News 2003年1月6日 11:24 AM 更新

「究極の全部入り」が登場?――2003年、記録型DVD市場はこうなる(3/3)


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 もちろん、すべての記録型DVD規格に対応した製品の設計は、DVD-Multi対応製品とDualドライブが登場していることからも分かるように、理論上は現時点でも可能だ。しかし、コストの面から製品を投入するメーカーはなかった。

 だからポイントは、コストと、肯定的な要素である「市場性」を勘案して、メーカーがどう判断するかにある。

 まず、コストの問題では、記録型DVDのロイヤリティが高いことに加え、検証するメディアも5種類と多く、それにかかるコストも無視できないことがある。例えば、DVDフォーラムのロイヤリティは最低でも「6ドル(もしくは販売価格の4%)」とかなり高く、DVD+RWアライアンスのロイヤリティは公表されていないが、ほぼ同程度と言われている。つまり、全部入りドライブを設計すると最低でも「12ドル」ぐらいのロイヤリティが必要となってしまうわけだ。

 シングル規格ドライブの2倍の価格でユーザーが購入してくれるのなら、開発するメーカーもあるかもしれない。しかし、記録型DVDドライブは、すでに2万円台。夏には、間違いなく1万円台だ。そういった状況を考えると、あまりに高い価格設定では売れない可能性が高い。いくら全部入りドライブとはいっても、少なくとも3万円を切り、2万円台中盤ぐらいの価格にする必要があるだろう。

 こういった点から考えると、仮に全部入りドライブを製造するとしても、まず、ドライブ自体を安価に製造できるメーカーである必要がある。具体的には、LSIまたはピックアップなどのキーパーツを自社開発できることに加え、DVD-R/RW/RAMまたはDVD+R/RWのいずれかのパテントを有しているなどの条件を満たすメーカーということになる。

 一方、市場性の問題では、DVDフォーラムとDVD+RWアライアンスの記録型DVDのデファクトスタンダードをめぐる戦いの決着が2003年もつかない可能性が高いということが見逃せない。

 民生用のDVDレコーダが世界でもっとも普及している日本では、少なくともDVDフォーラムしか選択肢しかなく、ワールドワイドで見た場合も、民生用ではDVDフォーラムが優勢だという話をよく耳にする。しかし、PCの世界ではちょっと状況が異なる。日本市場だけみていると確かにDVDフォーラムが圧倒的優勢だが、ワールドワイドでは、DellとHPの貢献度が高く、DVD+RWアライアンスが優勢という状況にあると見られるからだ。

 事実、PC-OEM専業メーカーやLSIを開発しているメーカーが、口を揃えて「DVD+RWアライアンスが優勢」と話しており、「もちろん、そこをメインに考えている」と話すメーカーが少なくない。あるメーカーでは、「全体の累積出荷数は、確かにDVDフォーラムが多いが、DVD+RWアライアンスが急激に伸びている。2003年は、もっと需要が伸びるはず」とも話していた。

 記録型DVDをめぐる戦いは、以前からAVではDVDフォーラム、PCでは、DVD+RWアライアンスのダブルスタンダードになるのでは?――という話しがささやかれていたが、それがかなり現実的な可能性を帯びてきている、というわけだ。

 こうなると、PC用の全部入りドライブというのは、確かに便利な製品。国内でも、DVD-Multi対応ドライブやDualドライブが人気になっていることからもわかるように、多くのフォーマットに対応することでユーザーの安心感を引き出すことができることは間違いない。

 長期的に見れば、価格も安くできるシングル規格ドライブに移行する可能性もあるが、少なくとも短期的には、それなりに安価に製造できるという条件さえ満たせば、十分需要がある製品とみても良いだろう。

 果たして究極のマルチドライブともいえる全部入りドライブが登場するのか?――現在DVDフォーラムの製品を製造している某メーカーがDVD+R/RWドライブを準備しているという情報もあり、筆者は、全部入りドライブが登場する可能性が高いとみている。



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[北川達也, ITmedia]

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