News 2003年2月26日 08:36 PM 更新

DVDドライブ春夏の新製品、その傾向と対策

PC用DVDドライブの春夏商戦は、ポータブルドライブや“全部入り”ドライブの投入があり、高速化・低価格化も進むだろう。品揃えも豊富になり、昨年末ブレイク中の市場は、いっそう活性化しそうだ

 PC用の記録型DVDドライブは、DVD-RAM/R/RWのすべてのDVDフォーラム規格に対応したDVD-MultiドライブやDVD±R/RWに対応したデュアルドライブの登場、さらには低価格な4倍速記録対応ドライブの登場により、昨年末以降爆発的に販売台数を伸ばしている。しかし、店頭パッケージの販売台数は、いまだ民生用のDVDレコーダ(HDD内蔵含む)には、及ばないといった状況。記録型DVDは、少なくとも日本国内に限っては、現在のところ民生用レコーダのほうが順調に販売台数を伸ばしている。

 だが、PC用記録型DVDドライブも決して負けていない。春商戦以降、デスクトップ用だけでなく、ポータブルドライブの新製品が各社から予定されており、否応なしに活性化されることがほぼ間違いないからだ。

DVD+R/+RWの記録速度が4倍速へ

 まず、先頭を切って発売されるのは、DVD+R/RWがともに4倍速記録に対応したドライブだ。DVD+RWアライアンスでは、一足先に規格化が終了したDVD+Rの4倍速記録対応ドライブの販売がすでに始まっているが、DVD+RWも規格化が完了したからだ。分かっているだけでも三洋電機、リコー、Philipsなどが製品を開発しており、少なくともこのうちのどこかのメーカーが、春商戦に製品をぶつけてくるはずだ。

 このDVD+R/RWがともに4倍速のドライブについては、台湾メーカーからもそう遠くない時点で製品が発売されるだろう。これは、先日発表されたPhilipsと台湾のBENQの提携といったように企業間の連携が進んでいるからだ。台湾メーカーからの発売は夏ぐらいが有力か。

 また、DVD+RWの高速化に伴ってDVD-R/+R/+RWが4倍速、DVD-RWが2倍速のデュアルドライブを準備しているメーカーもあるようだ。DVD-R/+Rが4倍速、DVD-RW/+RWが2/2.4倍速の製品を発売しているメーカーがすでにあることから分かるように、こういったドライブを設計することは十分可能。現在のところ、デュアルドライブの出荷を始めているのはソニー1社だけだが、NECから発表済みのデュアルドライブ「ND-1300」(DVD-R/+Rが4倍速、DVD-RWが2倍速、DVD+RWが2.4倍速)の出荷もようやく始まるようだ。どのメーカーが先陣を切るかは不明だが、これから夏にかけて、デュアルドライブでもDVD+RWへの4倍速書き換えが一般的になっていく可能性が高い。

 ただ、年末にソニーがファームウェアのアップデートによってDVD+Rの4倍速に対応するという初の試みを見せたが、こういったことによってDVD+RWを4倍速対応するというメーカーはおそらくないだろう。

 というのは、DVD+RWの4倍速対応規格が策定されたのが年末のことで、ソニーやNECがドライブを設計していたのは、規格書がドラフトにあたるVer0.9になるかならないかといった時期だったからだ。もちろんドライブ的にはDVD+RWの4倍速に対応できる可能性が十分にある。ユーザーとしてはパーツが対応可能ならファームウェアのみで――と考えたいところだが、物理的なサポートは、その他の要因も複雑に絡んでくる。そういったことを考えると、この可能性は低いと見るほうがよいのではないだろうか。

全部入りはLG電子から

 また、かねてから話題になっていた究極の全部入りドライブの出荷が、夏ぐらいから行われる可能性がでてきた。LG電子の「GMA-4040B」という型番の製品で、DVD-R/+Rは4倍速、DVD-RWは2倍速、DVD+RWとDVD-RAMの速度は不明だが最低でも2.4倍速と2倍速にはなっているはず。同社では、CeBITでこの製品を展示する予定としており、もし、出荷が始まれば確実に話題をさらうことだろう。

 このほかでは、DVD-Rの4倍速、DVD-RW2倍速の新製品を準備しているメーカーも増加中だ。現在のところ、こうした製品は、パイオニアとソニーからしか販売されていない。だが、ND-1300でNECが加わり、さらにPC向けのOEM主体で出荷を行っている東芝も4倍速書き込み対応のドライブを準備しているようだ。

 PC用のOEMを主体としているメーカーなので、一般ユーザーが手にできるようになるまで、まだ時間がかかると思われるが、夏頃にはこういった製品を入手できるようになるだろう。価格も、現状でパイオニアの「DVR-A05J」が2万円台半ばで販売されていることを考えると、おそらく、2万円前後で販売されることになるはずだ。

ノート用ポータブルドライブが激戦に

 春から夏商戦にかけて面白いのは、ノート用のポータブルドライブだ。現在、ポータブルドライブを開発中なのは分かっているだけで松下電器産業、東芝、ソニー、リコー、パイオニア、TEACの6社がある。それ以外にも、NECや日立LGデータストレージなどで開発中という噂だ。

 このうち、松下電器産業と東芝は、すでにOEM向けの出荷が開始されており、ソニーも先日のVAIO新製品でDVD±R/RWに対応したデュアルドライブを同社のパソコンに搭載していた。

 ソニーの製品は、「DW-U50A」と呼ばれているドライブだ。販売されると、単品パッケージとしては、これがポータブル初のデュアルドライブになり、注目を集めることは間違いない。松下電器産業のポータブルドライブもDVD-Multi対応ドライブであり、同様に注目の製品となるだろう。

 また、昨年10月のCEATECで試作品を展示していたパイオニアのDVD-R/RWがともに2倍速書き込みに対応したポータブルドライブも、そろそろ登場する可能性が高い。当時同社が春ぐらいには出荷を始める予定と語っていたからだ。開発が順調ならそろそろ出荷が始まることになるのではないだろうか。

 このほか東芝がDVD-Rを2倍速に高速化した製品を準備しているようだ。ただ、DVD-RWも2倍速かどうかは不明。

 ポータブルドライブ市場には久々の参入となるリコーは、2.4倍速のDVD+R/RWドライブを準備しているようだ。DVD+RWアライアンスでは、ポータブルドライブの提供メーカーが少ないということもあり、同社からすぐにパッケージ販売が開始されるかどうかは分からない。しかし、何らかの形、例えばPC搭載などによって、夏ぐらいには登場することになるのはほぼ間違いない。

製品ラインナップが増える記録型DVD

 全体の傾向を総括すると、デスクトップ向けの製品は、現状の製品の高速化を行ったものばかりで、DVD-R/+Rの記録速度は「4倍速」、DVD-RWは「2倍速」、DVD+RWは「4倍速」が主流になりそう。CD-R/RWとしての機能は、CD-Rが16倍速または24倍速、CD-RWが8‐10倍速ぐらいだろう。つまり、記録型DVDの速度のみが強化されるというわけだ。

 新規参入メーカーも増える予定だ。ここまで挙げたメーカーに加え、以前から噂されていたミツミもDVD+R/RWドライブで市場参入を予定していると聞く。海外では、TDKがすでに販売を始めており、台湾メーカーは、BENQがPhilipsと提携を結んだことでドライブ発売がほぼ決定的。他のメーカーには今のところ目立つ動きがないが、おそらく何社かが参入することになるだろう。

 一方、注目のポータブルドライブは、かなりのメーカーからドライブが登場するが、スペック的には、どのメーカーもほぼ共通。DVD-Rは2倍速、DVD-RWは1倍または2倍速、DVD+R/RWはともに2.4倍速。CD-R/RWの記録スピードは、CD-Rが16倍速、CD-RWが8または10倍速といった具合だ。



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[北川達也, ITmedia]

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