News:アンカーデスク 2003年5月30日 11:59 PM 更新

っぽいかもしれない
シームレス受信やシリコンマイクだってあったのだ(1/3)

先週開催されたNHK放送技術研究所の一般公開に、実は私も行っていた。世間が注目していたのは地上デジタルだったのだろうけれど、私が気に入ったのはちょっと違って、もっと先の未来を見据えた技術だった

 5月22日から25日まで、東京世田谷区砧のNHK放送技術研究所の一般公開があった。昨年は研究所の建物が新装オープンしたお披露目をかねてたのか目新しい展示が多かったのだけど、今年は比較的地味。去年見たことがあるものの発展形というものが多かった。

放送通信連携サービス

 今年の12月には、東京、名古屋、大阪の都市圏で地上デジタルテレビ放送が開始される(*1)。だから、それ関係の展示にはかなり力が入っている。その多くは、ほんとに12月から運用されるべきものなのだけど、私が喜んでしまうのははもっと未来を見据えた技術だ。

 地上デジタルテレビは、携帯受信機を使って、街中や交通機関の中での受信も想定されている。このとき、携帯電話網を使ったインターネット接続と連携させて、同時にデータも受信するようにしようというのが、これ(*2)。KDDIとの共同研究だ。


 受信中の番組に関する情報を同時表示するというのは、もうあたりまえの機能だ(*3)。ちょっと面白いのは、電波による「放送」と同じ番組を同時にIP経由でも「ブロードバンド」するというもの。受信機は両方に対応していて、放送波がとどかなくなったら、IP経由に自動的に切り替える。

 「シームレス受信」と呼ばれていたけど、実際には、切り替えのときに、ある程度の時間が開く。その間、画面がちょっとフリーズするとかいう現象が発生する。視聴者は、これにどこまでガマンできるのかを定量的に分析しようという心理学的な実験も行われている。

 受信機はまだかなり厚みがある。とはいうものの、これは試作機で、受信機能などをカードで実現しているからであり、一体化したときには、大きめのPDAくらいにはなるはず。

 ただし、いま問題なのはバッテリー。試作機ではまだ1時間ちょっとしか再生ができないんだそうだ。受信部が意外に電気食いなのと、動画表示のためにCPU(SH4だそうだ)が常時フル回転しているのがその理由だ。

ネットワークを利用した番組リクエストサービス

 過去1週間分くらいの放送をすべてサーバにためておいて、これをネットワーク経由で見られるようにしようというもの。ここでいう「リクエスト」は、放送してくださいって要求することじゃなくて、いきなり番組を視聴できるようにしてしまうことだ。


 ネットワークの速度は100Mbpsを想定。地上デジタル放送のビットレートは11Mbpsだから十分対応できる。ネットワークとして何を使うかは検討中(デモでは、普通のLANを使っていた)。もちろんIP接続でも構わないが、そのときにはネットワークに与える負荷のことを考慮しないといけない。流すデータはデジタル放送そのままのものなので、ネットワークからはアダプタ(コンバータ?)経由でデジタルチューナーに接続し、テレビ受像機で視聴することになる。

 実現のためには、高速ネットワークや高速サーバなどインフラを整えなきゃいけないことはもちろんだけど、コンテンツの権利関係(とくに海外ドラマなどの場合、NHKは「放送」の権利しか持っていない場合がある。このサービスは「放送」といっていいのだろうか)や著作権保護技術などが整わないといけない。

 でも、これは、欲しい。これができると、タイムシフトのための録画(それがVTRでもハードディスクでも)というのは、ほとんどいらなくなる(*4)。家庭用VTRができて生活が変わって、ハードディスクレコーダーができて生活が変わって、というのが、さらにがらっと変わる可能性があるのだ。放送局としては自らの存在意義を問うほどのものじゃないかと思うのだけど、ユーザーとすればこんなありがたいものはない。

視聴者を認識する対話型テレビ受信システム

 音声認識によるテレビの操作と、カメラで撮った顔画像による個人認証とを組み合わせたもの。つまり、テレビの前に座ると、その人に合ったエージェントが立ち上がるというわけ。彼女と二人で座ったときは、一人の時とは違うエージェントになる(そりゃ、二人じゃ見られないコンテンツってのはありますわな)。


左にみえるディスプレイの上のあたりにこちらを向いているカメラがある。写真に入っていなかった。すみません


*1 「地上デジタルラジオ放送」については、小寺さんの記事が面白い。
*2 デモでは、ディスプレイには大河ドラマが表示され、出演者情報が下に表示されていた。ただし、これは権利上、撮影できないものであったので、頼んで問題のないアナウンサーの画面に変えてもらった。
*3 これって、衛星のデジタル放送のときからさかんにアピールされている機能だけど、それって本当に使われるのか、私は少し疑問に思っている。スター年鑑をテレビの脇に置いている私が言うのもなんなんだけど、テレビってそんなに一所懸命見るものなのかなぁ。
*4 私なんか、うっかりするとビデオのスタックが1カ月分くらいできていたりするから、1週間のシフトじゃ足りないかもしれない。

[こばやしゆたか, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページ | 1/3 | 次のページ