News 2002年12月12日 10:03 PM 更新

あなたのまわりに“Microsoft inside”――SPOTを“読む”(2/2)


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 そこでもう1つ考えられるのが、より技術的にアグレッシブな挑戦をする――Micrsofotが新しいアーキテクチャとして考えている.NET FrameworkのCommon Langugage Runtime(CLR)を直接実行できるCPUを開発している――という可能性だ。

 .NET Frameworkでは、C#やVB.NETなどのプログラミング言語を動作させるバーチャルマシンと呼べるプログラム「Common Language Runtime」が用意されている。C#やVB.NETなどの言語は、CLR上で動作する中間言語に変換されて実行される。

 Javaを開発したSunがJavaの中間言語(VM)を実行できるCPU「Javaチップ」の開発を行っていた。実際、このようなチップがあることを考えれば、.NETベースのチップというものが開発される可能性は十分あるだろう。

 中間言語を直接実行できるCPUができれば、開発環境としては.NETアーキテクチャがそのまま利用できる。また、.NET上でのWin32APIのようなクラスライブラリが移植されれば、開発者がデバイスを直接コントロールするようなコードを書かなくてもいい(WindowsCEで動作するサブセットの.NET Compact Frameworkなどが開発されているため、SPOT用の.NET Frameworkも開発される可能性はあるだろう)。 もしこのようなCPUが本当に開発されているのであれば、非常に面白い。

 実際、SPOTの開発を行なったMicrosoft Research(MSの研究所)のBill Mitchell氏によれば、SPOTは同社が推し進めている.NET構想の一部をなしているのだという。つまり、SPOT搭載の端末が.NETを通じて情報を得たり、分散環境としてWebサービスを利用することができるようになるわけだ。

 なお、もう1つSPOTに入る可能性があるソフトテクノロジーとして、Universal Plug&Play(UPNP)がある。UPNPは、ネットワークに接続された機器にIPアドレスを付与したり、自分にはどのような機能があり、どういったコマンドでコントロールできるのかということを伝えて、ネットワーク上でさまざまな機器と通信するための規格だ。  現在のUPNP Ver1.では、Webサービスで利用する規格が完全に決まっていなかったため、Webサービスの暫定規格で作られている。このため、UPNP Ver.2ではWebサービス規格に沿った形に作り変えようとしている(このほか、IPV6のサポートもある)。

 もし、SPOTがUPNP Ver2をサポートすれば、PCとのコミュニケーションにUPNPのインフラがそのまま利用できる。また、UPNP Ver2はWebサービスベースとなっているため、他のWebサービスとの親和性も高く、ネットワーク上のさまざまなサービスとコミュニケーションすることができるようになる。

SPOT端末単体では“スマート”なサービスは提供できない

 SPOT端末でさまざまなサービスを受けるためには、ネットワークで接続される先のPCやネットワーク上のサービスもWebサービス化されている必要があるだろう。例えば、目覚まし時計の例でいけば、PCのスケジュール帳に明日のスケジュールをWebサービスで問い合わせをするといった場合にだ。

 どう考えても、SPOT端末自身が、PCにアクセスしてスケジュールを調べたりする”スマート(賢さ)”はないだろう。SPOT端末のOSやCPU能力(数十ドルで作れる)を考えれば、やはりPCと連携してSPOT端末にさまざまなサービスを提供するようになるのだろう。どう考えても、100ドルぐらいのチップセットが、スケジュール帳を見て、起床時間を決めたり、道路情報サイトにアクセスして、アラームの時間を変更したりすることはできないと思えるからだ。

 このようなことを考えると、SPOT自体は、PCの周辺機器という位置づけになるのではないだろうか。おそらく、PC側が自立的に判断して、さまざまなサービスをSPOT端末に提供していくと考えた方が正しいだろう。

 とはいえ、PC側にスマートさ(賢さ)をどう実現するかという問題はまだ残る。 例えば、スケジュール帳に「10時のJALで沖縄」と書かれていても、現在のスケジュール帳では単なる文字列としてしか認識していない。PCがスケジュール帳に書かれたデータをスケジュールだと分かる形で認識する必要がある。このためには、PC上で扱われるデータすべてをXMLデータ形式で記述し、どのようなデータなのかを明確にしなくてはならない。

 また、スケジュール帳のデータは、他のアプリケーションでも利用するため、データ自体を単なるファイルとしてではなく、データベースに入れ込む必要がある。データベース化されれば、他のアプリケーションが簡単にスケジュール帳のデータを検索し、再利用することができるようになる。さらに、“JAL”と書かれていたら、JALのHPや時刻表Webサービスサイトのアドレスなどを、インターネット上にあるディレクトリサービスから検索してリレーションを張ることができれば、簡単に発着時間を調べることもできるようになる。

このようなシステムを実現するには、ファイルシステムにデータベース(次世代SQLServer、開発コード名Yukon)が使われる次世代WinodwsXP(Longhorn)を待つ必要があるだろう。

 さて、CESの基調講演でBill Gatesが用意している答えは、いったいどんなものだろうか?



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[山本雅史, ITmedia]

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