News 2003年1月6日 11:23 AM 更新

「究極の全部入り」が登場?――2003年、記録型DVD市場はこうなる(2/3)


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 特に記録型DVDドライブは、PCでの需要が増加し、PCメーカーにドライブをOEM供給するだけで精一杯というのが昨年12月時点での状況。PC市場は、国内だけでも約1000万台、ワールドワイドでは、約1億台の需要がある。単純に約1割のPCに記録型DVDドライブが搭載されるだけで月産100万台程度の需要に応える必要がある。

 対して、ドライブを実際に製造しているメーカーは、前述した通り、わずか9社。仮に1社あたり月産10万台と想定すると月産90万台しかないということになる。もちろん中には月産10万台以上を製造しているメーカーも存在しているだろうが、9社の中には2002年度に本格参入したばかりのメーカーも多い。過去の例から考えると、量産体制がきちんと整っているか微妙なところだ。需要が供給を若干上回るという現状を脱するには、今しばらく時間がかかる可能性が高い。

夏には1万5000円前後へ、台湾メーカーも市場参入

 昨年末のPC用の記録型DVDドライブ市場は、CD-R/RWドライブが急激に普及した時の初期段階と非常によく似た状態にあった。これを考えれば、2003年には、さらなる低価格化と高機能化で、爆発的に販売台数を伸ばすことになるだろう。PCへの標準搭載も加速。夏以降の売れ筋のPCには、そのほとんどで記録型DVDドライブが搭載されるだろう。

 リテール用でも急速に低価格化が進むはずだ。おそらく夏には1万5000円前後の製品が登場するだろう。特にDVD+R/RWドライブは、台湾メーカーなどから低価格な製品が投入される可能性が高い。

 というのも、先に触れたPhilipsでは、PC用の記録型DVDドライブ向けリファレンスデザインもすでに発表しており、順調なら第1四半期に出荷が開始される予定となっているからだ。もちろん、このリファレンスデザインは、DVD+RWレコーダ用のものと同じ、事実上の組み立てキットだ。コアパーツは元より、基板デザイン、ファームウェアに至るまで記録型DVDドライブの製造に必要なほぼすべてが提供される。

 パテントは含まれていないようだが、価格は60ドルと十分すぎるほど安価に抑えられている。台湾メーカーや韓国メーカーが、このキットを使ってドライブの製造を行えば、1万5000円というリテール価格は十分達成可能だろう。

 記録型DVDドライブの設計・製造は実は思ったよりも難しく、CD-R/RWドライブが作れるから参入できるといったものではなかった。現状で、DVDフォーラムやDVD+RWアライアンスのコアメンバーしかドライブの製造を行っていないのはこのためだ。しかし、Philipsのほか、三洋電機もDVD-R/RWとDVD+R/RWの両方に対応したLSIの出荷を開始し、要望があればリファレンスデザインやファームウェアなども提供するとしている。

 こうした動きによって、台湾メーカーを中心に記録型DVDドライブ市場に新規参入するメーカーが増加するのはまず間違いない。最終的には、現在のCD-R/RWドライブ市場でお馴染みのメーカーほぼすべてが記録型DVDドライブ市場に参入することになるはずだ。

 また、ドライブの記録速度は、DVD-R/+Rは「4倍速」、DVD-RWは2倍速、DVD+RWは「4倍速」が一般的になる。DVD-RAMもすでに3倍速規格が策定されていることから、それに対応した製品が2003年に登場することは間違いない。

 これによって、DVD-Multi対応ドライブでは、DVD-Rが4倍速、DVD-RWが2倍速、DVD-RAMが3倍速という製品が登場。DVD+R/RWは、ともに4倍速の製品が一般的になるはずだ。DVD-R/RWとDVD+R/RW両対応のDualドライブは、DVD-R/+R/+RWが4倍速、DVD-RWが2倍速となる。

究極のマルチ“全部入りドライブ”も登場か?

 さらに2003年の記録型DVDは、高速化と多機能化も進む。

 まず、高速化についてだが、DVD+RWアライアンスがすでにDVD+Rの8倍速規格をロードマップに掲げている。この規格は、おそらく年内に規格策定が終了し、早ければ年末にもこれに対応した製品が登場する可能性もある。

 ただし、8倍速規格では、回転数の限界から20倍速以上のCD-R/RWドライブでも採用されている「ZoneCLV方式」または「ParticalCAV方式」が記録方式に採用されることになる。メディアも新しいものが提供され、低速記録(1倍速)のサポートはなくなる可能性が高い。もしかしたら、CD-RWメディアのように1倍速-4倍速までの低速メディアと4-8倍速の高速メディアといった感じになるかもしれない。

 多機能化という点については、DVD-R/RW/RAM及びDVD+R/RWというすべての記録型DVD規格に対応した究極のマルチドライブ――「全部入りドライブ」の登場に注目が集まる。

[北川達也, ITmedia]

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