News 2003年1月7日 06:52 PM 更新

Bluetooth GPSレシーバ、“日本”への旅(3/3)


前のページ

 窓際に置いた本体を見てみると、なんとパワーLEDが黄色に点滅しているではないか。そう、電池がなくなってきていたのだ。考えてみれば、購入してからホテルで試験したりしてから、一度も充電していなかったのだから、出荷時点のままの電源状態だったわけだ。今さら充電するわけにもいかず、機上実験は“強制終了”になってしまった。とはいえ、「Bluetooth GPS Receiver」がなかなかの実力を持ったGPS受信機であることは、太平洋上空で確認できたわけだ。

日本に戻って“実戦評価”した

 帰国してから、仕事の合間をぬって実際の使用環境で「Bluetooth GPS Receiver」を簡単に評価してみた。まずは互換性テストを兼ね、普段常用している東芝Liblretto L3用に使っているPlanexのUSB Bluetoothアダプタとの接続を試してみたが、結果は、なんの問題もなく、簡単に接続できた。「Bluetooth GPS Receiver」のBluetoothは、バージョン1.1のこなれた互換性の高さを持っていると考えてよさそうだ。

 次に電子地図ソフトとの互換性、すなわちGPSデータの互換性をチェックしてみた。もっとも、米Socket Communications社のWebサイトでの情報を読んでみると、GPS受信機用チップとしては定評のある、台湾SiRF社のGPSチップが搭載されているということだったので、まず問題はないと踏んでいたし、吐き出されるNMEA-0183フォーマットも、V2.2に準拠している。日本では定番となっている電子地図ソフトであるアルプス社のプロアトラスで試してみた。

 結果としては、プロアトラス(現在、プロアトラスの最新版は「プロアトラスW」だが、評価機のLibretto L3へは筆者の好きなスカイアトラスがインストールしてある)シリーズの標準GPSドライバで問題なく、現在位置を表示してくれた。また、GPSの性能としては、測位速度もさることながら、都会のビルに挟まれているGPS測位環境としては、極めて状況の悪いなかでも、しっかりと測位を粘り強く行ってくれる。特に、GPS衛星を捕捉する力は、かなりのもの。SiRF社のGPSエンジンらしさをそのまま備えていると言ってよく、感度、測位速度ともトップクラスであると言えるだろう。

(蛇足だが、スカイアトラスは一般的な電子地図ソフトに加えて、東京、川崎、横浜などを1/1万縮尺の航空写真表示ができるため、GPSとの連動ではリアリティが優れている。筆者はGPSユーザには最も便利な電子地図ソフトだと思っている)


帰国後にC1VRXではなくLibretto L3へPlanexのUSB Bluetoothアダプタを装着して表示させたデバイス情報


「Bluetooth GPS Receiver」のBluetooth接続ステータス画面


アルプス社のプロアトラスシリーズへ付属しているGPSドライバによって問題なく使用できた


アルプス社の航空写真電子地図スカイアトラスで表示させた「Bluetooth GPS Receiver」での測位位置(新橋から第一京浜を歩いて都営浅草線の大門駅入り口でのショット)

NetStumblerにBlutoohは最適の組み合わせ?

 さて、この「Bluetooth GPS Receiver」の購入時に、筆者には“ある構想”があると述べたが、それは、「NetStumbler」での使用だ。NetStumblerはご存知の方も多いだろが、無線LANアクセスポイントの検索スニーフィングツールである。NetSutumblerには、GPS受信機がサポートされており、対応しているGPS受信機を接続しておくことにより、検索された無線LANアクセスポイントの緯度経度も自動的に記録してくれるのだ。

 ところがこれまで手持ちのGPS受信機を数機種、NetStumblerに接続してみたのだが、あまり具合がよくなかった。特に、VAIO C1VRX/Kや東芝Libretto L3などの小型ノートPCには、GPS受信機の接続用として多く使われているRS-232Cポートが装備されていないため、RS-232CをUSBポートへ変換するアダプタなどを介して接続しなければならず、ただでさえ煩わしいケーブル接続に加えて、USB変換アダプタまで装着しなければならず、取り扱いが面倒この上ない。

 加えて、無線LANの使用してる2.4GHzの電波が、妨害となってしまうGPS受信機も少なからずある。また、ノートPCとの接続ケーブルによって、ノートPCが発生するノイズによって感度低下を起こしてしまうGPS受信機もあった。PCカード型GPS受信機で、外部アンテナを使用しないと感度が低くなってしまうGPS受信機などの場合、ノートPC自身が発生するノイズによってかなり影響を受けていると考えてもよいだろう。実際、ノートPCのCPUクロックが、GPS衛星からの微弱な1.5GHz帯の電波よりも強力なノイズとなっているノートPCも多く、GPS受信機メーカーもPCノイズ対策が感度確保のノウハウであったりするほどだ。

 その点、「Bluetooth GPS Receiver」ではノートPCとケーブルによる物理的な接続が存在しないため、ある程度距離を離してノイズレベルを下げることができる。また、Bluetoothで使用されている2.4GHz帯の電波は、無線LANで使用されている周波数帯と同じでありながら、出力ははるかに小さい。第一、GPS受信機自体にBluetoothトランシーバを内蔵している「Bluetooth GPS Receiver」では、その対策が予めしてあるか、影響が殆どないように作られているはずである。つまり、2.4GHz帯の妨害には強い設計となっていると考えられる。

 そのような点から、NetStumblerに組み合わせるGPS受信機として「Bluetooth GPS Receiver」が最適であると筆者は推測したわけだ。結果として、その推測は間違っていなかった。VAIO C1VRX/Kや、東芝Libretto L3での使用結果から、手持ちのGPS受信機数機種中、最も安定したスニーフィングのログが取れることが実証されたのだ。手持ち無線LANカードとの干渉がほとんどなく、ケーブルレスの取り回しのよさは十分満足できるものだった。

 “構想”はこうして動き始めた。NetStumblerと「Bluetooth GPS Receiver」――この組み合わせによって得られたログデータを電子地図上へ表示するために必要なツールなどを、筆者は現在、個人的に作成中だ。いずれ機会を見て、それらのツールと合わせたレポートを紹介したい。


筆者が個人的に日本語ローカライズを行ったNetStumbler。現在8割方ローカライズ作業は完了している(公開は未定)

関連リンク
▼ Socket Communications
▼ EMTAC
▼ SiRF
▼ アルプス社
▼ NetStumbler

[清水隆夫, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページ | 3/3 | 最初のページ