:10 PM 更新 |
前回の記事で次回はフォトレタッチの基礎についてお伝えしたいと書いたが、レタッチを行う前に、sRGB以外の色空間を使って印刷する手順を紹介してほしいとのメールをいくつかいただいた。そこで予定を変更して、sRGBよりも広い色空間で編集する手順を紹介しよう。
まず今回の記事でデータの扱い方とプリンタの設定方法、そして明日掲載の(2)で各社の最新型プリンタにおける色のマッチング具合を紹介しよう。
Photoshop Elementsで広い色域を扱うには
前回の記事で、「Photoshop Elements」には3つのカラー設定があることを紹介した。そしてsRGBを基本として色の管理を行うため、[限定されたカラーマネジメント] を用いて色を合わせた。
しかし、このカラー設定では、sRGBで表現できない色に関してはすべて丸め処理(クリッピング)が行われる。Photoshop Elementsで色管理を行いながら、かつsRGBよりも広い色空間を扱うためには、[完全なカラーマネジメント] に設定しなければならない。
しかし前回もお伝えしたように、カラーマネジメントに対応したスキャナから画像を読み込むのであれば、これで何ら問題ないのだが、デジタルカメラ画像となると少々問題がある。色特性を示すプロファイルが埋め込まれていない画像を読み込むと、デフォルトの色空間であるAdobe RGBへと自動的にマッピングしてしまうのだ。
この問題は読み込む画像がExif 2.2に対応しているならば、エプソンが無償で配布している「Photoshop」のPIM IIプラグインを用いることで解決できる。PIM IIプラグインはここからダウンロード可能だ。このプラグインはPIM IIタグを見ながら、sYCC色空間で記録されたJPEG画像をEPSON RGBというAdobe RGBと似た色空間にマッピングし、タグで指示された画像処理を自動的に行うソフトウェア。
またPIM IIのみならず、PIMやExifPrintの動作もサポートし、さらには画像処理を行わずsYCC色空間の画像をEPSON RGBに展開し、データ中にEPSON RGBのICCプロファイルをタグとして埋め込むだけの動作(Color Extention Only)も指定できる。
PIM、PIM II、Exif 2.2では画像をsYCCで記録することを規定しているため、Color Extention OnlyでPhotoshop Elementsに読み込めば、デジタルカメラ画像が持つ本来の色を失うことなく、sRGBよりも広い色空間でフォトレタッチを行える。
sYCCについては以前にも一度解説したことがあるが、YCCからRGBへの変換を行うとRGB値がsRGBとなるように調整されたYCC色空間のこと。この変換を行うとRGBそれぞれの値は0−255の外になる場合がある。Exif 2.2のsYCCはsRGBの外の色も意識して記録することになっているため、sRGBからはみ出した色を変換し、より広い色空間にマッピングすることでsRGB外の色を取得できる。
Photoshop Elementsの [完全なカラーマネジメント] では、画像ソースにICCプロファイルが埋め込まれている場合は、デフォルトのAdobe RGBではなく埋め込まれたICCプロファイルを作業用色空間として利用できる。このため、PIM IIプラグインを用いれば、簡単にプロファイルなしのデジタルカメラ画像を正常な色で編集可能なのである。
一方、対象とするデジタルカメラ画像がExif 2.2(もしくはPIM、PIM II)でない場合は、少々面倒なことになる。PIM、PIM II、Exif 2.2以外の画像では、記録されている画像がsYCCかどうかは分からない。分かっているのは、JPEGを展開した時にsRGBになるという事実だけだ。この場合でも、JPEG展開のアルゴリズムの中でYCCからRGBへの変換を行うとsRGB外の色が計算上はできるのだが、カメラ側がその色を意図して記録しているかどうかは全く保証されないことになる。
[本田雅一, ITmedia]
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